新型コロナのPCR検査は増やせばいいわけではない

新型コロナの感染が広がっています。それでも日本の感染者数は、ヨーロッパ各国やアメリカに比べて圧倒的に少ない数に留まっています。その原因として、PCR検査の検査数が少ないからだとの指摘があります。そして、ドライブスルー方式や仮設テントでの検査を実施して、検査数を増やすべきだとの声が高まっています。テレビ番組でも〝識者〟と言われる人たちが皆、声高に訴えています。

簡単にPCR検査を受けられるようにすれば、白黒はっきりすることができる。そして、陽性の人は隔離して感染が広がらないようにして、逆に陰性の人は安心して通常の生活ができる、と考えられます。

しかし、そう簡単にはいかないのが医学検査の難しいところです。簡単に検査を受けられるようにすれば解決するとは限りません。それは、検査が100%正しいわけではないため、間違った結果が出てしまうからです。100%正しい検査はありえません。どうしても、ある程度の間違いが出てしまうのはやむを得ません。そして、多くの人が検査を受けるようになれば、それだけ〝間違いの結果〟も多くなります。

PCR検査の場合、新型コロナに感染しているにも関わらず、陰性との結果が出てしまうことが多いと指摘されています。実際に新型コロナにかかっているにも関わらず、陽性と正しく診断できる確率は30~70%程度だと言われています。間を取って50%とすると、新型コロナに感染している人の約半分は見逃してしまうことになります。検査で陰性と出たからと言って安心してしまってはいけないわけです。

逆に新型コロナに感染していないにも関わらず、陽性との結果が出てしまうことは少なく、感染していない人を正しく陰性と判定する確率は99%以上とされています。感染していないにも関わらず、間違って陽性とすることはほとんどないわけです。しかし、それでも検査数を増やすと、その件数の増加以上に間違いの判定が増えることになります。それには、「条件付き確率」というものについてみていく必要があります。

現在、東京都ではPCR検査をして、陽性と判定される陽性率が38%にもなっているそうです。このうち、実際に新型コロナに感染している人の割合がどのくらいかを考えてみます。

下の図を見てください。検査をした人は、陽性と陰性のどちらかに判定されます。そして、新型コロナに感染している場合と感染していない場合に分けられます。ということは、

  1. 新型コロナに感染していなくて、陰性と判定された人
  2. 新型コロナに感染しているのに、陰性と判定された人
  3. 新型コロナに感染していて、陽性と判定された人
  4. 新型コロナに感染していないのに、陽性と判定された人

の4種類に分けられます。

このうち、陽性と判定された人のうち、本当に新型コロナに感染している人の割合を求めます。上記の分離では、3と4の合計のうち、3の割合となります。

現在は、検査を受ける人をかなり限定していますので、陽性と判定された人の約99%は本当に新型コロナに感染していると考えられます。(感染していない人を正しく陰性と判定する確率が99%以上とされているからではありません。)図の縦×横で面積を計算すれば、3と4の合計のうち、3の割合が求められます。(図では1%の幅が広くなっていますが、実際はもっと細くなります。)つまり、PCR検査で陽性と判定された人は、まず確実に新型コロナに感染していると考えられ、その人をホテルなどに隔離しても問題ないでしょう。

ところが、誰でも簡単にPCR検査を受けられるようにすると、状況が異なります。4月売末現在でPCR検査が陽性の人は、多い東京都でも0.03%程度です。実際に新型コロナに感染している人がその10倍いると仮定しましょう。すると新型コロナの感染者の割合は、0.3%となります。すると、下図のようになります。3と4の合計のうち、3の割合は、13%程度まで下がります。(図では0.3%の幅が広くなっていますが、実際はもっと細くなります。)つまり、検査で陽性となった人のうち、7~8人に1人しか、本当の感染者ではないことになります。残りの6~7人は、新型コロナに感染していないのに、陽性と判定された人というわけです。これでは、陽性との判定が出ただけで、直ちに入院措置やホテルでの隔離をしたら、施設が不足するばかりか、判定された人も困るでしょう。

感染している人の割合が低い場合に、100%の確率ではない検査を行うと、正しい判定よりも〝誤った判定〟が増えてしまうのです。これはPCR検査だけでなく、他にも当てはまります。健康診断などで「要検査」と指摘され、不安になったのに精密検査をすると、何ともなかった、といいう経験をした人は多いでしょう。健康診断のように、すべての人を対象にすると、〝誤った判定〟が多くなります。人間ドックの腫瘍マーカーという検査でも同様で、「がんの疑い」と言われると心配になりますが、実際はほとんどの人はがんではないのです。

新型コロナについては、PCR検査を受ける人を絞ることで、このような間違いが起きる可能性を小さくしています。ただ、現在はかなり絞っていますので、もう少し対象を広げてもよいかもしれません。それには、保健所や医療機関のマンパワー不足の解消も必要になります。

2020.5.4記

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