自宅の被害判定

日本は自然災害が多い地域です。つい先日も能登半島で大きな地震がありました。そして、そろそろ台風などの自然災害が多発する季節です。このような自然災害に備えるのが火災保険や地震保険です。火災保険は、火事に備える損害保険ですが、台風や雪の災害の被害も補償の対象です。最近では、火事による損害よりも、自然災害による損害での保険金申請の方が多くなっているほどです。

いずれも、自然災害によって自宅が被害を受けたら、保険金額の範囲内で、被害に程度に応じて保険金が出ます。その保険金は、修繕や改修、建て替えなどの資金に充当することができます。それだけに、被害を受けた際にどれぐらいの保険金額が出るのか、気になるところです。今回は自宅が被害を受けた際の〝被害の判定〟について見ていきます。

自宅が自然災害を受けた際に、被害の認定を受けるものとして、自治体による「罹災(りさい)証明」があります。これによって、公的支援の程度が違ってきます。

 損害割合公的支援策
全壊50%以上仮設住宅の供与被災者生活再建支援金の給付
大規模半壊40%以上50%未満応急修理(65.5万円まで)。居住が困難な場合は仮設住宅も
中規模半壊30%以上40%未満
半壊20%以上30%未満生活必需品供与
準半壊10%以上20%未満応急修理(31.8万円まで) 
床上浸水洪水の場合 生活必需品供与

災害の判定と罹災証明書の発行は、市区町村が行います。自治体の窓口に申請をすると、担当者の調査があり、被害の程度を5段階に分けて、被害の認定を行います。被害の程度による5段階とは別に、洪水の場合は「床上浸水」という認定もあります。罹災証明書の発行までの時間は、1週間から1か月程度です。早く認定を行うのが特徴です。東日本大震災では、地域をまとめて「全壊」と認定するようなやり方も用いられました。認定の結果に不服な場合は、二次審査を申し立てることができます。

これらの認定は、公的支援を受けられる判断基準として利用されます。例えば、被災者生活再建支援金という最大300万円までの支援金がありますが、中規模半壊以上の被害が対象になります。(人的な被害についてはまた別な基準があります。)上記の表以外にも様々な支援があります。

自治体が認定する被災の認定は、損害保険会社の火災保険や地震保険における被害の判定とはまったく別のものです。損害保険会社では、自治体とは別に被害の程度を判定します。

火災はもちろん、台風や大雪、洪水による被害には、火災保険から保険金が出ます。被害を受けたら、損害保険会社に保険金の申請をします。被害個所の写真を撮り、申請書に記入して提出します。最近では、ネットで申請手続きが完了するようになっている保険会社が増えています。

被災者の申請内容と、被害個所の写真を見て、保険会社が被害額を判定し、保険金を支給します。被害額が小さいものであれば、書類(入力)だけで保険金がすぐに出ることもあります。被害額が大きい場合は、査定員(鑑定人)が来て、自宅の被害状況を調査します。後日、保険会社から保険金支払いの有無と保険金額が通知され、保険金が支払われます。保険金額は、被害の金額を個別に査定して、加入している保険の保険金額の範囲内で、保険会社が決めます。

地震による被害は、地震保険の対象になります。こちらも個別に査定を行いますが、被害額については、4段階で判定します。

 損害基準保険金支払額
全損主要構造部分の50%以上の損害(焼失、流出は床面積の70%以上)保険金額の100%(時価の100%まで)
大半損主要構造部分の40%以上50%未満の損害(焼失、流出は床面積の50%以上70%未満)保険金額の60%(時価の60%まで)
小半損主要構造部分の20%以上40%未満の損害(焼失、流出は床面積の20%以上50%未満)保険金額の30%(時価の30%まで)
一部損主要構造部分の3%以上20%未満の損害(床上浸水などで小半損に至らない被害)保険金額の5%(時価の5%まで)

※主要構造部分は、建物の軸組、基礎、壁、屋根などの部分を指します。

※焼失は地震による火災で、流出・床上浸水は地震による津波などによる被害です。

東日本大震災時は、航空写真で地域をまとめて被害判定をしましたが、基本的には個別に査定員(鑑定人)が来て、自宅の被害状況を調査し、判定することになります。5段階に分けられますので、1ランク違うだけで、保険金の支払額はかなり異なります。

ところで、保険金を払うのは、損害保険会社です。被害の認定が小さいほど、保険会社が支払う保険金額は少なくて済みます。にもかかわらず、その認定をするのは保険会社から派遣される査定員(鑑定人)です。恣意的に、被害の認定を厳しくすることはないのでしょうか。

実際、保険金額を不服として裁判で争われることもあります。2021年の福島県沖地震で被害を受け、一部損と認定され、50万円の保険金が出たケースでは、被災者が提訴し、1,000万円を支払うよう命じる判決が出ています。全損と認定されたのです。2016年の熊本地震でも、一部損と認定されて1,050万円の保険金が出たケースの裁判で、全損と認定されて、1億5,000万円の支払いが命じられました。いずれも相手方は日本を代表する大手損保会社でした。

被害の認定を行うのは、保険会社から派遣されて被害の確認に来る査定員(鑑定人)です。この人は、保険会社の所属ではなく、損害保険鑑定会社の鑑定人です。損害保険の鑑定人としての資格を保有している人で、損害保険協会が定める損害判定基準に従って被害の判定を行います。よって、保険会社の意向で恣意的に被害額を小さく認定するということはありません。ただ、鑑定会社はいくつもあります。依頼をするのは保険会社ですので、どうしても保険会社の立場を忖度する傾向がないとは言えないでしょう。それが裁判の結果になって表れているのかもしれません。

最近は、保険請求を代行する会社が増えています。保険金で修理ができると勧める工務店もあります。そのために、保険金の請求がかなり増えています。中には、本当に自然災害による被害なのか疑わしいケースもあり、保険会社は支払いに慎重になっています。そういうこともあり、「保険金の支払いが厳しくなっている」との声につながっているのかもしれません。自然災害がなくても、経年劣化で徐々に建物は傷んでいきます。それに自然災害が加わると、経年劣化による傷みなのか、自然災害による被害なのか、判断は難しくなります。私たちとしては、詐欺的な請求をそそのかす業者の話には乗らないように注意しなければなりません。(詐欺とされたら、加害者は保険金請求をした本人になります。)と同時に、自然災害での被害にはきちんと保険金を適正な金額で払ってもらえるように工夫も必要になります。そのためのポイントをご紹介します。

  • 被害個所の写真を撮る

被災したら、すぐに被害者個所の写真を撮っておきましょう。自宅を片付ける前に撮影するのがポイントです。

  • なるべく早く保険金請求をする

保険金の請求は法律で3年間できるようになっていますが、なるべく早く請求をしましょう。時間が経過していると、悪徳業者の存在を疑われます。

  • 代行業者や工務店に注意

一度はねられた請求が、専門の団体や会社に依頼することで、覆ったというケースもあります。しかし、保険会社がチェックしている悪徳業者だとわかると、かえって疑われることになります。利用しない方が無難だと思います。

  • 査定員(鑑定人)に交渉も

自宅に査定員(鑑定人)が来たら、状況をよく説明しましょう。丁寧に話をすることで、判断が変わることもあります。

  • そんぽADRセンター

損害保険業界で設立している、中立な審判期間です。裁判よりも手軽に短期間で判定が出ます。

2023.5.26記

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