5月末にOECD(経済協力開発機構)が世界の経済成長率の見通しを公表しました。OECDは約3ヶ月ごとに見通しを公表していますが、2021年のGDP成長率の見通しの推移を見てみましょう。いずれも今年の成長率の予想ですので、〝見通し〟を修正した推移がわかります。
今年(2021年)のGDP成長率の見通し
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昨年12時点の予想 |
3月時点の予想 |
5月末の予想 |
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中国 |
8.0% |
7.8% |
8.5 |
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イギリス |
4.2% |
5.1% |
7.2% |
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アメリカ |
3.2% |
6.5% |
6.9% |
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ユーロ圏 |
3.6% |
3.9% |
4.3% |
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日本 |
2.3% |
2.7% |
2.6% |
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世界全体 |
4.2% |
5.6% |
5.8% |
直近の予想(5月末)が、高い順に並べてみました。中国は昨年の12月から高い予想になっていましたが、先進国の中では、イギリスとアメリカが大幅に上方修正になっているのがわかります。イギリスとユーロ圏はお隣で、経済的な結びつきも強いのですが、大きな差になってしまいました。これは新型コロナワクチンの接種が影響しています。イギリスの接種が進んでいるのに対して、ドイツやフランスでは遅れているからです。それでもユーロ圏も3月時点の予想から上方修正になっています。
日本は今回の予想では下方修正になりました。これはもちろん、ワクチンの接種が遅れているためです。もともと低い上に、ワクチン対応の遅れが、経済の回復を遅らせています。
イギリスの7.2%も高いですが、アメリカの6.9%もかなり高い数字です。先進国で7%前後の経済成長というのはあまり見たことがありません。前年度がマイナスとなっているため、その反動で高くなっている面もありますが、それにしても高い経済成長です。景気が〝過熱〟している状況と言ってもよいでしょう。
アメリカに関して言えば、新型コロナの騒動はもう終わった話みたいになっています。ワクチン接種の進展とともに、1日当たりの感染者数は昨年と比べると激減しています。しかし、それでも6月に入ってからの7日平均で比べると、日本は100万人あたり19.3人なのに対してアメリカは47.7人と、日本の倍以上です。日本がいまだに大騒ぎしているのに、どうなっているんだ?という感じです。
アメリカは今はとにかく、空前の好景気で、人件費、金利、物価が上昇傾向しています。住宅投資が急増して木材の価格が高騰しています。半導体不足でコンピューターだけでなく、自動車までもが生産調整を余儀なくされています。木材や半導体の価格高騰は、アメリカのみならず、日本にまで影響を及ぼしています。
ところが、中央銀行にあたるFRB(連邦準備理事会)とアメリカ政府は、当面は景気刺激策を続ける意向です。中央銀行は物価の上昇を抑えるのが主な役割で、市中の金利状況を見ながら金融政策を行います。しかしFRBは、今の物価上昇は昨年に生産が停滞したことによる一時的なものだと見ています。そして「黒人などのマイノリティの失業率が十分に低下していない」として金融引き締めは考えていないと表明しています。失業率については、失業手当が充実されたことや3月にも支給された給付金のために、人手不足にもかかわらず、すぐに就職しない人が多いのでは、との指摘もありますが、FRBは慎重です。
さらにアメリカ政府は、バイデン政権になって大型の公共投資に舵を切りました。3月にもコロナ対策で1人あたり1,400ドル(15万4,000円)の給付金を支給しました。そして、これから数年間にわたって、脱炭素化のための再生エネルギー投資、アメリカの生産力を高めるためのインフラ投資を実施していく予定です。一方、高所得者に対しては増税を表明していますが、こちらは予定通りにできるか不透明な状況です。
株式相場も状況は変わってきています。今年の初めまでは、コロナ禍で恩恵を受けるIT関連の銘柄が中心に上昇していました。しかし、今年に入ってからは、IT関連が多いナスダック市場(アメリカの新興市場)は足踏み状態で、大型株中心のダウ平均や株式市場全体を表すS&P500指数の方が上昇を続けています。FRBが金融引き締めに方針転換をしない限り、全面高の状況が続くでしょう。
一方日本の株式は、上昇基調こそ崩れていませんが、ここ3カ月ぐらいは足踏み状態です。コロナワクチン接種の遅れで、経済の回復は先進国の中でもどんじりです。しかし、アメリカや中国の経済が好調ですので、輸出は増えていくでしょう。輸出型の製造業は回復するものの、国内向けの商業やサービス業は苦境が続く、二極化が鮮明になるでしょう。株式相場でも、鉄鋼・非鉄、電気・精密、機械などの分野には期待が持てます。
アメリカの株式市場に心配がないかと言えば、けっしてそうではありません。物価と金利が上昇してきており、そろそろ金融引き締めが必要だとの見方も少なくありません。FRBが方針転換すれば、株式相場が大きく崩れることが予想されます。しかし、早めに金融引き締めの姿勢を打ち出して、株価はいったん下がった方が、その後の上昇につながるのではないかと思います。むしろ、今の金融緩和を頑なに続けていると、当面は上昇が続くものの、その後に大きな反動が来ないかが心配されます。
- FRBが金融緩和を続ける場合⇒今年いっぱいは、今の上昇が続いていくと思います。ただ、来年以降に大きな暴落が起きないか心配です。
- FRBが金融引き締めに舵を切る⇒いったんは、株価が下がり、調整します。しかし、落ち着いた後には再び上昇が期待できるのではないかと思います。
2021.6.12記

