民事信託とは②

「民事信託」のご紹介ですが、その前に「信託」というものについてご説明していきます。

「信託」の登場人物は「委託者」「受託者」「受益者」の3人。です。

「委託者」は資産を持っている人です。その資産の管理と運用を、専門家などの第三者に任せます。任された専門家である「受託者」は、「委託者」に成り代わって、資産を管理&運用します。その運用の利益を得るのが「受益者」です。「委託者」=「受益者」の場合もあります。この場合は、資産の管理&運用を、運用が上手な人に任せる、というだけの話です。投資信託はこのパターンです。

ところが、「委託者」≠「受益者」の場合もあります。運用の利益を得るのが、資産を出した人ではなく、別の人になるのです。これは、親子などをイメージするとわかりやすいでしょう。親はお金を出す「委託者」です。親は子どもに資産を与えても良いのですが、直接与えると、うまく管理できるかが心配です。まだ子どもが幼い、まとまった資金を得ると使ってしまう、運用が難しい、などが理由です。そこで、資産は専門家である「受託者」に預けて管理&運用してもらい、その成果(利益)だけを子どもに渡していきます。その場合、「受益者」は子どもになります。

「預金」と似ているようですが、違います。預金は、いつでもお金を引き出すことができますが、信託は委託者の指示がなければできません。受益者は、利益や資産の一部を定期的に受け取ることはできますが、すべてを解約して出金したりすることはできないのです。ここが「信託」の大きなポイントで、制約でもあり、メリットでもあります。

所有権はどうなっているのでしょうか? 登記上の所有権は「受託者」となります。よって、委託者や受益者が破産しても、財産は守られます。この点もメリットとなります。ただ、税務上では、信託を設定した時点で、「受益者」が贈与を受けたものとみなされます。信託を設定した段階で、贈与税がかかりますので、注意が必要です。

「信託」の最大の特徴は、先に触れましたが受益者」が勝手に引き出せない、ということです。受益者に渡されるのは、信託された財産を運用した結果得た利益だけではありません。信託された財産を、少しずつ小分けにして受け取ることもできます。「受益者」がどのように受け取るか、または資産を取り崩していくかを決めるのは、「委託者」です。例えば、「月額10万円ずつ資産を取り崩していく」と決めておけば、毎月10万円が受益者の口座に振り込まれます。それ以上の金額は、受益者は勝手に引き出すことができません。受益者にとっては、自分の自由にならず、使い勝手が悪いといえます。そこが〝メリット〟となるのです。

親が元気なうちは、毎月少しずつ資産を渡していくことができますし、それが普通のことです。ところが親が亡くなると、遺産はすべて子どものものになります。計画的に使えるのなら心配ありませんが、浪費癖があると、あっという間に散財してしまうかもしれません。その点、親が財産を信託にしておけば、親亡き後も、親が指定した方法で、受益者である子どもに資産を渡してくれます。資産は受託者がしっかり管理&運用しています。受益者には、委託者の指定どおり「月額10万円」ずつ、受益者の口座に振り込んでいきます。やむなく(?)、受益者にとっては長期間にわたって安定した収入となります。

私は、子供が障害者、ひきこもり、浪費癖がある、などの場合に、「信託」として子供に財産を遺すことをお勧めしています。

信託は、親が元気なうちに設定をしてスタートすることもできますが、子どもを受益者とすると、設定した時点で信託した金額のすべてに贈与税がかかってしまいます。そこで、親が元気なうちは親が受託者を兼ねて、利益を受け取っておき、親が死亡した時点で子どもが受益者となるように設定しておくとよいでしょう。相続税の対象にはなりますが、贈与税と比べると、税額は低く、大きな非課税枠があります。

また、あらかじめ設定をしておいて、親が亡くなった時点で財産が信託されるという仕組みもできます。

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