良くない方が良くなる

「オミクロン株」のことが連日報道されています。感染力が強いということで、懸念はされますが、まだ一部地域以外からはほとんど広がっていません。それよりも、デルタ株など今までのものが世界各国で猛威を振るっています。もう新型コロナ慣れをしてしまったのか、あまり大きく報道されませんが、国によっては1日の感染者数がかつてないほど増えています。ドイツでは過去最高の状況ですし、ロシアも11月に過去最大となりました。イギリスは7月に増えて以来、高い水準が続いています。アメリカも一時期よりは少ないとはいえ、毎日10万人もの新規感染者が出ています。一方、少し前に急増したインド、ブラジル、そして日本ではすっかり下火になっています。インドやブラジルはワクチンの接種率が高いわけではなく、何がこの差をもたらしているのか、わかりません。

毎日10万人もの新規感染者が出ているアメリカで、たった1人のオミクロン株の感染者が見つかっただけで、NYダウが暴落しました。もちろん、オミクロン株が直ちに景気に影響を与えるわけではないので、一時的な心理的影響、あるいは相場の変動を望むヘッジファンドの仕業と思われます。

今、株式での資産運用をするにあたって注意しなければならないのは、「オミクロン株の拡大によって景気が冷え込むこと」ではなく、「物価の上昇スピードが速く、金融当局が金融引き締めを行うこと」です。つまり、〝景気が良すぎる〟ことの方が心配なのです。オミクロン株騒動で、少しぐらい自粛する人が増えたりした方が、ほどほどのペースになり、景気の拡大は長く続くでしょう。株式相場も今の上昇相場が息長く続くようになります。

アメリカのFRB(連邦準備理事会)の金融引き締めの手順とその影響は、先月のレポートでご紹介したとおりです。繰り返しになりますが、その手順を確認し、時期を考えてみましょう。まずは、金融引き締めの手順です。2014年から2020年のコロナショックまでの間にFRBがやった手順です。

  1. 資金供給を大量に行っていたのを、少しずつ止めていく(「テーパリング」と言われます。)
  2. 利上げをする(中央銀行が金利を上げると、金融が引き締まります。)
  3. FRBが保有する金融資産を売却し、資金の回収を図る

リーマン・ショックによる世界同時不況から立ち直り、2014年に①を始めました。そして2年後の2016年に②を始め、さらに2年後の2018年になって③を手掛けるようになりました。かなりゆっくりと慎重に引締めを行いまいました。その間、景気は拡大していましたので、①と②の間は株価の上昇が続いていました。③に取り掛かった頃から株式相場は乱高下をするようになり、ちょうどその頃にコロナによる暴落が起きたのです。

さて、今回はどうでしょうか。今ちょうど①を始めたところです。②を手掛けるのは来年6月頃、③に入るのはさらにその翌年、との見方が多くなっています。前回よりはペースが早いようです。ただ、②の利上げを少しずつ慎重に行えば、その間はまだ株式市場の上昇は続き、株式相場が下がりだすのは③に入ってからとなります。そうだとすると株式市場は、来年いっぱいは上昇が続き、2024年になったら〝要注意〟になると考えられます。来年いっぱいは、金利が引き上げられたとしても、景気の拡大によって株価の上昇が続くと思います。ただし、景気の過熱し、物価の上昇ペースが強まれば、②、③に入る時期が早まる可能性はあります。

一方、日本の方は、コロナの感染が抑えられているにも関わらず、景気回復の動きは鈍い状況が続いています。その中で、物価が上昇し始めています。海外で原油や資源が上昇している上に、為替相場が円安ドル高へと推移しているからです。かつては、円安ドル高は日本経済にプラスに働きました。日本からの輸出が多かったからです。ところが、生産拠点を海外に移してしまった今では、むしろ輸入価格の上昇というデメリットの方が大きくなっています。日本の景気回復、そして株式相場の上昇はペースが遅くなってしまうでしょう。

資産運用は、当面の間は(来年いっぱいぐらい?)、アメリカを中心とした海外の株式に投資するのが効率的でしょう。

2021.12.19記

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