信託と生命保険、遺言書の比較

相続において、親が自分の財産の分け方を指定できる方法は、いくつかあります。そのメリット・デメリットを比較してみましょう。

① 生命保険への加入

生命保険に加入すると、加入の際に「保険金受取人」を指定します。
保険金は、生命保険会社から死亡保険金に直接支払われますので、他の遺族はかかわりません。
保険金は、死亡したら払われますが、「相続財産」ではありませんので、遺産分けの対象ではありません。
よって、親が確実に渡したい子どもに、渡したい金額を遺すことができます。
「もしもの場合の遺族の生活保障」のためではなく、相続対策として生命保険に加入する人も少なくありません。
さらに、死亡保険金は一定の非課税枠がありますので、相続税を少なくする効果もあります。

デメリットは、一度にまとまった金額が保険金として出ますので、大金を受取人が管理しなければならないことです。
早くに浪費して使ってしまうこともあれば、資金を増やそうとして運用で失敗してしまうこともあります。

② 遺言書を作る

遺言書は、遺産の分け方を指定するものです。
自分で書いて自宅に保管していても良いのですが、公証役場で公正証書遺言を作成しておくと、より確実です。
生命保険の場合に指定するのは、その保険金の部分だけですが、遺言書であれば、すべての財産の分け方を指定できます。
金融資産はもちろん、不動産も指定できます。
公正証書遺言の作成は、行政書士や司法書士などにお願いしてもよいですし、自分で公証役場に行って作成してもらうこともできます。
自分で公証役場に行けば、作成費用はそれほど掛かりません。

デメリットとしては、こちらも遺産の分け方の指定ですので、その後に相続人がどのように資金を使うかはわかりません。
また、遺言書を作成していても、相続人全員が合意したら、遺言書に従わないこともできます。
よって、確実に履行されるとは限りません。相続税対策にもなりません。

③ 財産を信託にする

財産を信託にしておきます。
親が生きているうちは親が受益者(利益や分配の受取人)となるようにしておき、親が亡くなったら指定した子供が受益者となるようにしておくとよいでしょう。
また、親が亡くなると同時に信託がスタートするようにしておくのもよいでしょう。
信託にする場合、利益や分配の支払い方を、あらかじめ決めておくことができます。
「毎月10万円ずつ支払う」と決めておけば、親の死後もそれが続きます。
よって、受益者である子どもが、短期間に浪費してしまったり、運用して減らしてしまう心配がありません。
受益者である子どもが亡くなった後の、次の受取人まで指定しておくこともできます。

デメリットは、相続税対策にはならないばかりか、贈与税がかかることもあることです。
子どもを受益者として財産を信託すると、その時点で財産を贈与したことになり、贈与税の対象になります。
親が生きているうちは、自分(親)を受益者とするなどの工夫が必要です。

上記3つの方法を比べていただくとわかるように、生命保険と遺言書では、財産を相続する人を指定することはできますが、その後の使い方までは指定できません。
それに対して、信託では、相続した人が自由に使えないようになっていますので、計画的な利用を促すことができます。

一方、信託は相続税の節税にはならないどころか、多額の贈与税がかかってしまうこともありますので、使い方に注意が必要です。

このように、それぞれの制度にメリット・デメリットがありますので、相続に利用したい場合は、その特徴をよく踏まえて選ぶことが大切です。
実際に利用する場合は、金融機関だけでなく、行政書士や司法書士などにも相談するとよいでしょう。

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