資産運用において、「損失を小さくする方法」として、代表的なのが「分散投資」と「長期投資」です。「1つの資産に集中しないで、資産を分散して運用しましょう。そうすれば損失の可能性が小さくなります」とは、よく言われるところです。
さらに「短期売買は損失の危険性が高いのですが、長期投資は安全です」もよく言われる話です。実際、私もこのことを言い続けてきました。しかし、最近、この説明に疑問を感じています。
ファイナンシャル・プランナーや金融機関が言う、「分散投資」と「長期投資」の説明は、損失回避の効果を強調しすぎているように思っています。反省の意味も含め、この2つの効果について考えます。
まず「分散投資」の効果です。資産運用の法則として「トレード・オフの法則」というものがあります。これは「ローリスクならローリターンであり、ハイリターンだとハイリスクとなる。ローリスクでハイリターンが理想だが、両方を同時に実現することは難しい」というものです。
ブレが小さく(ローリスク)、平均収益率が高い(ハイリターン)商品があれば、損失の心配がなく、高い成果が望めますが、そのような商品はめったにありません。もし、そのような商品があると言われたら、騙されていると思ってよいでしょう。
ところが、1つの商品に集中するのではなく、いくつもの商品に分散投資をすると、「リターンはそのままで、リスクを下げる効果がある」のです。これは「トレード・オフの法則」を打ち破る、画期的な効果です。多くの銘柄に分散投資をすれば、それだけ「分散投資の効果」が高まり、「ローリスク・ハイリターン」も可能となるかもしれません。
確かに「分散投資」には「リターンを下げずにリスクを下げる効果」があります。しかし、この効果はきわめて小さなものです。過去のデータを使って計算するのですが、2つの銘柄に分散することによる、リスクを下げる効果は「2×相関係数×Aの標準偏差×Bの標準偏差」です。計算してみると、本当に小さな数値になります。この程度であれば、あまり効果が実感できないと言えるでしょう。
株式の場合で言えば、100銘柄程度まで分散させれば、1つ1つの個別の動きの影響は小さくなり、「リスクが小さくなった」と実感できます。それでも、株式市場全体の動きの影響は消すことができず、ブレは小さなものではありません。
国内と海外の株式・債券に分散して投資する「バランス型ファンド」は、株式だけで運用するよりも、「リスクが小さくなる」と言われていますし、ブレが小さなグラフを目にすることもあるでしょう。しかし、リスクが小さくなっている原因の多くは、もともとリスクが小さい債券を組み入れたからで、「分散投資」による効果は微々たるものです。特に、国内外の株式や為替が連動して動く近年は、「分散投資」の効果が薄れています。その結果、「分散投資」では「損失を小さくする効果はあまりない」と考えた方がよいのではないでしょうか。

