厚生年金基金の代行返上とは

厚生年金基金は、3階に相当する基金独自の上乗せ部分だけでなく、本来国が運用する部分である2階部分の一部を基金が代わって運用しています。
なぜ、このように国が運用する部分を民間の基金に任せたのでしょうか?

1つには、基金に任せるお金を多くして、運用をしやすくするという面がありました。
まとまった資金を運用した方が、運用のコストは割安で、分散投資ができるなど安全性も高められるからです。

もう1つの理由があります。
歴史的には2階よりも3階部分の方が先に出来ていました。
戦前から大手の企業は、社員のために独自の年金制度を設けていたのです。
そこへ戦後、国の年金制度が整備され、サラリーマンのために2階部分が作られ、金額もアップしていきました。
すでに3階部分を設けていた企業にとっては保険料の負担が重くなります。
そこで、2階部分の一部を基金で運用していることにして、つじつまを合わせることにした、というのがもう1つの理由、というよりも本当の理由です。
それ以降に設立された年金基金も同じ制度で、国が運用すべき部分の一部を代行して運用することになりました。

国が本来運用すべきところを基金が代行して運用した部分は、老後に年金を給付する際も、基金が行います。
年金定期便などで年金の金額を見て、あまりにも少ないので、驚いた方もいることでしょう。
基金が代行している部分については、日本年金機構(旧社会保険庁)が給付しないので、年金の金額として記載されないからです。
基金にも問い合わせて、始めて自分の年金額を知ることができます。
(会社独自の3階部分は別として、国によって定められている2階部分までは記載しておくのが親切ではないかと思いますが。。。)

国が行うものを代行しているのですから、その部分については、国によって定められた金額を給付すればよいことになっています。
まとまった資金を運用することで得られた利益は、全て3階部分の給付に充てられます。
運用環境が良かった時は、確かにまとまった資金を運用するメリットがありました。
しかし、運用環境が厳しくなると、3階部分どころか、2階部分の給付に充てる資金すら不足するようになってしまいました。
運用するほど損失が増えるようなら、やめた方がいい。
ということで、厚生年金基金をやめて、3階部分のみ運用する確定給付年金への移行が相次ぎました。
その部分を本人に運用してもらう確定拠出年金(企業型)へ移行する企業や、3階の年金制度をまったくなくしてしまう企業もありました。
ただし、いずれにしろ国が運用するのを代行していた部分は、その時点での適正な金額で国に返さなければなりませんでした。
これが、少し前に話題となった「代行返上」です。大手企業の場合は、2階部分の穴埋めを会社が被って返上してしまいました。
会社としては大きな損失となりましたが、すっきりすることができました。
それができない企業、特に中小企業が合同で運用している基金が残ってしまいました。
現在残っている基金のうち、約4割が代行部分の資金もない「代行割れ」の状態です。

国は、いよいよ厚生年金基金を廃止することにしました。
代行部分の1.5倍の資産を保有していて、代行割れの心配がない一部の基金だけには存続を認めますが、それ以外は5年以内の解散を促します。
解散の要請に応じない場合は、強制的に清算して、代行部分を国に返させます。
そこで不足が生じる場合は、15年ぐらいかけてでも母体企業が分割で支払うようにさせるとしています。
もし、母体企業の経営存続に支障が出るような場合は、適正な運営を行っていた基金に限り、負担額に上限を設けることを検討しています。
つまり、最後は国が尻拭いをするということになります。微妙な問題を含んでいますので、詳細はまだ決まっていない部分があります。
今後の成り行きが注目されます。

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