マクドナルドに入ると、「ペアレンツハウス」支援の案内や募金箱を目にします。日本マクドナルド社が、ペアレンツハウスを運営していて、その支援活動の報告とお客にも支援を呼びかける内容です。マクドナルドで初めて「ペアレンツハウス」というものの存在を知った人は多いのではないでしょうか。かく言う私もその一人です。
ペアレンツハウスは、病気で入院が必要な子どもの〝親〟が宿泊する施設です。病気の子供が利用するのではなく、親が利用するのがポイントです。小児がんなど、子供の重篤な病気のだと治療を受けられる病院は限られます。小児がん拠点病院に指定されている全国14か所のうち、8か所は首都圏と京阪神と、治療環境が良い病院はなかなか地方にありません。地方などでは、自宅から離れていることも多く、母親が毎日子供に寄り添うとなると自宅から通うのは大変です。そのために、母親が病院の近隣のホテルに長期間宿泊すると、ただでさえ医療費の出費が大きいのに、その上にさらに経済的な負担が大きくなります。そこで、安価な料金で宿泊できるようにした施設が「ペアレンツハウス」です。
先日、生命保険会社アフラックが運営するペアレンツハウス亀戸を見学させていただきましたので、ご紹介いたします。アフラックのペアレンツハウスは、東京・亀戸と浅草橋、大阪の3か所あり、マクドナルドのものと同じように、病気で入院している親が宿泊する施設です。
アフラックは、外資系の保険会社(本社アメリカ)で、日本でがん保険を最初に販売した会社です。現在では医療保険は死亡保険、学資保険など、いろいろと扱っていますが、やはりがん保険では国内でトップシェアを占めています。それだけに、がんに関する社会貢献活動にも取り組んでおり、がん検診の啓発活動や奨学金制度を行っています。
ペアレンツハウスもその一環です。がんだけでなく、その他の難病も対象ですが、やはり小児がんが中心です。アフラックの保険契約者ではなくても利用できます。顧客サービスではなく、社会貢献活動として運営されているからです。アフラックが費用を出し、公益財団法人「がんの子どもを守る会」が運営しています。
宿泊費は1泊1,000円です。その代わり、食事はついていません。個室のほかに、リビングとキッチンがあり、自炊をすることもできます。洗濯機も利用でき、長期の滞在に向いています。個室の広さはさまざまで、母親が一人で滞在するような一人部屋もあれば、父親や兄弟姉妹も滞在できるような広めの部屋もあります。
安く宿泊できるだけでなく、小児がん家族を支援しているスタッフが迎えてくれ、同じ悩みを抱えた他の宿泊者と励ましあえるのも、大きな魅力です。このつらい状況は、同じ立場になった親だからこそ、苦しみを分かち合えるという面もあります。なかなか小児がん子どもの親同士で話し合える機会はありません。また、滞在した人の話では、つらい気持ちで帰ってきた時に「おかえりなさい」とスタッフが出迎えてくれるのが支えになったとの声もあるそうです。ペアレンツハウスで過ごす期間は、つらい時期ではありますが、子供が回復してくれた後には、忘れられない心の支えになるでしょう。
かつては回復が難しかった小児がんですが、現在では7~8割が治癒しています。しかし、回復した後のフォローも大切になります。定期的な診察のために、地方から出てきて滞在することもできるようになっています。また「がんの子どもを守る会」では、小児がん経験児やその家族のための支援を続けています。ペアレンツハウスは、がん経験児だけでなく、その家族、特に兄弟姉妹にとっては、つらい時期を乗り切った思い出の場所でもあり、交流会なども開催されているそうです。
小児がんから回復した後に、障害が残ることがあります。幼い子供の時期に強い抗がん剤や放射線の治療を受けたため、身長が伸びにくかったり、疲れやすいなど、身体的にも精神的にも影響が残ることがあるのです。「晩期合併症」といいます。なかなか就職ができなかったり、周囲とうまくやっていけないなど、大人になっても影響は続きます。ペアレンツハウスはこれから、このようながん経験者と家族の支援の拠点にもなっていくと思います。「がんの子どもを守る会」とその支援をするアフラックの今後の活動は、ますます重要性が増していくことでしょう。
2020.2.5記

