景気と金融・財政政策

景気拡大や物価の上昇を調節するために、政府ができることは財政政策です。日本銀行などの中央銀行ができることは金融政策です。

 

    景気が悪い時 ⇒   財政政策(政府):財政支出を増やす

                                          金融政策(中央銀行):金利を引き下げる

  物価の上昇時 ⇒   財政政策(政府):財政支出を抑える

                                          金融政策(中央銀行):金利を引き上げる

 

2020年、2021年とコロナ禍で景気が悪化しましたので、各国の政府&中央銀行は「景気が悪い時」の政策を実行しました。政府は財政支出を増やし、中央銀行は金利を引き下げました。(引き下げるだけでは済まず、大量の資金を市場に投入しました。)アベノミクスはこの政策を強力に実施したものでした。

「景気が悪い時」と「物価の上昇時」の政策は正反対です。両方を同時に行うことはできません。景気が悪く、物価が上昇しているときもありますが、そのような時でも両方をいっぺんに解決することはできません。どこらかは捨てて、より厳しい方に取り組むしかありません。

アメリカはまだ景気が良い状況です。そして、物価が上昇してきました。6月の消費者物価上昇率は9.1%と、40年ぶりの高い伸びとなりました。中央銀行としては、景気拡大を犠牲にしても、物価上昇を食い止めることに集中するのは当然です。アメリカは昨年からすでに物価が上昇していましたが、中央銀行は判断を見誤りました。物価上昇が一時的なものだと思ってしまったのです。政府もバイデン政権となり、選挙公約である大型の公共投資を実施してしまいました。

今、急激な金利引き上げをすると、景気が後退するのではないかと心配されていますが、もうそれどころではありません。

ヨーロッパ各国も物価が上昇してきています。景気回復が進んだことに加えて、今年になってからはロシアのウクライナ侵攻が、深刻な影響をもたらしています。景気の方も心配なのですが、さらに物価が上昇しそうな状況ですので、こちらを優先しなければならないでしょう。

一方、日本はまだまだ低い水準です。昨年はマイナスが続いていました。これは携帯電話の値下げによる影響が大きいです。昨年暮れからプラスに転じて、直近では2%程度まで上昇しています。あちこちで〝値上げ〟が実感されるようになりました。ただ、まだ経済成長率が低く、日本銀行は金融緩和(金利の引き下げ)を継続する方針です。物価対策を求める声は日増しに大きくなっていますが、それでも政府・日銀は「物価上昇を抑えることは捨てても、景気回復を優先する」というわけです。

ドイツなどは、昨年の4月は2%程度だったのが、今では8%近くまで上昇しています。といいうことは、「上がりだしたら急激に上昇する」ということです。日本も1年後には今のドイツのようにならないとも限りません。日本では長年、デフレが続いていましたが、急にインフレが進行することもあり得るわけで、今後の動向と政府・日銀の判断が注目されます。

この状況を受けて、為替相場は円安・ドル高が進んでいます。各国が金融引き締めをする中、日銀が金融緩和を続けている間は、その傾向が続くかもしれません。しかし、ひとたび日銀がインフレを気にするようになると、急激に円高・ドル安に戻る可能性があります。

アメリカ、ヨーロッパはこれから、景気後退に陥るとの見方が強くなっています。物価上昇のスピードが速く消費が落ち込むことが予想されます。さらに中央銀行による金融引き締めで景気の足を引っ張ることになります。今年秋ごろから来年にかけては、景気が悪化し、株式相場も低迷することが考えられます。

それに対して日本は金融緩和の継続と円安・ドル高のメリットで景気も株価も底堅いのではないでしょうか。懸念事項は、海外の景気悪化や株式相場の下落に影響されることとです。さらに、新型コロナの感染状も心配です。日本の株式市場は、アメリカ、ヨーロッパほどには心配ありませんが、それでも楽観できる状況ではないでしょう。

2020.7.21記

質問はこちらから