リスクとリターン

一般に「ハイリスク・ハイリターン」というと、商品の価格の変動が大きく、「大きく儲かることもあれば、大損をすることもある」という意味になります。その代表的なものが先物取引などでしょう。「先物取引はハイリスク・ハイリターンだから、素人が手を出してはいけない」とはよく言われることです。逆に、「ローリスク・ローリターン」は「大儲けはできないが、大損もない」という意味で使われます。日本国債などが該当します。

私は、これはこれで、間違った使い方だとは思いません。多くの人が認識を同じにして、会話を通して共通の理解ができているのなら、専門家がとやかく言う筋合いのものではありません。確かに先物取引を素人が手掛ければ大やけどをしますし、国債なら安心です。(最近は、そうとも言えなくなってしまいましたが。。。) この一般的な会話を分析すると、「ハイリターン」とは「大儲けできることもある」という意味で使われていますから、「最大の利益」(うまくいった時の大儲け)ととらえることができます。そして、「ハイリスク」は「大損」のことで、「最大の損失」と認識されています。

証券投資論という投資分析の世界では、「リスク」と「リターン」を、一般とは違った意味で使っています。もちろん、この世界での特殊な使い方ですので、こちらが正しく、一般的な使い方が間違っている、というわけではありません。ただ、この後の分析を理解するために、お付き合いください。

まず、「リスク」は「最大のぶれ幅」という意味で使われています。〝ブレ幅〟ですから、下へぶれる場合もあれば、上にぶれる場合もあります。下にぶれる場合は、大損となりますから、一般的な使い方とあまり違いはありません。証券投資論での使い方では、上にぶれる場合も含まれますので、「大儲け」も含まれます。ということは、「リスク」が大きいほど、大儲けができる可能性もある、ということになります。

では、「リターン」はどうでしょう。一般の会話では「最大の利益」でした。証券投資の世界では「平均」を表します。「いい時も悪い時も、ならした利益」ということです。「最大」ではなく「平均」なのです。この点について、実はかなりの認識間違いがあります。一般向けの書籍や雑誌の記事などでは、正確に書かれているものの方が少ないように思います。一般的な会話での使い方をしているのならともかく、専門用語として使っていながら間違っていることが多いので、やっかいです。

この使い方で言えば、「ハイリスク・ハイリターン」とは、「大儲けも大損もあるが、ならしてみれば、割と儲かっている」商品となります。(「ローリスク・ローリターン」については、一般的な会話とあまり違いはありません。)

では、先物取引は、証券投資論の言い方ではどのようになるでしょうか。「ハイリスク・ゼロリターン」となります。先物取引は、取引していた人が清算日にすべての取引を清算します。誰かの利益は誰かの損失であり、全員を合わせると、必ずプラマイゼロとなります。ですから、「平均の利益」は常にゼロとなります。ではなぜ取引をするのかと言えば、「リスク」が大きいために、大儲けできるからです。

パチンコは、お店の取り分がありますので、お客さんの「平均の利益」はマイナスです。それでもやる人が多いのは、「リターン」が大きいので、大儲けできるからです。うまくやれば、「いつも儲ける」ことも可能ですし、実際にそのような人も少なからずいます。(その分、マイナスの人もたくさんいます。)

短期で勝負をする人にとっては、「リターン」(平均)はどうでもよいのです。投資の世界では、「平均の利益」が悪くても、「リスク」(ぶれ幅)が大きければ十分に利益を上げることは可能で、自信のある人にとっては魅力的な投資対象となります。 一方、「ハイリスク・ハイリターン」の商品は、大損となることもありますが、「平均」が高いだけに、持ち続けてさえいれば、ある程度の高い利益が得られます。(「ある程度の高い利益」ですので、「大儲け」ではありません。)

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