ペット保険

ペット保険の市場が拡大しています。日経新聞の集計では、2018年3月期は約600億円でしたが、4年後の2022年3月期には約1.6倍の1,000億円超にまで増えています。大手生命保険会社や保険会社も子会社や事業提携などでこの分野に進出しており、市場の拡大を狙っています。今回は、ペット保険について見ていきましょう。

長い目では核家族化、短期的にはコロナ禍が影響して、ペットを飼う人が増えているようです。ペットを飼う人が増えれば、当然のことながら、ペット保険に加入する人も増えていきます。ただそれ以上に、ペットの医療費が増加していることが、ペット保険の増加の要因となっています。まず、医療の高度化などでペットの平均寿命が延びています。ペットの世界でも高齢化が進んでおり、医療を受ける機会が増えています。そして、医療の高度化は治療費の増加につながります。医療技術の進展が、医療費用の増加につながっているのは、人間もペットも同じです。さらに、少子化や巣ごもり傾向で、ペットへ注ぐ愛情も増しています。ペットはもはや家族の一員で、できる限りの治療をして延命を図ろうという人が多くなっています。ペットの医療は、人間のように健康保険はなく、全額が自己負担です。それだけに、医療費への備えは大切です。

東京都福祉保健局の調査では、犬の医療費は年額1~3万円が21.9%、同3~6万円が31.7%と、過半数が6万円以下です。しかし、中には50万円超(2.4%)、20~50万円(7.8%)という答えもあり、大きな金額がかかっているケースもあります。猫の医療費は年額1~3万円が32.7%、同3~6万円が17.5%と、こちらも過半数が6万円以下です。しかし、こちらも数十万円を要しているケースもあり、安心はできません。

ペットを飼っている人のうち、ペット保険に加入している人の割合は10~15%ぐらいと言われています。月額保険料は、ペットの年齢によって異なりますが、月額1,800~3,000円程度が一般的です。年額では2~4万円になります。上記のデータでご覧のように、半数以下は6万円以内で収まっていますから、保険に加入した方が良いのかは微妙なところです。ちょっとした治療であれば、それほど大きな負担ではありませんが、手術を伴うような治療をする場合、そしてペットの年齢なども考慮して検討したいところです。

国内でペット保険を扱っているのは約20社で、損害保険会社または少額短期保険会社のどちらかです。少額短期保険会社は、保険金額1,000万円以下、保険期間は2年以下の保険商品だけを扱える登録事業者です。損害保険会社は免許制ですので、いずれも金融庁の監督下にある保険会社です。ただし少額短期保険会社は、保険会社が破綻した場合に一定額までが保護される損害保険契約者保護機構には加盟していません。昨年には、ペット保険を扱っている少額短期保険会社で保険金の支払いに遅延が発生し、業務停止命令を受けるという事案が起きました。その保険会社は、大手生命保険会社の傘下に保険契約を移して倒産しました。幸いにも保険契約は保護されましたが、いつも救済されるとは限りません。

ペット保険は利益率が低く、保険会社は経営基盤が盤石ではありません。保険金額や保険料が小さく、その割に手間がかかるからです。最近ではすべてをネットで完結する保険会社も増えてきました。

また、大手損害保険会社や生命保険会社が傘下に収めたり、資本提携をするケースが増えてきました。損保会社や生保会社にとっては、利益よりも顧客との接点を増やしたいということで、経営に乗り出しているようです。今年に入り、ペット保険最大手のアニコム損保が東京海上日動と資本提携をしました。同じくペット保険大手のアイペット損保は第一生命の子会社になっています。少額短期保険会社でも、既存の保険会社の傘下入りや販売面での業務提携を結ぶなど、動きは活発です。

では、ペット保険の商品内容を見ていきましょう。基本的には、対象は犬または猫ですが、その他にもウサギや鳥などを対象にしている保険会社もあります。保険金で補償されるのは、かかった医療費の50%または70%が多くなっています。90%までを補償するというところもあります。上限額は、通院1日につき1万~1万2千円、入院1日につき1~2万円、手術は10~15万円が多い傾向です。上限額を設けずに無制限となっている保険会社もあります。金額ではなく、給付日数に制限がついていることもあります。逆に免責金額を設けて、一定額までは保険金を払わないというケースもあります。

一方の保険料は、月額1,800~3,000円が多くなっています。保険料はペットの年齢が若い方が安いのですが、契約は1年更新のため、毎年あるいは3年ごとに保険料が上昇していくことになります。猫よりも犬の方が少し高く、さらに犬は小型犬と大型犬で保険料が違ってきます。マイクロチップを付けていると割引が適用されます。

加入年齢は、10歳前後までが多いのですが、7歳を超えると加入できないものもあります。既往症によっては、補償に制限がつくこともあります。待機期間が設けられているケースも多く、加入してすぐの治療は対象外になります。ケガで15日、病気で1ヶ月、ガンで3ヶ月が多いようです。(高齢化にともない、ペットにもガンは増えています。)

補償の対象になるのは、診察料、治療費、入院料、手術料、薬剤料などです。逆に対象外なのは、ワクチン接種、健康診断、去勢・避妊手術、妊娠・出産費用などです。加入前からの病気も対象外となります。ペットの治療で多い歯科治療は対象外としている保険会社が多いのですが、中には対象にしているところもあります。

特約として、ペットが他人に危害を与えた場合の損害賠償を賄うペット賠償責任保険やペットの車いすや葬儀費用をカバーする補償もあります。ペットの損害賠償は、一般の損害賠償保険でも補償の対象になっており、この保険は火災保険や自動車保険に特約として付いていることが多いです。確認してから特約の検討をしましょう。

保険金の上限額や免責額、対象の範囲といった補償の充実と保険料の兼ね合いで保険商品を選ぶことになりますが、補償金額は無制限でも給付日数が限られるとか、免責金額がある、など選択肢が多く、なかなか比較は難しいところです。犬種、猫種によってもかかりやすい病気は違い、それによって治療にかかる日数や治療費が違ってきます。どこを重視するかで選んでいくのがよいでしょう。

人間と同じで、年齢が若いうちはあまり医療費の心配はありませんが、年齢が上がるとともに病気になる可能性が高まります。5歳前後になったら加入を検討するとよいでしょう。人間の医療保険と違い、保険料は年齢とともに上昇していきます。早めに加入することによるメリットはそれほどありません。(人間の医療保険では、加入時の年齢での保険料がずっと続きます。そのため、保険料が安い若いうちに加入した方がお得だという考え方もあります。)

また、先ほど述べましたように、ペット保険の保険会社は必ずしも経営基盤が盤石ではありません。経営が苦しい保険会社ほど目先の契約欲しさに、保険料を安く、補償を充実することがあります。しかし経営状態までは、なかなか外からはわかりません。一概には言えませんが、大手生損保との関係をチェックするのも1つの手段です。

2023.7.24記

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