この3週間、株式相場は下落していましたが、10日に急反発しています。日経平均株価は6月中旬から弱含み(少し下げ傾向)で、TOPIXは9月中旬から下落しました。先月ご紹介したように、上場企業の企業業績から見ると、日経平均株価で32,000円前後が、おおむね妥当な水準です。そう考えると、このあたりで足踏みしているのは、企業業績を踏まえた適切な動きとなっています。来期(2025年度)を見据えた動きになるのは、年明け以降になりますので、しばらくはこの水準あたりで、上下を繰り返す動きが続いてもおかしくはないと考えられます。
日銀短観(全国企業短期経済観測調査)は、年4回、日本銀行が全国1万社の企業に実施しているアンケート調査です。プラスの数字が大きいほど景気が良いと見られます。しばしば報道される「大企業製造業」だけでなく、非製造業は中小企業の調査もありますが、おおむね改善傾向です。大企業製造業を見ると、2021年に高くなりましたが、これはコロナ禍の反動です。その後、徐々に下がってきましたが、前回の6月から上昇に向かっています。ちなみに、非製造業は大企業、中長企業ともにその前から上昇が続いており、中小企業製造業だけは横ばいが続いています。日本企業は「景気回復」の途上ではなく、すでに「景気が良い」状態にあると言えるでしょう。
にもかかわらず、日本銀行は当面の間、低金利の維持を続ける方針です。日本銀行には、「景気の回復」と「物価の上昇を防ぐ」という2つの役目がありますが、これは相反する目的です。「景気の回復」を優先するのなら低金利を継続、「物価の上昇を防ぐ」のであれば、金利の引き上げが必要です。今のところ日本銀行は「景気の回復」を優先する意向のようです。最近は「賃金の引き上げ」を目指していると公言していますが、日本銀行は企業に賃金を引き上げさせることはできません。できることといえば、賃金が上がるまで、景気を過熱させることだけです。一般に賃金の上昇は景気上昇の後半に現れますので、それまでの間(物価には目をつぶって)景気の過熱を促すつもりのようです。
実は、これには前例があります。2021年、コロナ禍からの回復で景気が回復に向かい、物価が上昇していました。しかしアメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備理事会)は、なかなか金利を引き上げず、景気の拡大を優先していました。その結果、2022年には物価上昇率が9%にもなり、あわてて金利を引き上げる事態になりました。市場では「金利の引き上げが遅すぎた。あわてて金利を引き上げていくと、景気が悪化してしまう」という見方が強まりました。2023年にはアメリカ経済は景気後退に陥るとの見方も広がりました。
実際はどうなったでしょうか。確かにFRBの金利引き上げは後手になった面はありましたが、相次ぐ引き上げで物価の上昇は抑えられ、物価上昇率は3%程度まで落ち着きました。それでも景気は落ち込まず、好景気が続いています。物価上昇を抑えながら、好景気の継続に成功しているのです。日本銀行の植田総裁もこれを狙っているように思います。
私は、2023年にアメリカ経済が景気後退に陥ると見ていましたので、アメリカの株式相場が下落すると見ていました。日本経済は回復すると見ていましたが、アメリカの株式相場の影響で下落する場面があると予想していました。しかし、アメリカ経済は見事に景気後退を回避し、株価の下落を避けることができました。
アメリカの株式相場の下落さえなければ、日本経済の環境は良好です。日本の株式市場は景気の回復とともに上昇することができました。
2023.10.10記

