①基礎年金(国民年金)
国民年金や厚生年金の保険料を払っていた人は65歳になると、「老齢基礎年金」が受け取れます。また、一定の障害を負った場合は「障害基礎年金」が、一家の働き手を失った遺族は「遺族基礎年金」がもらえます。「老齢基礎年金」をどれくらいもらえるかは、年金の保険料を払っていた期間によって決まります。20歳から60歳までの40年間もれなく払っていた場合に満額となり、この金額は年度ごとに変わります。
2020年度(令和2年4月から令和3年3月まで)は満額の場合で、年額781,700円 (月額65,円)です。昨年度に比べて、年額で1,600円の上昇です。わずかの上昇ですが、ここ10年のうちでは、5年前の2015年に次いで、2番目の上昇となっています。
年金額は、物価や現役世代の賃金の変動に応じて変わるようになっています。
- 67歳までの人は、現役世代の名目手取り賃金変動率に基づいて変更します。
- 68歳以降の人は、物価変動率に基づいて変更されます。
- その上で、将来の年金財政の悪化を考慮して、上記の上昇率よりも少し抑えるようになっています。これを「マクロ経済スライド」といいます。
- この「マクロ経済スライド」による調整ですが、年金額がマイナスとなる年は〝先送り〟をして、その分をプラスとなる年に調整するようにします。
このように、67歳までと68歳以降で、算出方法が異なりますが、両者の差が大きくならないように、制約が設定されています。
名目手取り賃金上昇率と物価上昇率が、
- どちらもプラスで物価変動率の方が大きい⇒両者とも名目手取り賃金変動率を基に計算する
- どちらもマイナスで、物価変動率の方が大きい(マイナスの値が小さい)⇒両者とも物価変動率を基に計算する
- 物価変動率がプラスで、名目手取り賃金変動率がマイナスの場合 ⇒ 両者とも変動なし
今回扱う数値では、物価変動率が0.5%、名目手取り賃金変動率が0.3%となっています。①の制約が適用されることになり、「両者とも名目手取り賃金変動率」の0.3%が適用されます。
年金額の変動がプラスとなっていますので、「マクロ経済スライド」による調整(上昇率よりも少し抑える)が行われます。調整幅は‐0.1%です。昨年の改定の際に、過去の先送り分を含めて調整しましたので、今年はこの分だけ上昇を抑えるようになります。その結果、上昇率は0.2%になりました。
780,100円(昨年度)×1.002=781,660.2円 ⇒ 781,700円(100円未満四捨五入)
<近年の年金額の変遷>
| 期間 | 月額 | 年額 | 変動率 |
| 2012年度(H24.4-25.3) | 65,541円 | 786,500円 | ‐0.3% |
| 2013年度前半(H25.4-25.9) | 65,541円 | 786,500円 | 0.0% |
| 2013年度後半(H25.10-26.3) | 64,875円 | 778,500円 | ‐1.0%(特例水準解消) |
| 2014年度(H26.4-27.3) | 64,400円 | 772,800円 | 0.3‐1.0=‐0.7%(同上) |
| 2015年度(H27.4-28.3) | 65,008円 | 780,100円 | +0.9% |
| 2016年度(H28.4-29.3) | 65,008円 | 780,100円 | 制約に該当し、変更なし |
| 2017年度(H29.4-30.3) | 64,941円 | 779,300円 | ‐0.1% |
| 2018年度(H30.4-31.3) | 64,941円 | 779,300円 | ±0.0%(下げを先送り) |
| 2019年度(H31.4-R2.3) | 65,008円 | 780,100円 | +0.1% |
| 2020年度(R2.4-R3.3) | 65,141円 | 781,700円 | +0.2% |
②老齢厚生年金
会社員などは、厚生年金の保険料を払い、老後には「老齢厚生年金」が、老齢基礎年金に上乗せされて支給されます。また、障害となった場合には「障害厚生年金」が、一家の働き手が亡くなった場合は「遺族厚生年金」が支給されます。
厚生年金の保険料は、給料の一定割合を払いますので、給料が多い人が多くの保険料を払っています。そのため、老後に受け取る年金の金額は、現役時代に払った保険料によって異なります。人によって、まったく違うわけですが、前年からの比較で言えば、国民年金とまったく同じ計算で変化します。
よって、2020年度の老齢厚生年金の金額は、昨年度に比べて、0.2%の上昇となります。
下記の表は、厚生労働省が示すモデルケースに基づいて計算したものです。会社員であった人は、基本的には上記の基礎年金(国民年金)と下記の厚生年金の合計額を受け取ります。今年度は、あわせて年額186万6,988円(月額15万5,582円)となります。
老齢厚生年金の標準的な金額
| 月額 | 年額 | |
| 2019年度(H31.4-R2.3) | 90,244円 | 108万2,992円 |
| 2020年度(R2.4-R3.3) | 90,441円 | 108万5,288円 |
※厚労省の示すモデルケース(40年間勤務の男性)より算出。
2020.5.25記

