少子高齢化が言われて久しいのですが、日本の将来を案ずるというよりも、「自分の親に介護が必要になったらどうしよう?」「自分の老後は誰が面倒を見てくれるのか?」と、〝わがこと〟として不安を抱える人が増えてきました。身のまわりでも「親の介護に直面している」という人の話を聞くことが多くなったのではないでしょうか。コロナ禍で高齢者の外出が少なくなっているはずなのですが、それでも街で高齢者を見かけない日はありません。足元がおぼつかないご老人を見かけると、自分の親の姿を重ね合わせてしまいます。
実際、統計データで見ても、高齢者の数は増えていますし、それ以上に介護が必要な高齢者の数は増えています。2000年に2,242万人だった高齢者(65歳以上)は、2019年には3,555万人と、19年で約1.6倍に増えています。その内、「介護や支援が必要な高齢者」は、2000年の256万人から2019年の669万人と、約2.6倍にもなっています。つまり、高齢者の増加以上に、「介護や支援が必要な高齢者」が増えている、というわけです。
ただし、これには理由があります。ここで「介護や支援が必要な高齢者」として挙げた人数は、国が定めた公的介護保険でサービスを受ける対象となる「要介護」または「要支援」の認定者の人数です。公的介護保険がスタートしたのは2000年です。制度がスタートした当時は、まだ積極的に認定を受ける人が多くなく、制度が知られるようになるにつれ、認定を受ける人が増えた、という経緯があります。公的介護保険のサービスが魅力的で、利用しようという人が増えたのです。そのために、「介護や支援が必要な高齢者」が増えたわけですが、ここに介護の負担を軽くするポイントがあると言えそうです。
この公的介護保険をうまく制度を活用することで、少しでも家族の負担を少なくしたいものです。高齢者の介護のために重要なポイントとなる公的介護保険について見ていきましょう。なお、民間の生命保険会社でも「介護保険」という商品を販売していますが、「介護保険」と言えば、国が定めた制度である公的介護保険を指すのが一般的です。ここでも特に断りがない限り、「介護保険」と呼ぶことにします。
介護保険は、40歳以上のすべての人が加入する社会保障制度の1つです。国が定めた制度ですので、基本は全国一律ですが、運営は地方自治体が当たっています。40歳から64歳までは健康保険や国民健康保険と一緒に保険料が支払われていますが、65歳からは別途介護保険の保険料を支払うようになっています。40歳から加入していますが、実際には65歳からの制度と考えた方がよいでしょう。
65歳になったら、すぐにサービスを利用できるというわけではなく、介護や支援が必要な状態になったと認定されたらサービスを利用できるようになります。65歳から74歳までの人で、認定されているのは11%程度ですが、75歳以降になると約89%の人が認定されています。70代後半から80代にかけて、介護が必要な状態になる人が多いということです。
「介護や支援が必要」と認定されると、介護保険サービスが割安な利用料で受けられます。利用料は、本来の料金の1割から3割で、その割合は本人の所得によって決まりますが、多くの人は1割負担となっています。サービスの内容や限度額は、介護が必要な程度に応じて決まります。介護の必要な程度が重いほど、利用枠が大きくなります。
サービスの内容は、ヘルパーさんが自宅に来て食事や排せつの介助をしてくれるものから、デイサービスという高齢者向けの施設で1日を過ごすサービス、短期の宿泊をするサービスなど、いろいろとあります。利用枠の範囲内で、これらを選んで利用することになります。
老人ホームへ入居する場合も、介護保険サービスを利用します。特別養護老人ホーム、有料老人ホームで介護のサービスを受ける場合にも、介護保険から費用が出ているのです。
〝介護〟というと、家族が大変な負担を抱えるイメージがありますが、この介護保険は家族の介護負担を減らすために設けられた制度です。この制度をうまく活用することで、家族の負担と経済的な負担を減らすことができます。それだけに、介護保険についてよく知っておくことが介護に直面している人はもちろん、将来が心配な方にとっても大切です。次回は、介護保険のサービスについて詳しく見ていきます。
2021.10.26記

