金融危機と強制措置

新型コロナの感染は世界各地で広がっています。それとともに、世界各地で都市封鎖や外出禁止などが行われ、経済活動が停滞しています。株式市場でも大きな下落となりました。

もっとも株式市場のほうは、新型コロナの感染がヨーロッパやアメリカで広がった時点で急落し、その後は少し戻しています。最近では、感染者数の増加がひところに比べて抑えられてきたこともあり、そう遠くないうちに以前の水準を取り戻すとの見方も出てきています。しかし、これで感染の広がりが収束したのかは予断を許さない状況であり、株式市場もまだ安心はできません。

新型コロナの影響による、経済の落ち込み、株式市場の大幅下落は、およそ10年前のリーマン・ショックを思い出させます。「リーマン・ショックの再来」と見る向きも少なくありません。ただ、金融危機によってもたらされた不況であるリーマン・ショックと感染対策で起きた景気悪化である今回では、その性格はかなり違います。

リーマン・ショックは「金融危機」でした。金融において生じた問題が、実体経済(物の売買)に波及したのです。原因は、不動産購入への融資が、安易に、過剰に行われたことで、「バブル」が発生し、それが崩壊したことです。その経緯を見てみましょう。まず、根底に金融がかなり緩和(低金利)されていたことがありました。それによってお金が借りやすく、住宅の購入が増えました。不動産価格が上昇し、さらに住宅購入に拍車をかけます。「返済が滞っても、住宅を売却すれば返済できる」との認識が広がり、融資する側の姿勢も甘くなりました。しかし、安易な融資が増えたため、返済に行き詰まる物件の売却が相次ぎ、住宅価格の上昇が止まりました。すると、不動産価格は下落に転じ、返済不能となる住宅ローンが急増したのです。住宅ローンに出資するファンドなどが破綻し、資金の引き上げが殺到しました。資金の引き上げは不動産関連にとどまらず、あらゆる分野で資金不足となりました。その結果、投資や融資が凍結し、金融だけにとどまらず、実需(物の需要)が消滅するように亡くなってしまいました。金融で起きた問題が、実体経済にまで悪影響を及ぼしたのです。

一方、今回は新型コロナの感染が広がり、政府によって実需が強制的に消滅させられました。中国の武漢をはじめ、イタリアの北部地域、アメリカのニューヨークなどの都市が封鎖され、外出が禁止されました。各国で渡航制限・入国制限がなされ、営業制限も行われています。日本でも外出や営業の自粛が求められています。そのため、生産活動が制限され、消費はほとんどできない状況になっています。

今回の景気後退は、政府や自治体によって、強制的に経済活動が抑えられているのが特徴です。金融の面で問題が起きて実需が減少したのではなく、実需そのものがなくなり、実体経済が直接影響を受けています。もう1つの特徴は、新型コロナの感染が、全世界的に広がっており、先進国だけの現象ではなくなっていることです。

リーマン・ショックのような金融危機を契機とした景気後退と、今回のような政府による強制措置による景気後退では、どちらが影響は長引くでしょうか?

金融危機による場合は、投融資による損失がすべての投資家に心理的な恐怖を与えており、回復にはその恐怖心が癒えることが必要になります。そこから徐々に投融資に前向きな気持ちになるまでには、ある程度の時間を要します。

それに対し、政府によって強制的に経済活動が抑えられている今回の場合は、それが解除されれば比較的早く回復すると考えられます。新型コロナの感染が収束し、外出や生産、消費が再び自由にできるようになれば、早晩に景気は以前の力強さを取り戻すでしょう。ただ、問題は感染の収束がいつになるかです。収束後に早く回復するとはいっても、収束までに時間がかかるようだと、景気の低迷は長く続くことになります。

2020.4.27記

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