新型コロナウィルスの感染が広がり、マスクが品切れ状態になっています。どこのドラッグストア、スーパーでも「入荷待ちです」の張り紙で、買うことすらできません。ネットでは、通常の10倍、20倍もの価格で売りに出されています。中にはマスクを買い占めて、ネットで高値で売却し、大儲けをしている人もいるようです。
「マスクは、自分から他人への感染防止には役立つが、他人の感染から自分の身を守る効果がない」と言っている専門家もいて、マスクの効用にも意見が分かれているようです。それはともかくとしても、医療従事者や病気の人など、どうしてもマスクが必要な人もいます。そのような人も店頭で手に入れることができなくなり、困っています。テレビでも、マスクをネットで高値転売している人を批判的に取り上げていました。
ある番組では、マスクの高値転売で大儲けをした人の覆面インタビューを放映していました。それによると、首都圏でマスク不足となり始めた頃、地方のドラッグストアではまだ売られていたそうです。その人は車で地方の店舗を回り、買えるだけ買って回ったそうです。それをネットで出品し、高値で売ることができたそうです。「1日で100万円ぐらいの利益になった」と豪語しています。多くの人が困っているのを利用して、あぶく銭をつかむ「モラルに欠ける人」のように見えます。しかし、考え方によっては、困っている人を助ける「いい人」でもあるのです。在庫がある地域からない地域に、商品を流してくれているからです。これによって助かった人は少なくないでしょう。
店舗で売られていれば、安い価格で購入できますが、そもそも売られていないからです。入荷すれば店頭に並ぶかもしれませんが、多くの人が殺到しますので、あっという間に売り切れてしまいます。店舗では安く購入できるため、「念のために買い置きしておこう」という人が殺到してしまうのです。医療従事者や病気の人が、ずっと店頭で入荷を待ち続けるわけにもいきません。結果、仕事や病気などで「どうしても」マスクが必要な人であっても、もはや入手することができないのです。
それに対し、ネットオークションであれば、かなりの高額となりますが、入手は可能です。ネットオークションなどで高額での取引が成立していますが、購入している人は「お金持ち」ではありません。いくらお金があっても、高額であれば、不要なマスクを購入はしません。高値で購入しているのは「どうしても必要としている人(または組織)」です。病院など、「マスクがないので、手術は延期です」というわけにはいきません。本当に在庫がなければ、どんなに高額でも購入します。病気でどうしても必要な人も同じです。ネットオークションにしても、ネットショッピングにしても、高い価格にもかかわらず購入する人は、高い支払になってしまったものの、マスクを入手できたことで助かっているのです。ネットのおかげで、「まったく入手できない」という事態を避けることができます。もちろん、必要以上に高く購入する必要はありません。他にもう少し安い価格での出品があれば、そちらから購入することができます。売却する方も、他の出品者との競争になりますので、他よりも高額で出品したら売れないだけです。
「もっと安く出品すればよいではないか」と言われるかもしれません。しかし、安く出品すると、店舗と同じで、「念のために買っておこう」という人が購入し、あっという間に売り切れてしまうのです。ネットでは価格が上昇することで売り切れを防いでいるのです。
価格の上昇は、「本当にマスクを必要としている人」とそれほど必要でもないのに「念のために買い置きしておこう」という人を選別し、「本当にマスクを必要としている人」の手に渡るように機能しているのです。
こう言うと、「マスクを必要としているが、それほどお金がない人は、高値での出品で入手できない」との指摘があります。その指摘は確かに当たっています。本当に困っている人が生じるのは確かです。しかし、だからと言って出品価格に制限をかけると、あっという間に売り切れとなり、本当に必要とする人が、どうやっても入手できなくなってしまうのです。かつてのソ連で、零下数十度の中、マーケットの前に食品を買い求める行列ができました。価格は統制されていましたので、物があれば安く購入できるのですが、物自体がなく、行列を作らなければならなかったのです。もちろん、病気の人などはまったく入手ができないということになります。これは「平等」ではありますが、「公平」ではありません。
「需要」と「供給」で価格が動くということは、必要としている人に確実に商品が渡るような調整作用になっているのです。
2020.3.3記

