50代になると、生命保険の見直しをすることが多くなります。最近増えている保険ショップでする人が多いのですが、私たちファイナンシャル・プランナーがすることもあります。その多くは、現在は加入している生命保険が、ご家族の状況に合っているのかを確認し、適切でなければそれを解約して、今の状況にピッタリの保険に加入するというものです。
最初に生命保険に加入するのは、たいていが20代、30代の頃です。結婚やお子さんが生まれたことがきっかけになります。その場合は、ご主人に万が一のことがあった場合に、遺族の生活を保障する「死亡保険」が一般的です。そして死亡保険の中の定期保険や定期付き終身保険への加入が多くなっています。
死亡保険は主に、「一生涯にわたって保障される」終身保険と、「保障される期間は限られるものの、保障額が大きい」定期保険の2つに分けられます。他に、収入保障保険もありますが、これは定期保険の一種です。定期付き終身保険は、その名のとおり、定期保険を付けた終身保険で、2つの保険の組合せです。
終身保険は一生涯保障が続きますので、いつかは必ず保険金が支払われます。ということは、保険会社は必ず保険金を支払うということであり、保険金額をあまり大きくすることはできません。加入者が支払う保険料で、いずれ必ず支払う保険金を賄うために、保険料も高めになりがちです。それに対して、「10年間」あるいは「65歳まで」などと一定期間だけを保障する定期保険は、いわば〝掛け捨て〟で、保障の期間を過ぎると、お金はまったく支払われません。多くの人は掛け捨てになり、事故や病気で早くに亡くなった人(の遺族)だけが保険金を受け取るので、保険金を大きくすることができます。保険料は安くできます。
20代、30代の加入で、定期保険や定期保険が付いた終身保険への加入が多いのは、「少ない保険料で大型の保障を得るため」です。「お子さんが独立するまでの生活費と学費」を確保することを考えると、若いうちは、大型の保障が必要です。しかし、若いうちはそれほどの保険料は支払えません。そこで、一定期間(子どもが独立するまでの間)だけを対象に大型の保障を確保する定期保険に加入するのが合理的です。一定期間が過ぎると保障はなくなりますが、その頃には子どもが独立して保障は必要なくなる、というわけです。掛け捨てで満期金もありませんが、安い保険料で必要な期間に〝保障〟が得られたので、やむを得ません。これが保険商品の本来の役割です。
50代、60代になると子供が独立したり、あるいはそのめどが見えてきます。すると大きな保障はそれほど必要がなくなり、満期の65歳まで加入し続ける必要もなくなります。この年代からは、遺族の生活保障よりも、自分たちの保障が気になってきます。健康が不安になり、老後が気になる年齢ですので、病気への備えや老後の備えが心配になります。そこで、加入している定期保険を解約して、医療保険や個人年金などに加入する人が少なくありません。終身保険は途中解約をすることで貯蓄の代わりにもなりますので、老後の備えとして加入する人もいます。こういったことで、50代になると保険の見直しをする人が増えるというわけです。
このように、20代、30代⇒定期保険や定期付き終身保険、50代、60代⇒医療保険や個人年金、終身保険が向いています。
ところが、これに逆行する保険商品が登場しました。チューリッヒ生命が「50代から加入可能な定期保険」を、3月に発売しました。「定期保険プラチナ」です。「50代になったら、定期保険の解約を検討する」という常識を打ち破る発想ですので、これを聞いて私は驚きました。簡単に特徴を記載します。
<無解約払戻型定期保険『定期保険 プラチナ』>
- 加入可能年齢:50~80歳
- 保障期間:10年間、あるいは60歳、65歳、70歳、80歳、90歳までから選択
- 保険料の支払い:保険期間の間、月払いまたは年払いで。
- 保障内容:死亡または高度障害
- 保険金額:200~3億円(90歳満了の場合のみ100万円も可)
- 特約:災害割増特約、特定疾病保険料払込み免除特約(3大疾病型または5大疾病型)
- 保険料例:50歳男性、保険期間90歳まで、保険金額100万円、月払い保険料1,307円
チューリッヒ生命では、「葬儀費用の準備」などのニーズを想定しています。確かに、少額短期保険では「葬儀費用保険」というものもありますので、「遺族に負担がかからないように、保険で準備をしよう」という人もいるでしょう。しかし、あらかじめ設定した保険期間よりも長生きしたらムダになります。この保険では最長で90歳までとなります。葬儀費用であれば、終身保険で準備した方が良いでしょう。
しかし、保障期間を90歳までとしておけば、特に男性の場合は亡くなる方が多いので、「一生涯にわたって保障される」終身保険の代わりに利用するという考え方は可能でしょう。保険料は終身保険に比べて格段に安くなります。そう考えれば、葬儀費用の準備や、あるいは相続税対策(または相続対策)としても利用可能かもしれません。ちなみに、2020年時点での統計によると、90歳以上まで生きるのは、男性は28%、女性は52%ぐらいの割合です。
最近は、晩婚で50歳でもお子さんが小さい人が増えています。50代で子供が生まれる人もいます。そのような人にとっては、この保険は向いていると思います。定期保険の中では、多くのケースで同業他社と比べて、保険料が安くなっています。
ほかにもうまい使い方があるかもしれません。50代からの定期保険というのは、ほとんどありませんので。まだ発売を始めたばかりですので、どのような使われ方がするのか、今後が楽しみです。解約を検討する人が多い年代に向けて、あえて「定期保険」を発売したチューリッヒ生命から、今後の動向が目を離せません。
2022.4.30記

