今回は、外貨建て保険の税金について説明し、さらに為替について考えていきます。
外貨建て保険の税金
外貨建て保険は、ドル建てなどの生命保険です。ドル建てとはいっても、販売しているのは日本国内の生命保険会社です。外資系の保険会社も多いのですが、ほとんどが国内法人で、日本の法制度に基づいて販売されています。生命保険にもいろいろなタイプがありますが、外貨建て保険では、終身保険と個人年金が中心です。終身保険は、保険の対象になっている人が亡くなった場合に保険金が出るもので、生涯にわたって保障が続くものです。途中で解約すると、それまでの間に運用された解約返戻金が出ますので、貯蓄の手段としても利用されています。個人年金は、現役時代に積み立てた資金を老後に年金として受け取る保険ですので、こちらも貯蓄の手段として使われています。
このように、貯蓄に向いた保険商品で、外貨建てのものが販売されています。アメリカ・ドル建てやオーストラリア・ドル建てが多いのですが、いずれも日本に比べて金利が高く、解約返戻金や保険金、年金が大きいからです。さらに、為替相場の状況次第では、為替の差益も得られます。このように、保険商品としての保障機能よりも資産運用として利用されている傾向があります。それだけに、税金の取り扱いは確認しておきたいところです。
結論から申し上げますと、外貨建て保険の税金の扱いは、円建ての生命保険(普通の保険です)と同じです。保険料を払った際には、日本円で払った金額を計算し、保険金などが出た際には、日本円で受取額を計算し、その差額が利益として課税の対象になります。
では、通常の保険商品(円建て)での税金の扱いを確認しましょう。
- 死亡保険金を相続人が受け取った場合⇒相続税の対象です。そのうち、「500万円×法定相続人の数」の金額は非課税です。
- 途中で解約返戻金を受け取った場合⇒所得税と住民税の対象です。といっても、解約返戻金に対してかかるのではありません。「解約返戻金-それまでに払った保険料の総額」が課税の対象となります。つまり、保険で増えた分(利益)だけが対象です。所得税の中で、一時所得という扱いです。利益から50万円を引いて、それをさらに半分にした金額を、他の所得と合計して、税額を計算します。利益が50万円以内であれば、税金はかかりません。
- 年金として受け取った場合⇒所得税と住民税の対象です。これも年金の全額に対してかかるのではありません。払った保険料から増えた分(利益)に対してかかります。払った保険料は、年金を受給する〝1年あたり〟の保険料で計算します。10年間で受け取る場合は、払った保険料の総額を10で割った金額が1年あたりの保険料になります。その金額を超える年金額を、他の所得と合計して、所得税を計算します。年金の場合は、「利益から50万円を引いて、~」という取り扱いはありません。
- 年金を一時金で受け取った場合⇒個人年金は本来、毎年少しずつ受け取るようになっていますが、希望すれば全額を最初に受け取ってしまうこともできます。その場合の課税の扱いは「途中で解約返戻金を受け取った場合」と同じです。
外貨建て保険の場合は、いずれもドルで支払額が確定し、多くはそれを円に換えて受け取ります。上記の計算はすべて日本円で計算します。支払われた保険金などを円に換えずに、そのままドル預金などに入れる場合もあります。その場合は保険金などが支払われた日の為替レートで、円での金額を計算して課税されます。計算に使う為替レートは、生命保険会社からの支払い報告書などに記載されています。
一方、生命保険料を払っている間は、その年に払った保険料に応じて課税の対象になる所得が小さくなる制度があります。生命保険料控除というものです。その結果、所得税や住民税が少し安くなります。外貨建て保険の保険料も生命保険料控除の対象になります。外貨で払った場合は、支払日の為替レートで日本円の金額を計算します。
為替相場を考える
外貨建て保険は、支払う保険料に対して保険金や解約返戻金、年金などの割合が高いのが魅力です。日本に比べて海外は金利が高く、その高い利回りで運用ができるためです。保険商品としての保障が付いていますので、外貨預金などの金融商品と比べると費用は割高です。それでも、保障を備えながら有利な資金運用ができるとして、最近では人気があります。さらに、昨年に円高ドル安に推移したことで、今後も為替差益が狙えると期待して加入する人が増えています。ただ、為替相場は〝水物〟で、その動きはなかなか予想ができません。安易に為替差益を期待すると裏切られる可能性も少なくありません。
昨年(2022年)の春から為替相場は円安ドル高方向に急速に進みました。10月には、1ドル=150円まで行きましたが、その後は円高ドル安に推移しています。特にこのところ(年末年始)は急速に円高ドル安に動いており、1月3日の時点では、1ドル=129円まで戻しています。円安ドル高に推移していた昨年の夏には、さらに円安ドル高は続いていくとの見方がほとんどでした。その理由は、「低金利が続く日本に対して、アメリカでは金利が上昇している。アメリカで資金を預けた方が高い利回りを得られるので、円を売ってドルを買う動きが続く」というものです。テレビのニュースで専門家が言うので、もっともらしく聞こえますが、本当でしょうか?
