外貨建て保険①

外貨建て保険(外貨保険)が人気です。報道によると、2022年4-9月の金融機関での販売額は前年同期比で60%以上も増加しているとのことです。日本に比べてアメリカなどの海外は金利が高く、保険料に対して保険金や解約返戻金の金額が高い商品が多くなっています。さらに為替が円安ドル高に推移したこともあり、人気に拍車をかけました。しかし、外貨建て保険は為替のリスクがあり、受け取りが支払い保険料を下回ることもあります。今回は外貨建て保険について見ていきましょう。

外貨建て保険とは

外貨建て保険は、保険料を外貨で支払い、保険金、満期金、解約返戻金などを外貨で受け取る保険商品です。基本的な仕組みは日本円による一般的な保険と変わりありませんが、通貨が外貨で、アメリカ・ドル建てやオーストラリア・ドル建てが多くなっています。

外貨建てとはいっても、海外の保険会社の保険商品を現地で購入するわけではなく、日本の法律に基づいた国内の商品です。外資系保険会社のものも多くありますが、日本法人や日本支社で、日本国内で販売しています。

日本国内で販売するのに、なぜ外貨建てになっているかというと、保険料が安くなるからです。外貨建ての保険商品の場合、保険会社は外貨で保険料を集め、そのまま外貨で運用し、保険金や満期金を外貨で支払います。日本に比べて海外の方が金利は高く、外貨で運用すると高い利回りを得られます。ということは、保険料に対して保険金や満期金、解約返戻金が高くなる、というわけです。(保険金や満期金、解約返戻金に対する保険料は安くなります。)

日本円とアメリカ・ドルの為替レートは常に動きますが、外貨保険では保険料の支払いから保険金の受け取りまですべてドル建てですので、保険会社は為替レートによる損失を負うことはありません。一方、保険加入者(顧客)は、円をドルに換えて保険料を支払い、ドルで受け取った保険金を円に換えるわけですので、為替レートの変動によるリスクを抱えることになります。外貨建て保険は、為替による変動リスクを、お客が背負うことによって、高い利回りを得る商品だと言えます。

保険商品の内容としては、終身保険または個人年金が一般的です。終身保険は、保険の対象者が亡くなった際に遺族に保険金が支払われる保険ですが、途中解釈した際に戻ってくる返戻金が多いので、貯蓄商品としても利用されています。個人年金は現役中に保険料を支払い、老後に年金として受け取る保険ですので、これも貯蓄商品です。貯蓄商品として考えると、「どれくらい増えるか」がとても重要になります。「万が一に備える」という保険としての役割よりも、運用の方が重要になってきます。

先ほど触れましたように保険加入者は、保険料を払う時と、保険金(または満期金、解約返戻金)を受け取る時に、円とドルを交換します。その時の為替レート次第では、為替による利益も得られます。運用としての魅力が増すことになります。この点は、為替レートの状況次第ですので、逆に損失となる場合もあります。それをよく理解しないで加入してしまうと、結果に驚くことになってしまいます。特に保険商品は保険としての機能も付いているため、運用商品に比べて費用が割高です。さらに、保障機能が付いているために仕組みが複雑でわかりにくく、顧客からの苦情にもつながりやすい面があります。ここ数年は外貨建て保険に関する顧客の苦情件数は減っていますが、販売の増加とともに苦情も増加することが心配されています。

外貨保険の実際

外貨で保険料を払うとはいっても、実際には円で支払うのが一般的です。保険料はドル建てで決まっていますので、円では毎月の保険料が変わることになります。円高ドル安の状況だと円での支払いは安くなり、円安ドル高だと高くなります。

一時払いといって、保険料全額を一度に支払うタイプの商品もあります。このタイプでは、為替レートが円高ドル安の時に加入するとよいでしょう。保険料を毎月支払うタイプでは、為替の状況を見てタイミングを計ることはできません。為替レートは円高になることもあれば、円安になることもありますので、あまり為替レートのことは考えずに加入する方がよいでしょう。

