年末年始は、経済雑誌や金融機関などで、新年の予想が公表されます。それぞれ、経済アナリストやエコノミストといった、経済の専門家がコメントしています。専門家の意見であれば確度は高いだろう、と多くの人は思います。ところが、これがかなりあてになりません。「1年間の予想」にもかかわらず、1ヶ月も持たない(想定した範囲からはずれてしまう)ことが少なくありません。年末年始に発行される雑誌であれば、アンケートの締め切りは11月末ぐらいでしょうか。それから1カ月、2ヵ月のうちに予想外の動きをしてしまうのです。今年については、為替相場がそうなりました。年始の時点で、1ドル=129円まで円高ドル安が進みました。週刊ダイヤモンド新年合併特大号では、9人の専門家が為替相場の予想をしていましたが、1月に120円台に入ると予想した人はいませんでした。まあ、それだけ相場の予想は難しいということです。
今回、専門家の予想が軒並み外れたのは、12月20日に日本銀行が金融政策の変更をしたためです。日銀は毎月、金融政策決定会合という重要な会議を行っており、その後に日銀総裁が記者会見をしています。その際に、今まで長期金利は0.25%以上には上がらないように抑えていたが、それを0.5%程度までは上昇を許容すると発表したのです。それが、日本の金利上昇⇒アメリカと日本の金利差が縮小⇒円高ドル安という動きとなりました。
長期金利は基本的には、市場での国債の売買によって決まります。日本銀行は、自らが国債を購入し続けることで、金利が0.25%以上には上昇しないように抑えていました。それを、0.5%までは上昇を黙認することを公表したわけです。黒田総裁が退任する、2023年3月までは金利が上昇しないように抑えていくと、多くの市場関係者は見ていただけに、予想外の発表に、市場は驚きました。さっそく国内の金利は上昇し、為替相場は円高ドル安方向へと急伸しました。この程度ではまだ金利を引き上げたとは言えませんが、今後の金融政策変更に向けた〝地ならし〟を始めたと言えるでしょう。
その〝あてにならない〟専門家の予想ですが、株式相場についてはほとんどの人が「前半は軟調(下落)で、後半には上昇していく」と見ています。今年の安値は1~3月で、25,000~27,000円程度と見ている人が多いです。もっとも、1月4日の時点で26,661円となっていますから、初日にして「1年間の予想」が外れてしまった人も少なくありません。一方、高値を付けるのは12月という人が多く、3万円前後との予想が多くなっています。3万円と言えば、昨年の水準よりは上ですが、一昨年の高値と同じです。一昨年の水準まで戻るイメージでしょうか。
私も同じように「前半は軟調で、後半には上昇していく」と見ています。ただ、水準はもう少し下で、安値は3~6月頃に23,000円前後、高値は12月頃に28,000円前後と見ています。
問題はアメリカの経済状況とNY市場です。これについても専門家の間では、「前半は軟調で、後半には上昇していく」との見方が多くなっています。昨年、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備理事会)は、インフレを抑えるために政策金利を引き上げてきました。
金利が上昇している間は、株式相場は下落が続くのではないか。しかし、物価上昇もそろそろ峠を越え、今年前半には金利の引き上げを終了するだろう。すると先を見越して金利は下がりだし、株価は上昇に向かうだろう、という見方が一般的です。
私も「前半は軟調で、後半には上昇していく」との見方であるのは同じですが、もう少し厳しい状況になるのではないかと考えています。前半から中旬にかけて、かなり下がってから、後半には徐々に回復に向かうのではないかという見方です。金利の影響以上に景気の動向が影響するからです。アメリカが今年に景気後退(マイナス成長)に陥る確率は50%との見方が大半です。景気後退(マイナス成長)にまで落ち込まないにしても、景気拡大のペースが落ち込むことはほとんどの人が予想しています。であれば、金利上昇が止まっても株価は下落しますし、金利が下がりだしても景気の回復が見えてこないと株価の上昇は見込めないでしょう。リーマン・ショックほどの株価暴落や景気後退までは至らないとしても、それなりに深刻な状況は覚悟しておく必要があるでしょう。もちろん、日本の景気、株式相場も影響を受けることになるでしょう。ただ、後半以降には下げ止まり、徐々に回復に向かっていくのではないかと見ています。そうなると、そこから始まる長い上昇基調のスタートになると考えられます。
2023.1.18記

