「株式相場は経済の鏡」とはよく言われます。ところが、最近は景気が悪いにも関わらず、株式市場は今まで以上のペースで上昇を続けています。何かおかしいですね。
IMF(国際通貨基金)によるGDP成長率の見通し
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2019年 |
2020年予測 |
2021年予測 |
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世界全体 |
2.8% |
▲4.4% |
5.2% |
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アメリカ |
2.2% |
▲4.3% |
3.1% |
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ユーロ圏 |
1.3% |
▲8.3% |
5.2% |
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日本 |
0.7% |
▲5.3% |
2.3% |
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中国 |
6.1% |
1.9% |
8.2% |
上の表は、IMF(国際通貨基金)が、10月に出したGDP(国内総生産)の見通しです。
2020年は、中国以外は軒並みマイナス成長です。来年(2020年)は、コロナが発生前である昨年(2019年)よりも、いずれも高い数値になっています。しかし先進国では今年の落ち込みを回復するまでに至らず、来年も「元に戻る」とは言えないような状況が予想されています。「株価は先を読む」とも言われるように、コロナが終息した後の回復を見込んでいるとしても、最近の上昇はピッチが速すぎます。どうも、最近の株式の動きは、経済の状況(あるいは見通し)を正しく映していないようです。
どうしてでしょうか?
その理由は「金余り」です。アメリカ、ヨーロッパ、日本の中央銀行が大量の資金供給を行い、その資金が株式市場に流れ込んでいるのです。
中央銀行は、主に国債を買うことでお金を払います。そうすることで市場に資金を供給します。中央銀行の資産が増加しているということは、それだけの資金が市中に入ってきているということです。最近は、国債だけでなく、社債や株式までも購入しています。
リーマンショックの際に最初にアメリカが大量に行い、世間を驚かせました。しかし、今から見るとそれが小さいぐらいに感じられます。だんだんと資産の規模が大きくなり、今年のFRBの増加額は今までの規模をはるかに上回るほどです。
中央銀行が資金を供給するのは、貸し渋りを防ぎ、投資や融資が円滑に行われるようにするためです。しかし、多くの資金は事業の投融資には回らずに、株式市場に流れ込んだようです。景気の先行きが不安な時に大規模な金融緩和を行うと、不景気の中で株価が上昇することがありますが、まさにそのパターンです。平成バブルの始めの頃の日本でも同じような状況でした。円高不況と言われる中、株価が上がり始めました。
つまり、中央銀行の金融緩和によって生み出されたマネーが、事業に回らずに、株式市場に入り、株価が上昇しているわけです。これは〝バブル〟と言ってよいのではないでしょうか。最近の株高は、世界全体でのバブルといえるかもしれません。
バブルならば、いずれ崩壊するから、今は投資をしない方がいい?
株式の上昇が、実体経済の動きを反映していないバブルであれば、いずれ弾けます。その時には暴落があるかもしれません。しかし、それまでの間は、大きな上昇が続いていきます。できればその波に乗って、バブルが始める前に波から降りたいものです。では、いつバブルが弾けるのか? それがわかれば、苦労はしないのですが、ヒントはありそうです。
バブルが生じたのが、
「中央銀行から供給された資金が株式市場に流れ込んだため」
であるなら、バブルが終わるのは、その逆と考えるのは自然でしょう。
「中央銀行が供給した資金を回収する時にバブルが終わる」
では、中央銀行が資金を回収するのは、「景気が良く、物価が上昇し始めた時」
になります。物価の上昇を抑えるのも、中央銀行の大切な役目です。
過去の例を見てみましょう。
平成バブルの日本の株式市場と公定歩合(日銀の金融政策)です。1986年は円高不況で景気が悪くなりました。日銀が金利を引き下げて資金供給をしたところ、株価が上昇を始めます。その後、株式の上昇が続くと実際の景気も良くなり、バブル景気となります。株価や土地だけでなく、物価も上がり始めると、日銀は金利を引き上げるようになりました。それが何度か続いたころに株価は下がり始めました。バブルの崩壊です。バブルによる株価の上昇は4年間続きました。
アメリカではインターネットバブルがありました。1996年の年末にグリーンスパンFRB議長が株式市場の状況を「根拠なき熱狂」と表現しました。「今の上昇はバブルだ」というわけです。IT企業の株価はその後も上昇を続け、1998年後半からは急上昇となりました。1999年からFRBは金利を引き上げており、何度目かの引き上げでITバブルが弾けました。IT企業が多く含まれているナスダック総合指数は3年で5倍になり、1年で5分の1になりました。
2つの例で見る限り、中央銀行による金利引き上げがポイントになりそうです。現在の中央銀行は、金利の引き下げだけでなく、債券や株式を購入しての資金供給も行っていますので、こちらの動きにも注意が必要です。
実は、FRBは2018年に資金供給量を減らしました。景気が良くなったので、資金を回収し始めたのです。そこにコロナの感染が起きました。コロナの感染がなくても、中央銀行の資金回収が続いて、株式の暴落は起きていたのかもしれません。コロナの問題が起きたために、中央銀行は再び大量の資金供給を行い、株式市場は息を吹き返しました。皮肉なことに、コロナの感染拡大は、株式市場にとって救世主になったのかもしれません。
次に中央銀行が資金の回収や金利の引き上げを手掛けるようになるのは、景気が回復し、物価の上昇が心配されるようになってからです。その時期は、早ければ来年かもしれませんし、3年後との見方もあります。間を取って2年後と考えると、あと2年間は株式市場の上昇が続くと考えられます。
2020.12.12記

