日米関税交渉での投資の合意

自民党総裁選で高市早苗氏が当選し、日本維新の会と連立を組んで、総理大臣に就任しました。ようやく、初めての女性首相が誕生したわけですが、高市氏の保守的な政治信条から、女性〝識者〟からの評判はあまり良くないようです。それとは別に、高市氏は経済政策においても今までの首相とは考え方が異なり、今後の日本経済、そして株式市場の動向に影響を与えそうです。

その前に、9月に合意された「日米の戦略的投資に関する覚書」について見てみましょう。この合意によって、アメリカの日本からの輸入品にかかる関税は15%になりました。交渉したのは石破内閣の赤澤大臣ですが、先日のトランプ大統領と高市首相との会談でも合意内容を確認しています。

「日米の戦略的投資に関する覚書」の重要ポイント

  • 日本は、2029年1月までに、5,500億ドル(約5兆円)をアメリカに投資する。
  • 投資先は、アメリカ側が決める。
  • 投資は、米国側が管理する投資SPV(特別目的会社)を通じて行う。
  • 投資による利益は、当面は日米50%ずつ配分し、その後はアメリカ90%、日本10%の割合で配分する。
  • 日本は、アメリカ大統領が投資先を通知してから45日以内に、指定された口座に資金を拠出する。
  • 日本は、資金提供をしないことを選択することもできるが、その場合はアメリカと協議する。
  • 協議プロセスを行ったにもかかわらず全額供与をしない場合、アメリカは日本からの輸入品に対して関税を引き上げることができる。
  • この覚書は、日米両国間の行政上の了解で、法的拘束力のある権利・義務は生じない。

日本の国家予算がおよそ115兆円ですから、4年間で84.5兆円というのは大きな金額です。その資金を誰が出すのか、覚書には明記されていません。トランプ大統領の訪日に合わせ、国内の大手企業がいくつも、「関心を有している」として名前を挙げました。民間企業だけで賄えるのならよいのですが、利益の配分割合まで指定されていますので、どうなのでしょうか。赤澤大臣は「最大5,500億ドル」(それより少なくても問題ない)と言っていますが、そんなことは書いてありません。いずれトランプ大統領は、関税の引き上げを人質にして履行を迫ってくるかもしれません。

当面は、日本からの輸出品に15%の関税が果たされることになりました。日本経済にとっては、かなりの痛手となり、景気に与える影響は小さくないと見られます。ただ、改めて考えると、15%程度であれば、為替相場の影響の方が大きいと言えるかもしれません。1ドル=140円から160円へと「円安ドル高」が進むと、ほぼ15%の関税を帳消しにできます。直近も円安ドル高に推移しており(現在1ドル=153円)、1ドル=160円台になるとの見方もあります。15%の関税率だけで、直ちに日本の景気が冷え込むような心配はしなくてもよいのではないでしょうか。もっとも、為替相場次第では負担が重くなりますし、いつまた再度の引上げがなされないとも限りませんので、不安はつきまといます。

2025.11.6記

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