主婦の遺族基礎年金①

前回までの記事『年金制度の改正と主婦の保険①~③』で、「専業主婦が死亡した場合でも、子供がいれば夫に遺族基礎年金が出るようになったので、今後は主婦には死亡保険は必要ない」という内容を書きました。
これが本当なら、無収入もしくはパート収入程度の主婦が亡くなると、かえって遺族の収入が増えることになってしまいます。
会社員の妻である主婦の場合は、第3号被保険者となっており、そもそも国民年金の保険料を払っていません。
にもかかわらず、死亡保障があるとすれば、〝保険〟の常識を超える制度であり、「優遇され過ぎ」とも言えます。
はたして、こんなことが本当に決まったのでしょうか?
微妙な問題ですので、もう一度取り上げます。

制度改正の経緯を見ていきましょう。

まず、遺族基礎年金は、一家の働き手である夫が死亡した場合に、妻子が路頭に迷わないように、年金が支給される、国の年金制度です。
夫は、保険料をきちんと払っていれば、会社員でも自営業でも対象となります。(会社員や公務員などのお勤めの場合は、さらに遺族厚生年金というものも支給されます。)
ただし、妻が子供を抱えていることが条件で、子供のいない妻には支給されません。
また、妻はいないが子供がいる場合は(あるいは妻も同時に死亡した)、子供に直接支給されます。

逆に、妻が死亡した場合には、子供だけであれば子供に支給されますが、子供を抱えた夫には支給されません。
「国民年金法」という法律には、はっきりと「妻」と記載されており、男女で違った扱いとなっていました。
一般的な男女の賃金差を踏まえてこのような制度になっていましたが、父子家庭には救済がないということで、男女差別ではないかと問題になっていました。

そこで、平成24年に法律を改正して、「妻」という文言を「配偶者」に換えました。
これでこの年の4月からは、妻が死亡して、子供を抱えた夫が遺された場合にも遺族基礎年金が支給されるようになりました。
まだ数は少ないでしょうが、妻が一家の大黒柱だという家庭もありますので、そのようなケースでは遺族基礎年金が家族を支えることになります。
法律の条文は、以下のようになりました。(一部、修正を加えています。)

 

 

国民年金法 第四節 遺族基礎年金

第三十七条(支給要件)

遺族基礎年金は、被保険者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の配偶者又は子に支給する。

ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあつては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。

一  被保険者が、死亡したとき。 (二以下、略)

 

第三十七条の二(遺族の範囲)

遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子は、被保険者の配偶者又は子であつて、被保険者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当したものとする。

一  配偶者については、被保険者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、かつ、次号に掲げる要件に該当する子と生計を同じくすること。

二  子については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか又は二十歳未満であつて障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。

 

 

一般的なケースでは、「被保険者」を「夫」とすると、分かりやすくなります。
夫が死亡した場合に「妻又は子」が遺族基礎年金をもらうことができました。
「妻又は子」が「配偶者又は子」に書き換えられたので、「被保険者」の意味も、「夫」だけでなく、「妻」も含まれることになりました。

そして、第37条では、「配偶者又は子」に条件を付けています。
条件は「死亡の当時その者によつて生計を維持し」とあります。ということは、遺族基礎年金がもらえるのは、「夫(または妻)」によって扶養されていた「妻(または夫)」ということになります。夫が一家の大黒柱であれば、専業主婦やパートの妻が、年金をもらう対象となります。妻が大黒柱であれば、〝専業主夫〟やパートの夫が、年金をもらうことになります。万が一のことがあっても、遺族が路頭に迷うことのないように、という法律の趣旨を鑑みれば、当然の条件です。

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