アメリカ国債の格付けが、最高ランクのAAAからAA+に引き下げとなったというニュースが報じられ、日本の株式相場が大きく下落しました。なんで米国債の格下げで日本株が暴落? と不思議な気もします。報道では、「米国債の格下げ⇒債券が値下がりする=アメリカの長期金利が上昇⇒日本の長期金利も上昇する⇒日本の株式の下落」という解説をしています。「風が吹けば~」のような説明です。この半年で日本の株式相場はかなり上昇しましたので、いったん利益確定の売却が相次いだというのが真相でしょう。「そろそろ売っておきたい」という投資家が多くなると、何かのきっかけで(それは何でもよいのですが)、売りが相次ぐというのはよくあることです。
米国債の格下げのニュースですが、本家のアメリカの株式市場はそれほど大きくは下がっていません。2022年の初めから下落基調でしたが、同年10月から切り返して、上下を繰り返しながらも上昇しています。
次の章で、アメリカの金利の動きについて触れていますが、昨年のアメリカはインフレが酷くなり、中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)が金利の引き上げが相次いでいた時期です。
当初は「一時的なものだ」と見てあまり気にしていなかった物価の上昇が激しさを増し、FRBはあわてて金利の引き上げを連発する事態となりました。急激に金利が上昇すると、経済にダメージを与えかねません。激しいインフレも相まって、「アメリカは景気後退に陥る」という見方が強くなりました。
しかし、今のところアメリカ経済は好調が続いています。一方、物価の上昇は急速に収束しており、6月時点では前年同月比で3.0%の上昇となりました。まだ目標の2%よりは高いものの、一時期は9.1%(2022年6月)まで上昇したことを考えると、見事な〝火消し〟です。景気が後退するのを防ぎながら、インフレを抑えたとなると、FRB議長のパウエル氏の手腕は、後世まで称えられることでしょう。
私は、アメリカが景気後退に陥り、さらなる株価の下落があると見てみましたが、今のところは楽観的な見方の方が強く、米国債の格下げという悪材料にも、株式相場はビクともしません。アメリカの株式相場は、9月に暴落が起きることが少なくないので、9月までは様子を見たいと思いますが、そこでも上昇基調を維持していたら、「私の予想は間違っていました」と白旗を挙げます。FRB議長では、前任イエレン氏とその前のバーナンキ氏が経済学者でしたが、パウエル氏は弁護士資格を持ち、財務次官を務めた〝役人〟上がりの人です。それだけに、その手腕を不安視していましたが、「参りました」と言わなければならないかもしれません。
むしろ、心配なのは日本の株式相場かもしれません。日本の景気は回復基調にあり、株価も割高な水準ではないものの、このところは売りが続いています。この半年近くで20%程度も上昇し、ある程度の達成感が得られてしまったのかもしれません。日本の株式市場の売買の主力は海外の投資家です。ドル建てではそれほど上昇していないだけに、見切り売りも出ていると考えられます。ただ、経済状況自体は悪くはありませんので、大きく下がってしまう心配は少ないのではないでしょうか。
為替相場は、アメリカでまだ金利の引き上げが見込まれるものの、日本でも長期金利は上昇しており、日米の金利差に変化はなさそうです。当面は1ドル=140円前後で推移するのではないでしょうか。
2023.8.7記

