金融引き締めが始まる次期

今、世界経済は2つの問題に直面しています。1つは新型コロナの感染状況とそれによる景気低迷からの回復です。もう1つは物価上昇です。

新型コロナの感染者数は、日本では8月に大きく増加したものの、その後は急速に減少し、最近はかなり抑えられています。海外を見ると、状況は国によってまちまちです。今までになく増加している国もあれば、減少している国もあります。ヨーロッパでは、フランスはかなり減少しましたが、お隣のドイツ、イギリスでは感染者数が増えており、今までの最大に迫る勢いです。アメリカは一時期よりは減っていますが、それでも1日に10万人の感染者が出ています。アメリカ、ヨーロッパでは早くからワクチン接種が始まり、それとともに経済活動が活発になり、景気がかなり良い状況になっています。しかし、このところの感染者数の状況を見ると、再び規制を強めなければならないかもしれません。すると、景気の拡大が鈍ることが心配されますが、今は景気の過熱が心配されているぐらいですので、かえって拡大ペースが抑えられ、景気拡大が長く続くことが期待されます。

むしろ心配なのは物価上昇の方です。アメリカでは、景気が回復へと向かっているところに、政府が景気対策や環境関連投資を拡大し、物価上昇が目立つようになってきました。さらに、原油価格の上昇も加わり、物価上昇が深刻な事態になるのではないかと懸念され始めています。当初は、一時的な物不足と見られていましたが、回復の気配がなく、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)も、物価上昇を抑えるために金融引き締めを検討するようになってきました。

これまで世界的に株式の上昇が続いてきた最大の要因は、各国の中央銀行、特にアメリカのそれが、金融緩和を進め、市場に大量な資金を投入していたからです。大量にあふれた資金が株式市場に流れ込み、株価の上昇が続いていたわけです。アメリカのFRBが資金の投入を止めると、株式市場に流れ込む資金も止まり、暴落が起きるのではないかと心配する見方もあります。

リーマンショックの後もFRBは大量の金融緩和を行いました。そして、その後に景気が回復してくると、次のような手順で金融引き締めを進めていました。

 

  1. 資金供給を大量に行っていたのを、少しずつ止めていく
  2. 利上げをする(中央銀行が金利を上げると、金融が引き締まります。)
  3. FRBが保有する金融資産を売却し、資金の回収を図る

 

この3段階で、ゆっくりと金融引き締めを進めていました。③を進めていたところに、新型コロナの感染拡大が起きました。

いずれも、市場から資金を引き揚げる政策ですので、株式市場にはマイナスです。しかし、景気自体は回復しているわけですから、必ずしも株価が下落するというわけではありません。うまくやれば、市場に与える心理的なショックを抑え、株価の下落を回避することができます。

2014年から2020年始めまでの金融引き締めと株価の状況を見ると、

①の段階では、株価の上昇が続いていました。

②を始めた時には、一時的に株価が下落することもありましたが、②の前半では株価が上昇しました。

②の後半+③を始めた頃に、株価が大きく下落するなど、乱高下がありました。

つまり、中央銀行が金融引き締めに転じても、始めのうちは(一時的に株価が下がったとしても)それほど心配ありません。むしろまだ上昇が期待できます。景気が回復し、企業業績が改善しているからです。しかし、金融引き締めの後半になると、株価は不安定になります。金利が高くなっている上に、景気の見通しにも不安が出てくるからです。もちろん、これは2014年から2020年にかけての状況ですので、今後も同じになるとは限りません。しかし、参考にはなるでしょう。

今、FRBは資金供給の量を抑えていくと公表しています。ちょうど①を始めるところです。

市場の予想では、来年の半ばぐらいに、②そして③へ移っていくのではないかと見られています。(リーマンショックの後よりはペースが早いです。)

そう考えると、まだしばらくの間は(来年いっぱい?)、株式市場は上昇傾向が続くのではないかと思われます。物価上昇のペースが早くなり、FRBが急いで金融引き締めを行うと、ショックで株式市場が暴落することもありえます。ただ、今のところは、ショックが起きないように、FRBは慎重に、慎重に金融引き締めを行おうとしています。

日本は、アメリカよりも景気回復が遅れていますので、まだ金融引き締めを考える段階にもなっていません。ただ、株式相場について言えば、アメリカの株式相場の影響を強く受けますので、アメリカの中央銀行の動向に左右されます。

2021.11.6記

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