下記の文章は、日本の円高不況からバブル景気になる頃の株式相場と景気の関係を書いたものです。少し長いのですが、ご覧ください。
昭和60年(1985年)のプラザ合意を契機として、為替相場が円高ドル安に進み、いわゆる円高不況に突入しました。日銀は金利を下げ続け、行き場のない資金は株式相場へと入っていったのです。金利が低下して金利収入が望めないものの、景況感が悪く設備投資もできないため、多くの企業が資金を株式で運用しました。また個人も同様に、金利の低下した預貯金から株式、株式投資信託へと資金をシフトしたのです。 景気が悪く、企業業績も低迷している中で、株式相場は上昇を続けていたのです。金融相場の典型といってよいでしょう。
昭和60年以降は景気が悪い中で株式相場だけが上昇していきました。やがて、株式相場は景況感までも変えていくようになりました。株式、あるいは不動産といった資産価格の値上がりは、それを保有している企業や個人に資金的な余裕を与えました。例えそれがすぐに換金できない取引先の株や自宅であったとしても、資産価格の上昇は投資意 欲や購買意欲をかきたてました。企業は土地を担保に多額の資金を安く調達することができるようになりました。また個人も、所得が増えていなくても懐が暖かいような気がして、消費が抑えられなくなりました。また、不動産価格の上昇は住宅投資を促しました。
企業の設備投資、そして個人の消費が拡大していき、景気は回復していきました。まさに株価や不動産価格の上昇が好景気をもたらしたのです。これを「資産効果」といいます。もともと金利は低い状態が続いていましたので、需要拡大の期待さえ持てれば、企業は積極的に設備投資をしました。株式相場の環境が良かったので、エクイティファイナンス(新株発行による資金調達)で資金を調達しやすいという状況でもありました。個人においては、まず資産保有者が恩恵を受けたので、高額品が飛ぶように売れました。そして、景気回復による企業業績の改善で所得が増え、資産保有者のみならず広い範囲にわたって消費が増える好景気になりました。企業の業績が良くなり、それに伴って株式相場はさらに上昇していきました。つまり業績相場となったのです。しかし、株式相場の上昇は勢いを増し、業績が上がる以上に上昇していったのです。
(ここまで、私が執筆した株式投資のテキストから引用)
いかがでしょうか。今のアメリカの株式相場と似ている感じがしませんか?
アメリカは、日本以上に新型コロナの影響が大きく、今年4-6月期のGDP成長率は年率換算で▲32.9%と1947年の統計開始以来最悪の状況となっています。にもかかわらず株価の回復は早く、4月からは急回復しています。まだまだ感染者数は多く、コロナ以降を見すえたとしても上昇のペースが早すぎます。これはアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)が徹底して資金供給を続けているためです。大量の資金が供給されたけれども、外出もままならない状況では、設備投資ができません。そのため、資金が株式市場に流入して、「景気が悪い中での株価上昇」となっています。このまま、業績が回復しなければ、株価の上昇はいつまでも続きません。しかし、株価の上昇が続いているうちに、景気が回復してくることがあります。日本の昭和60年代、バブルの始まりの頃がまさにそのような状況でした。アメリカの株式市場の活況が景気の回復を促す可能性があります。そうなると、「景気の拡大を伴った株価上昇」となり、上昇が続くことになります。
アメリカの株式市場が上昇しているとはいっても、あらゆる株が上がっているわけではありません。エネルギー関連、製造業、サービス業の株価は大きく下落したままです。IT関連株の上昇がNYダウやナスダック指数といった株式指標を引っ張っています。これらの企業は、リモート環境やオンラインビジネスの拡大で業績も好調です。これらの株式が株式相場を引っ張り、それによって景気が回復に向かうようであれば、アメリカの株式の上昇は当分続くと思います。すると、日本の株式相場もアメリカを追随して、上昇が続くことになるでしょう。
アメリカの株式相場が下がる要因としては、①FRBが金融緩和を止める、②IT関連企業の業績が悪くなる、という点が挙げられます。今のところは、両方とも心配ありません。
2020.9.20記