ある程度の期間が経過して積立金が溜まったら、為替レートの状況を見ながら、途中解約することも可能です。為替が円安ドル高の状況では、為替レートによる差益が出ています。もともと、日本円での保険に比べて利回りが高くなっている上に、為替レートの差益で、日本円で受け取る解約返戻金が増えているからです。ただし、外貨預金や外貨建て債券と違い、保険商品には保障機能が付いています。その分の費用が掛かっていますので、「思っていたほど増えていない」ということは考えられます。それが保険商品の本来の姿ですので、その点はやむを得ないところです。保険商品による資産運用は、本来の目的ではない利用だということです。

保険の対象になっている人が亡くなった場合は、保険金が出て、保険が終了します。こればかりはタイミングを計ることはできません。為替レートの状況が良ければ(円安ドル高)、ドルで出た保険金を日本円に換えて受け取ればよいでしょう。悪い(円高ドル安)の場合は、外貨で受け取ることができます。その場合は、銀行に外貨預金口座を設けて、そこにドルのまま振り込んでもらいます。そのままドルで保有して、タイミングを見ながら(円安ドル高になってから)、円に換えるとよいでしょう。

個人年金の場合は、亡くならない限り、年金として受け取るのが基本です。その場合は円での受取額は毎回異なります。個人年金でも一括で受け取ることもできますので、いったんドルで全額を受け取り、タイミングを計りながら円に転換するのもよいでしょう。

メリット&デメリット

メリットとデメリットを見ていきます。これは表裏一体の関係ですので、メリットの逆がデメリットとなります。

まずは、保険としての保障と運用商品としての収益の両方が期待できることです。万が一の場合には保険金が出ます。終身保険か個人年金ですので、定期保険のように大きな保険金が出るわけではありません。しかし、それでも万が一に対する備えにはなります。為替レートが多少悪くても、払い込み保険料を上回るケースは多いでしょう。円での保険よりも高い金利で保険料と保険金が決められているからです。逆のデメリットは、保険機能がある分、費用が高いということです。途中での解約の場合は、その費用の負担が重くなります。

次のメリットは、海外の金利が高いために、支払い保険料と保険金、解約返戻金の割合が魅力的に設定されています。日本円での終身保険や個人年金に比べて、保険金、解約返戻金が高く(保険料が安く)なっています。たいていの商品が、保険金や解約返戻金がドル建てで決まっている利率確定型ですので、加入時にドル建てでの利回りが決まります。逆のデメリットは、円をドルに換えて運用し、ドルを円に戻して受け取ることになりますので、為替のリスクが発生します。加入者は高い利回りを得る代わりに、為替の変動というリスクを抱えることになります。

3つ目のメリットは為替の差益を得られる可能性があることですが、お分かりのようにこれはデメリットでもあります。死亡する時期は選べませんし、途中解約するといってもタイミングは難しいものです。タイミングが悪ければ、外貨預金のドルで保有しておけばよい、とは言っても、これは問題の先送りに過ぎません。さらに為替の状況が悪くなる可能性もあり、リスクが小さくなるわけではありません。

そして、外貨預金はドルで入金できない金融機関が多いこともネックになります。実は外貨預金とは言っても円でしか入金できない金融機関が少なくありません。保険金の受け取りの際にあわてることにもなりかねません。また、送金の手数料が高いこともありますので、その点も注意が必要です。

やはり外貨建て保険を、外貨預金や外貨建て債券のように、運用商品と考えて利用するのは適切ではありません。保障を準備することを中心に、「場合によっては為替差益を確保してしまう」というぐらいのつもりで考えておくのがよいでしょう。

次回には、外貨建て保険で利益が出た場合の税金の扱いと、為替相場の考え方を見ていきます。

2022.12.29記

質問はこちらから