確かに、アメリカは物価高がひどくなり、それを抑えるために、中央銀行(FRB)が利上げを行い、金利が上昇しました。日本との金利差は開くばかりで、日本で預金をするよりもドルで預金をした方が多くの金利を得られます。円をドルに換えた方が得なように思えます。しかし、この考え方は理論的にはおかしく、そのために円安ドル高になっているという説明もはなはだ疑問です。その理由を見ていきましょう。
日本の金利をアメリカの金利を比べると、以前からアメリカの方が高かったのですが、昨年ぐらいからは特にその差が開いています。円の資金があったら、それをドルに換えてアメリカで預金をすれば、その金利差を得られるように思えます。最近では日本でお金を借りる金利よりもアメリカでの預金金利の方が高いでしょうから、日本でお金を借りて、ドルに換え、アメリカでお金を貸せば、元手いらずに金儲けができます。個人では難しくても、金融機関ならできそうですが、そんなことをする機関投資家はいません。金利差で得られる利益に比べて、為替の変動によるリスクの方がはるかに高いからです。
では、為替先物取引で1年後にドルを円に換える為替レートを予約しておけばよいでしょうか。そすれば為替の変動によるリスクは全くなくなります。金利も確定、為替も確定。リスクゼロで確実に利益を得られます。日本円で資金を借りて行えば、いくらでも利益を膨らませることができます。こんな〝打ち出の小づち〟のような取引は不可能です。世の中、リスクなしで利益を得られるわけはありません。(株式市場で裁定取引というものがありますが、これは手数料がかからない証券会社の自己売買部門が手数料分を稼いでいるに過ぎません。)リスクがゼロになると儲からないように、ちゃんと世の中できています。日本に比べてアメリカの金利が高い場合に1年後の為替予約をすると、金利差による利益分は損失となるような為替レートでしか予約できないようになっています。
例えば、日本の金利が1%で、アメリカの金利が2%、為替レートが1ドル=140円として考えてみましょう。売為替、買為替の差や手数料、税金は考慮しません。1年後の為替予約は1%分、円高ドル安の1ドル=138.63ドルとなっているはずです。これであれば、リスクゼロの取引では利益が出ないようになります。つまり、1年後には金利差の分だけ円高ドル安になっていると予想されるわけです。理論的には、「金利が高い国の通貨は下落する」ようになっています。下落する程度は金利差で得られる利益分に相当します。
マスコミの報道で専門家が「アメリカの金利が高いので、ドルが上昇する」と解説していますが、理論的にはあり得ません。実際に高金利を得ようと円をドルに換えているわけではなく、「みんながそう思っているからドルが上がっている」に過ぎません。相場は短期的には市場参加者の〝思惑〟で動きますので、みんなが「ドルは上がる」と思えば、上昇していきます。しかし、長期的には市場は理論と整合性がある動きをします。
外貨建て保険に加入する人は、短期の為替相場の動きで利益を狙うわけではありません。日本よりもアメリカの金利が高く、保険金や解約返戻金、年金などが高いので、加入しています。しかし、高い金利で運用できるということは、長期的には為替レートで損失となり、日本円で低い金利で運用したのと変わらないはずと見るのが、理論的に整合性がある考え方です。
2023.1.4記

