住宅購入の際にかかる諸費用

マンション販売の好調が続いています。販売価格はかなり上昇しており、首都圏では2023年3月のマンション販売価格の平均が1億円を超えました。この月は都心部での高額物件の発売が相次ぎましたので、それが平均を引き上げてしまった面はあります。しかし、一部の特殊要因を除いても、かなり高くなっていることには変わりありません。新築マンションが特に上昇していますが、中古や戸建ても引きずられるようにして上昇しています。

長引く低金利で不動産の購入意欲が旺盛になっているという面が大きいでしょう。今後は、金利が上昇することも考えられ、環境の変化が懸念されます。ただ、金利が上昇し始めたころは、駆け込みの購入が相次ぐ傾向があります。金利が上昇に転じても、しばらくの間は上昇が続くことでしょう。

 

自宅の購入を検討している人に注意しておきたいのが、住宅購入にかかる〝諸費用〟です。多くの人が、「物件価格」に目が行きます。物件価格を見ながら、「これぐらいなら買えそうだ」と算段をつけて検討します。ところが、実際に購入するとなると、それだけでは済みません。住宅を購入すると、物件価格以外に、いろいろな経費がかかってしまうのです。もちろん、いろいろとお金がかかることは、頭ではわかっているのですが、「諸費用」という言葉から、〝ちょっと増える〟ぐらいに考えている人が少なくありません。具体的に計算してみて、驚かされることになります。即断即決で購入を決めてしまうと、その後に資金不足になりかねません。特に最近のように、物件価格が上昇しているときは、諸費用の価格も合わせて上昇しています。数百万円にもなります。

概算では、新築のマンションや戸建て分譲販売の場合は、物件価格の3~5%と言われています。4%とすると、物件価格が6,000万円だと240万円、物件価格が3,000万円でも120万円となります。中古マンションや中古の戸建ての場合は、仲介をしてくれた不動産業者に支払う仲介手数料が加わりますので、6~10%になります。8%とすると、物件価格が6,000万円だと480万円、物件価格が3,000万円でも240万円です。確かに中古は新築に比べて物件価格は安くなりますが、諸費用が多めにかかりますので、その点は注意しておかなければなりません。では、どのような費用が掛かるのか、詳細に見ていきましょう。

 

