もう30年も前の話で恐縮ですが、証券会社に入社して不思議に感じたことがありました。その当時、すでに証券バブルは崩壊し、株式相場は大きく下落していました。景気も悪くなり、日本銀行は金融緩和を実施している頃でした。会社の先輩方は、日銀による金利引き下げを望んでいました。金利が低下すると、資金が預金や債券から株式市場に流れ、株式相場が上昇するというのです。実際、日銀が金利引き下げをすると株価は上昇しました。しかし、私にとってはその考え方が不思議でした。
日銀が金利を引き下げるのは景気が悪いからであり、さらなる引き下げを望むのは、さらなる景気悪化を望んでいるのと同じことではないか。これでは、景気が悪い方が、株式相場が上昇するということになり、なんだかおかしいなあ。
実際、景気指標が悪く出た時に、株価が上昇することもありました。式にすると
金利が上昇 = 株価は下落
金利が下落 = 株価は上昇
となります。ところで、金利は景気と連動しており、
景気が拡大 = 金利は上昇
景気が悪化 = 金利は低下
です。これをつなげると、
景気が拡大 = 金利は上昇 = 株価は下落
景気が悪化 = 金利は低下 = 株価は上昇
となりますね。
景気が悪い方が株価は上昇するなんて、なんだかおかしいですね。株式は企業の利益を得るためのものですので、
景気が拡大 = 企業業績が向上 = 株価は上昇
景気が悪化 = 企業業績が悪化 = 株価は下落
にならないとおかしいです。
実際はどうだったかというと、日本経済の悪化とともに、株式相場はさらに下落していきました。その間、金利は低下しており、そのたびに株価は上昇するのですが、少し長い目で見ると、株式相場は下落しているわけです。
このように、短期的な整合性と長期的な整合性が相反することが良くあります。その瞬間、瞬間では短期的な理屈で動きますが、少し長い目で見ると、まったく逆に動いているわけです。
今のアメリカの株式相場がこのような状況になっています。FRB(中央準備理事会)が金利を引き上げると株価は下がると見られています。金利を引き下げないまでも、引き上げのペースを緩めると、株価が上昇すると期待されます。その挙句、株式市場の人々は「景気が悪い方が良い」と思ってしまいます。しかし、株式相場には、景気が良い方が良いに決まっています。景気が悪化していくと、その瞬間、瞬間には株価が上昇したとしても、少し長い目で見ると株式相場は下落していきます。
まだまだ好景気のアメリカですが、先行きに不安が生じており、金利の上昇ペースが鈍っています。FRBの議長(日本の日銀総裁に相当します)も、金利の引き上げを抑えるような発言をしています。それを受けて、このところ株式相場は上昇しています。当面は、
金利が上昇 = 株価は下落
金利が下落(上昇ペースが鈍るでも) = 株価は上昇
という動きが続くでしょう。しかし、今年から来年にかけて少し長い目で見ると、
景気が拡大 = 企業業績が向上 = 株価は上昇 = 金利は上昇
景気が悪化 = 企業業績が悪化 = 株価は下落 = 金利は下落
になるはずです。来年にアメリカの景気が悪化するかは、まだはっきりしていません。しかし、それを心配する声は強くなってきています。
アメリカで金利上昇のペースが鈍るとの見方が強くなったのを受けて、為替相場は「円高・ドル安」方向へ進んでいます。こちらも、来年にアメリカの景気が落ち込むようであれば、円高・ドル安方向へ進んでいくものと思われます。
2022.12.17記

