ゴールデンウィークのさなか、アメリカで今年3つ目の銀行破綻が起きました。ファースト・リパブリック・バンクという銀行で、3月に破綻したシリコンバレーバンク、シグネチャーバンクを上回る、史上2番目の規模の経営破綻になるとのことです。大手金融機関のJPモルガン・チェースが買収するということで、とりあえずは平穏を保っていますが、金融機関に対する疑心暗鬼は続きそうです。
3月の銀行破綻で生じた、銀行に対する疑心暗鬼が、今度の経営破綻をもたらしたようです。「次はここだ」とファースト・リパブリック・バンクが噂さされていたようです。銀行の店舗の前に行列ができる、取り付け騒ぎは起きていませんが、預金の引き出しが大量に続いていました。救済のために大手金融機関が300億ドルもの資金をこの銀行に預金をしましたが、それでも40%もの預金減少となったとのことです。インターネットで簡単に資金移動ができる時代ですので、預金の流出はかつてよりも早く大きくなっているのでしょう。3月の銀行破綻がなければ、まだなんとかやっていけたのだと思いますが、預金引き出しが銀行の息の根を止めてしまいました。
かつて、日本で北海道拓殖銀行や山一証券が経営破綻になった時も同じような状況でした。不安が不安を呼んで、預金流出や株価下落が加速し、何事もなければ存続できたはずの金融機関が経営破綻に至ってしまうのです。ちなみに、このように通常であれば問題が起きなかったにもかかわらず、お互いが疑心暗鬼になって行動し、その結果問題が起きてしまう現象を「囚人のジレンマ」といいます。金融機関はこのような事態が起きやすく、政府はあらゆる手段を取ってでも、人々の不安を抑える必要がある。。。と述べたのが、昨年にノーベル経済学賞を受賞したバーナンキ元FRB議長です。もし今、彼がFRB(アメリカ連邦準備理事会)の議長だったら、どのような対応をしたのでしょうか。
今のFRB議長のパウエル氏は、元財務次官ですので、役人畑の出身です。経済学者出身の人のように、自らの信念に基づいて英断するというよりは、各方面に配慮しながら、バランス感覚を重視すると言えるでしょうか。
実際、今のアメリカは「インフレの抑制」と「景気後退の予防」という、相反する難題に直面しています。消費者物価上昇率は昨年よりは落ち着いたとはいえ、まだ5%程度もあり、人手不足が続いています。一方、景気を表す指数は下落が続いており、製造業の景気指数はすでに景気判断の分かれ目とされる50%を下回りました。
そんな中、5月1日に3つ目の銀行破綻が起き、FRBの判断が注目されていました。FRBは8日に0.25%という小幅な利上げを実施しました。景気を損なわないようにしながら、インフレを抑えたいという苦肉の判断と言えるでしょう。 アメリカの株式相場は、5月に入っても大きな下落はなく、なんとか持ちこたえているようです。この2か月で見ると上昇していますが、何度もこのあたりで上昇が止まっていますので、上に抜けて上昇していくのは難しいのではないでしょうか。
一方、日本のほうは、上がったり下がったりを繰り返しながらも、少しずつ上昇しています。一昨年(2021年)9月につけた、バブル崩壊後の高値30,795円も視界に入ってきました。(5月9日時点で29,242円なので、あと5%の上昇で到達。)
日本の経済状況は、比較的良好です。今年の春闘は賃上げが相次ぎましたし、新型コロナが落ち着いて消費も活発になっています。このゴールデンウィークは、今までの自粛ブームの反動か、どこの行楽地も人出でいっぱいでした。さまざまな業界で人手不足が言われており、それは賃上げにつながっていくことでしょう。物価は上昇し始めていますが、それでも2%行くか行かないか、という状況で、アメリカのようにインフレの心配はありません。日本銀行は依然として低金利を継続していますので、株式相場が上昇する要因がそろっています。それでも油断は禁物です。アメリカが下がれば、日本も下がりますので。
2023.5.10記