  • 消費税:土地の売買には消費税はかかりません。中古物件はマンション、戸建てともにかかりません。新築の場合の建物部分についてかかります。マンションの場合も土地の部分と建物の部分で価格が決まっており、建物の価格に消費税がかかります。税率は10%ですが、金額が大きいので、数百万円になってしまいます。
  • 不動産仲介手数料:上記のように、不動産仲介手数料がかかるのは、中古の物件の場合です。土地だけの売買にもかかります。新築マンションや戸建て分譲販売の場合はかかりません。金額は、「物件価格×3%+6万円」と決まっています。これに消費税が加わります。物件価格4,000万円の場合、消費税込みで138万6,000円となります。
  • 融資手数料:住宅ローンを組む際に必要になります。定額で金額が決まっている金融機関と、融資額に対して一定の割合(定率)の金額とする金融機関があります。定額の場合はおおむね3~5万円程度ですが、定率の場合は融資額の2%としているところが多いようです。融資額が4,000万円の場合は88万円となります。このように、金融機関によってかなり差がありますが、次のローン保証料と合わせて比較するとよいでしょう。ローンの金利は低いものの、融資手数料が高い金融機関もあります。目先の金利だけに目を奪われないようにしましょう。
  • ローン保証料:住宅ローンを組むと、保証会社の保証を受けることになり、そのための保証料です。万が一返済ができなくなった際に〝保証〟してくれるのですが、助かるのは金融機関です。住宅ローンを借りている人は、返済先が保証会社に代わるだけで、返済を免除してくれるわけではありません。金融機関が負担するべきもののような気がしますが、現状ではローンを借りる人が負担することになっています。借りる際に一括で支払う方法と、住宅ローンの返済に上乗せして払っていく方法があります。一括で払う場合は数十万円~100万円ぐらいです。返済に上乗せする場合は、住宅ローンの金利に2%程度が上乗せされます。ネット銀行などでは、ローン保証料が無料のところもあります。もっとも、無料のところがお得とは限りません。ローン保証料が安い代わりに融資手数料が高かったり、あるいはその逆もあります。さらに、ローンの金利も違いますので、単純に比較はできません。住宅ローンの総返済額、融資手数料、ローン保証料を合計してみて、支払いが少なくなる金融機関を選びたいものです。
  • 団体信用生命保険:住宅ローンを組んでいた人が亡くなった場合に、その後の返済が免除される生命保険です。生命保険の保険金が決まっているのではなく、住宅ローンの残債分となっているのです。住宅ローン専用の特殊な生命保険です。民間の銀行では、この保険への加入が必須になっていますが、保険料は無料となっています。ローンの返済額に保険料が含まれていると言えます。もっとも、加入が必須となっているために、健康に問題があり、この保険に加入ができないと、住宅ローンが組めないということになります。十分な返済能力があっても、健康面で融資の審査が通らない、ということもあります。
    最近は、死亡だけでなく、いくつかの病気になった場合にローンの返済が免除されるタイプが増えてきました。「○大疾病保証付き団体信用生命保険」といいます。「3大疾病」や「8大疾病」だったりします。その分保険料が高くなりますので、住宅ローンの金利が上乗せされます。「3大疾病」の保証付きで、25%程度の上乗せとなります。
    35年間固定金利のフラット35を扱っている住宅金融公庫は、団体信用生命保険への加入が必須ではありません。サイトなどで表示している金利は、団体信用生命保険に加入した場合のローン金利です。加入しない場合は、表示の金利よりも0.2%低くなります。つまり、団体信用生命保険の保険料は、融資残高の0.2%と言えます。
  • 不動産取得税:不動産を購入した場合に都道府県に支払う税金です。原則は、その不動産の固定資産税評価額の3%です。固定資産税評価額は、固定資産税(購入後に毎年支払う税金)を算定するための不動産の価格で、時価の7割程度の金額です。新築の場合は現在、軽減措置があり、住宅の価格から1,200万円を差し引いて計算します。(長期優良住宅など、その他の軽減措置もあります。)物件価格が4,000万円の新築でしたら、48万円程度になると考えられます。購入した翌年度に、都道府県税事務所から納税の通知が送られてきますので、実際の支払いは購入の1年後ぐらいになります。
  • 登録免許税:住宅を購入したら、不動産の登記をします。登記をすることで、その不動産の持ち主であることを証明できるようになります。この登記の際に支払うのが登録免許税です。土地については、原則は固定資産税評価額の2%です。建物は固定資産税評価額の4%が原則ですが、軽減措置で0.3%になっています。他にも条件によって軽減措置が異なり、期間が限定されて適用されていますので、購入の際にご確認ください。4,000万円の物件で、土地と建物の価格が半分ずつとすると、46万円となります。
    住宅ローンを組む際には、その抵当権も登記します。この費用も購入者持ちです。融資額の0.1%になります。
  • 登記費用(司法書士の報酬):住宅を購入する際は、登記手続きを司法書士にお願いすることになります。司法書士への報酬がかかります。料金は、司法書士によってまちまちですが、おおむね10~20万円程度を考えておくとよいでしょう。
  • 引っ越し代:当然のことながら、新居へ引っ越しをすることになります。引っ越し代は業者によってまちまちですが、30万円ぐらいは見込んでおきましょう。
  • 家具や家電の購入など:抑えようと思えば、まったくかけないこともできますが、新居のサイズに合わせて、家具や家電を買い替えることが多いでしょう。特に、新居を購入した〝高揚感〟も手伝って、「この機会に」と大きな買い物をすることはケースは少なくありません。数千万円の買い物をした後ですので、金銭感覚が鈍っていることもあり、ついつい出費がかさみがちです。ある程度は事前の計画に見込んでおいた方がよいでしょう。

 

他にも、ご近所への挨拶や、自宅を建築する場合は地鎮祭なども必要になってきます。意外と節約しようとしてもできないものが少なくありません。このような、もろもろの出費を合計していくと、物件価格の3~10%ぐらいになってしまうわけです。自宅を購入する場合は、物件価格だけで判断するのではなく、これらの諸費用も含めて、支払いに支障がないかを判断しなければなりません。特に諸費用は、現金払いが原則ですので、住宅ローンで賄うことができません。購入時には頭金とともに、諸費用を全額支払えるだけの資金を準備しておく必要があります。

2023.5.25記

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