中国が抱える、新型コロナより恐ろしい爆弾

新型コロナの影響で、世界の株式相場が乱高下しています。NYダウは、2月24日の週には12.4%の下落と、リーマン・ショック以来の大幅下落となりましたが、3月2日には1294ポイント高(5.1%高)で1日の上げ幅では史上最大となりました。

新型コロナが中国で騒ぎとなって以来、1月下旬に少し下げましたが、それからしばらくの間は特に株式市場に影響はしませんでした。中国では春節の休暇を延ばし、武漢を封鎖するなど、経済に影響を及ぼすような状況となっていましたが、アメリカの株式市場は反応しませんでした。ところが、アメリカで新型コロナの感染者が出たことが公表されると、一挙に株式市場は反応しました。

日本はすでに経済的にも、感染者の面でも、すでに影響を受けていましたが、株式市場ではNY市場につられての動きとなっています。大きく下げたのは、2月25日からのことでした。

アメリカでも日本でも市場関係者は、まだ新型コロナの影響がどれほどのものになるか、読み切れていないようです。それだけに大きな下落と上昇を繰り返しているようです。アメリカでは、中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)が緊急利下げを実施しました。日本でも日銀が緊急に対応策を出すことが予想されます。これらによって、市場はいったん落ち着きを取り戻すかもしれません。しかし、そこで安心するのは禁物です。

新型コロナの鎮静化までどれぐらいの時間がかかるのかはっきりしない、ということもありますが、それ以上に心配な要素があるからです。今の中国は、経済的には、新型コロナよりも恐ろしい爆弾を抱えているのです。

中国の株式市場は、2007年から08年にかけてと、2015年に大きなバブルとその崩壊を経験しました。バブルによって株式市場が大きく上昇し、その後に暴落しました。その余韻が残っているのか、2015年以降は下がったままで横ばいの状況で推移しており、最近は株式市場の盛り上がりはありません。それだけに気がつきにくいのですが、最近の中国経済はバブルに近い状況になっています。

中国では、2009年の世界的金融危機の際に、中国政府は公共投資を大胆に拡大しました。それに伴い、金融機関による国営企業への融資が増加しました。国営企業は、暗黙の政府保証が付いていると考えられ、金融機関も安心して融資を増やすことができました。そして、それだけでなく民間企業への融資も増加しています。金融危機からの回復で経済成長が見込まれたからです。ただ、銀行融資が急拡大したことで政府は、融資に制限を設けるようになりました。そこで登場したのが「シャドーバンキング」です。

シャドーバンキングは、銀行融資という形を使わずに、企業が資金調達する手段で、「理財商品」「信託商品」「委託融資」などの手法が使われています。「理財商品」は、高利回りの債券ですが、銀行窓口で販売されていることもあり、企業や個人は銀行の信用で購入しています。多くが1年未満の短期の債券ですが、発行している企業は借り換えを前提として、長期の事業に充当しています。それだけに、出資している人が乗り換えを止めるようになると、企業が資金繰りに窮することが予想され、綱渡りの資金繰りと言えます。

近年、このシャドーバンキングによる融資が拡大しており、国有企業でも民間企業でも融資残高が増加しています。かつて、バブル崩壊となる前の日本やスペインに迫る水準にまで増加しています。中国の企業の債務が急増していることは、すでに2年ぐらい前から指摘されていました。それでも今のところは〝金融危機〟のようなことは起きていません。経済状況は、一定の状況になっても必ずしも同じ事が起きるわけではないからです。ただ、今回の新型コロナによる中国経済の影響は小さくないでしょう。今までは何とか問題が表面化していませんでしたが、これをきっかけに一挙に問題が噴出する可能性はあります。

地図で見るとわかりますが、中国において武漢は交通の要所です。それだけに日本企業も多く進出しており、人口1,000万人の大都市という以上に重要な都市です。そこが封鎖され、人も物も動きが止まってしまったのですから、中国経済での影響は小さくないでしょう。新型コロナが拡大した後の経済データはまだ発表されていませんが、大きな落ち込みとなるでしょう。(もっとも中国は経済統計データが信頼できない、という問題があります。)

すると、理財商品などでの借り換えがうまくいかず、多くの企業で資金繰りが悪化することが心配されます。株式市場は上昇していませんでしたが、融資の拡大で不動産などは上昇が続いており、急落することが考えられます。春節の延長や武漢の封鎖、それ自体も経済に影響を及ぼしますが、そのことをきっかけとして〝バブル崩壊〟が起きることが、経済的には新型コロナよりももっと大きな爆弾となります。

中国で〝バブル崩壊〟となると、その影響は世界経済に及びます。世界のGDPに占める中国のシェアは、15~6%になっています。中国は今では「世界最大の工場地帯」であり、「世界有数の消費地」です。

中国経済の影響がもっとも大きい国は、日本と韓国でしょう。輸出の面でも、輸入の面でも影響を受けますが、観光客という面でも大きな影響があります。すでに観光地では影響が出ています。次に影響を受けるのが、アジア各国とヨーロッパでしょう。アメリカは、すでに関税を引き上げていたこともあり、これらの地域に比べると影響は小さいでしょうNY株式市場が回復したとしても、日本では安心できません。日本経済の景気にまで影響を与えることが考えられます。

2020.3.4記

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