国民年金や厚生年金の保険料を払っていた人は65歳になると、「老齢基礎年金」が受け取れます。また、一定の障害を負った場合は「障害基礎年金」が、一家の働き手を失った遺族は「遺族基礎年金」がもらえます。「老齢基礎年金」をどれくらいもらえるかは、年金の保険料を払っていた期間によって決まります。
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間もれなく払っていた場合に満額となり、この金額は年度ごとに変わります。2023年度(令和5年4月から令和6年3月まで)は満額の場合で、次のようになります。
65‐67歳の人:年額795,000円(月額66,250円)※前年比+17,200円(同月額+1,434円)
68歳以上の人:年額792,600円(月額66,050円)※前年比+14,800円(同月額+1,234円)
昨年度までとは変わり、67歳までと、68歳以上で金額が異なります。年金額を変更する基準が違うのです。
- 「現役世代の名目手取り賃金上昇率(3年間平均)」>「物価上昇率(前年)」の場合
- 67歳までの年金額⇒「現役世代の名目手取り賃金変動率(3年間平均)」に基づいて変更
- 68歳以降の年金額⇒物価変動率に基づいて変更
- 「現役世代の名目手取り賃金上昇率(3年間平均)」<「物価上昇率(前年)」の場合
- 年齢にかかわらず、「現役世代の名目手取り賃金上昇率(3年間平均)」に合わせて変更
- その上で、「公的年金の被保険者数(保険料を払う人数)の変化」と「平均寿命の伸び」を考慮して、上昇幅を少し抑える。(マクロ経済スライド)
- 年金額が前年に比べてプラスの場合は、調整分の減額をする。
- 年金額が前年に比べてマイナスにならない範囲内で減額する。それ以上の減額は先送りする。
- 後に、年金額の変更がプラスとなった年に、先送りした分の減額をする。
今年度は、
- 「現役世代の名目手取り賃金上昇率(3年間平均)」は2.8%
- 「物価上昇率(前年)」は2.5%
でしたので、
現役世代の名目手取り賃金上昇率(3年間平均)2.8% > 物価上昇率(前年)2.5%
となり、67歳以下と68歳以上で別々の金額になります。
マクロ経済スライドによる調整(上昇を抑える)は、
- 以前から先送りされていた分が3%
- 今年新たに調整される分が3%
となり、合計の0.6%分が抑えられるようになります。よって、今年度の年金額の変更は、
- 67歳まで:8%-0.6%=前年度に比べて2.2%の上昇
- 68歳から:2%-0.6%=前年度に比べて1.9%の上昇
となります。ただ、前年度の金額をこの割合でそのまま変更するわけではありません。基準となる金額780,900円にかける「改定率」の数字をこの割合で変更します。
- 67歳まで:前年の改定率996を2.2%上昇⇒1.018⇒780,900円×1.018=795,000円
- 68歳から:前年の改定率996を1.9%上昇⇒1.015⇒780,900円×1.015=792,600円
- 年金額は100円未満四捨五入(途中の計算過程でも四捨五入あり)
今回は、賃金と物価が上昇したため、年金額は上昇しました。ここ数年、マクロ経済スライドによる抑制が〝先送り〟されていましたが、今年度ですべて解消できました。その代わり、物価上昇率が2.5%なのに対して、2.2%または1.9%の上昇ですので、実質的には減っているということになります。
そもそも68歳で基準を分けたのは、「退職したばかりの人(67歳まで)は年金を賃金の延長と考えるだろう。一方、すでに年金生活が長い人(68歳以降)は、年金で生活しているので、物価に応じて変わらないと困るだろう」という考え方のようです。それでも今までは金額が同じでしたが、これからは「68歳になると年金額が変わる」という事態になります。
障害基礎年金、遺族基礎年金の金額も、老齢基礎年金と同じように、67歳までと68歳以降で違うようになります。「退職したばかり」ということはないのですが、それでも68歳になると年金額が変わるようになります。年金額を記載しておきます。
- 障害基礎年金(1級):67歳まで993,750円、68歳から990,750円
- 障害基礎年金(2級):67歳まで795,000円、68歳から792,600円
- 遺族基礎年金:67歳まで795,000円、68歳から792,600円
ほかにも、いろいろな加算で、68歳で金額が違うようになります。物価よりも賃金のほうが大きく上昇すると、このような事態になります。人手不足が続いている状況では、今後ますます差が大きくなるかもしれません。すると、「68歳になったら、年金が減ってしまう」という、新たな問題が起きそうで心配です。
2023.3.31記

