最近、「家族信託」という言葉を見かけるようになりました。
「家族信託」という言葉は、親族が本人に代わって財産を管理する制度として、一般的に使われるようになってきましたが、一般社団法人家族信普及協会という団体が商標権を持っています。
したがって、この団体の許可なく、勝手に「家族信託」という言葉を使うことはできません。(今のところ、同協会では適切な使い方をしてくれるのであれば、許可なく使用しても構わないという姿勢です。)
「家族信託」は、正しくは「民事信託」といい、この記事でも「民事信託」と書きます。民事信託に相対するのが「商事信託」です。
「商事信託」は、信託業法に基づいた信託銀行や信託会社のみが扱うことができます。
親族が本人に代わって財産を管理するのは「民事信託」です。
では、「民事信託」のご紹介です。
その前に、「信託」の意味についてご紹介いたします。
「信託」は、財産を持っている人の代わりに、別の人がその人の財産を管理することをいいます。
財産を持っている人でも、その管理や運用がうまくできるとは限りません。
そこで、その人に代わって、財産の管理や運用について詳しい人が、その財産の管理をします。
運用の結果、生じた利益は、財産の持ち主が得ます。
運用や管理をしている人は、財産の運用を任せた人から一定の報酬をもらいます。
かつて、イギリスで貴族が、自分の財産を幼い子供が相続した際に、他の人に管理してもらうために作られたようです。
「信託」というと、「投資信託」を思い浮かべる人が多いかと思います。「投資信託」も「信託」の一種です。
あれも、個人の投資家が、自分の財産を専門家に運用してもらう仕組みです。運用の成果は、財産を出した人が受け取ります。
運用の専門家である金融機関は、一定の報酬を受け取ります。
このような仕組みですから、投資信託も立派な「信託」ではありますが、金融商品としての性格が強く、信託(=財産を預ける)という意識は少ないかもしれません。
本当の意味で、「財産を預ける」という面を強く意識した商品が、本来の「信託」です。
では、「信託」の仕組みを説明します。登場人物は3人です。
「委託者(いたくしゃ)」「受託者(じゅたくしゃ)」「受益者(じゅえきしゃ)」という名前が付きます。
「委託者」と「受益者」は同じ場合もあります。その場合は2人ですね。
「委託者」は、資産を持っている人です。
この人が、資産の管理と運用を専門家に任せる(委託する)ところから話が始まります。
ポイントは、管理と運用を、完全に任せてしまうことです。
自分でできないから、専門家に任せるわけで、一度任せた以上、あれこれ口出しはしません。
制度の仕組みとしても、口出しできないようになっています。
運用の最中に、いちいち指図はできませんが、事前に大まかな方針を決めて依頼することはできます。
「受託者」は、資産の管理と運用を委託された専門家です。
委託された、つまりこの人から見ると〝受託〟になりますので、受託者です。
任された資金は責任をもって管理します。
そして、受益者の利益になるように、懸命に運用をします。
運用がうまくいっても、受託者の利益が増えるわけではありません。
逆に運用がうまくいかずにマイナスとなることもありますが、受託者が身銭を切ることはありません。
受託者は、財産の管理と運用で、一定の報酬を得ます。
運用で利益が出たら、それをもらう人は「受益者」です。
「委託者」と「受益者」が同じ場合は、理解しやすいです。
お金を持っている人が、専門家に管理と運用を任せて(一定の報酬を払って)、財産を増やす(利益を得る)わけです。
投資信託は、このケースです。
「委託者」と「受益者」が違う場合はどうでしょう。
お金を出している人と、その運用によって生じた利益をもらう人が別なわけで、不自然に思えるかもしれません。
でも、「委託者」が親、「受益者」が子供の場合は、それほど違和感はないでしょう。
親が子供に資産を与え、「これを運用して利益を得なさい」と言ってもいいのですが、子供が財産の管理と運用ができない場合もあります。
その時に財産の管理と運用を専門家に任せて、運用の成果だけを子どもが受け取るようにするのです。
これなら、子供が幼い場合でも安心です。
子供が管理・運用ができずに、資産を減らしてしまう心配がなくなります。(「受託者」である専門家の運用がうまくいかず、資産が減る可能性はあります。)
また、資産をそのまま渡してしまうわけではないので、子供がすぐに資産を食いつぶしてしまう心配もありません。
「受益者」である子どもが受け取るのは、資産の運用で得た〝利益〟だけだからです。

