たいしたことはない、長期投資の効果

「短期売買は損失の危険性が高いのですが、長期投資は安全です」はよく言われる話です。実際、私もこのことを言い続けてきました。しかし、最近、この説明に疑問を感じています。
ファイナンシャル・プランナーや金融機関が言う、「分散投資」と「長期投資」の説明は、損失回避の効果を強調しすぎているように思っています。今回は、「長期投資の効果」について考えます。

「長期投資」には「損失を小さくする効果がある」と言われています。これは、「長期投資」をすると、「平均収益率に近づく」という法則があるからです。

例1:1回3万円を払ってサイコロを振ります。出た目の金額だけのお金をもらえるとします。1が出れば1万円、6が出れば6万円をもらえます。3が損益分岐点となります。最初の頃は6が続いて大儲けとなったり、1が続いて大損となることもあります。しかし、1,000回も続けると、平均の3.5に限りなく近づきます。かなりの確率で500万円の利益となります。

長期投資を続けると、その人の運用の成果は平均収益率(リターン)に近づきます。ハイリスク・ハイリターンの商品であれば、最初に大損が続いても、長く持ってさえいれば、高い収益率を得ることができます。ブレが大きくても、長期投資さえしていれば、ほぼ確実に高い利益を得られるのです。
ただし、条件があります。「平均収益率が変わらなければ、」です。長期投資をしていると、確かに平均収益率に近づきますが、それはその時点での平均収益率に近づくのであり、投資判断をした(購入した)時点の平均収益率に近づくのではありません。高い平均収益率だと思って購入しても、結果的には〝低い平均収益率になっていた〟ということがあります。

例2:プロ野球の3割打者は、平均打率が3割だということです。連続3三振の日もあれば、固め打ちの日もありますが、シーズンを通して見ると、3割はヒットを打ちます(平均に近づく)。ある監督は、この打者を4番に抜擢しました。
その日、この打者はノーヒット。次の日もノーヒット。しかし、シーズンを通して見れば3割打つはずなので、監督は我慢して使い続けます。ところが、1ヵ月後のこの日もノーヒット。とうとう監督の堪忍袋の緒が切れます。
監督「打率が3割だから4番に起用したのに、いつになったら打ってくれるんだ」
選手「いや~、今の打率は1割ですから、こんなもんですよ」

そうなんです。人間のやることですから、常に同じではありません。4番に起用した時の打率は3割でしたが、これは過去のデータをもとにした分析です。長く続けていれば「平均」に近づきますが、「平均」そのものが変化しており、その変化した「平均」に近づくようになるのです。
これとまったく同じなのが、かつての日本株です。バブルの頃、日本の株式は「ハイリスク・ハイリターン」の典型でした。ブレが大きいものの、持ち続けれていれば、高い収益率となりました。
1990年にバブルは崩壊しました。リスクが大きいので最初は、たまたま悪い状況が続いているだけで、いずれは高い平均収益率に近づくものと思われていました。しかし、悪い状況は一時的なものにとどまらず、「平均収益率」が下がってしまったのです。
日本の株式の平均収益率は、昨年(2013年)などの一時期を除けば、ゼロまたはマイナスです。長期投資をすればするほど、投資の成果は「平均収益率」に近づき、損失が大きくなります。「長期投資は安全です」の言葉を信じて、長期に保有した人は損失が大きくなってしまいました。
昨年(2013年)、日本株式はかなり回復しましたが、「長期投資は安全」と判断できるには、まだしばらく時間がかかるでしょう。
いずれにしろ、「長期投資」をすると「平均収益率」に近づくのは確かですが、「損失を小さくする」とは限りません。

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