住宅購入の優遇策の改正

昨年の12月に「令和3年(2021年)度 税制改正大綱」がまとまりました。これは、税金の制度を変える原案です。毎年、来年度予算とともに、税金の制度も変更しています。税金の制度を変えると、税収額も変わりますので、予算案と税制改正はセットで審議されています。これから3月までに予算案とともに税制改正も国会で審議されますが、たいていは原案どおりに決まります。

この中には、住宅購入に関わる税金の制度も含まれています。これから住宅を購入する人に影響がありますので、その内容を見ていきましょう。

2019年10月に消費税が引き上げられました。その際に、住宅の分野ではいくつかの優遇策が実施されました。住宅は金額が大きいので、2%の引上げでも増税となる金額は大きく、住宅投資の落ち込みが心配されたためです。この優遇策は、一時的なもので、期限を設けて縮小または廃止される予定になっています。今回(2021年度)の税制改正では、この優遇策を縮小しないで、延長することとしました。優遇策の延長ですから、新たに減税されるわけではありませんが、〝予定〟と比べると、減税であると言えるでしょう。新型コロナの影響で、景気が悪化するのを避けるため、優遇策を延長したわけです。

 

<贈与税の非課税措置の縮小の先延ばし>

贈与税は、相続税と比べて税率が高く、負担が重たい税金です。親子間の贈与の場合は、他人からお金をもらうのと比べると若干税率が抑えられていますが、それでも高いことには変わりありません。子供夫婦が住宅を購入する際などに、親が資金援助をすることはよくあります。それをしやすくするために、住宅の購入のための資金に限っては、一定の金額までを非課税にしています。親の資金援助をしやすくすることで、住宅投資が促進されることを狙った優遇策です。

例えば、現在は消費税が10%かかる新築住宅を購入するための資金であれば、親や祖父母からもらう場合は1,000万円までが非課税となっています。それが、今年(2021年)の4月からは非課税となるのが700万円までに縮小される予定でした。それを今回の税制改正で、今年の12月までは1,000万円のままとすることに変更します。非課税枠の縮小が9ヶ月先送りされるわけで、今年に贈与を受けようという人には恩恵です。とりあえず、今年いっぱいの間先延ばしをして、コロナ禍で落ち込む景気を下支えして欲しいいと考えたのかもしれません。中古住宅は消費税がかからないものが多く、非課税の枠が小さくなっています。逆に省エネ住宅などは非課税枠が大きく設けられています。いずれも今年の4月で縮小される予定でしたが、それが12月まで先送りされました。

贈与を受けて購入する住宅には、床面積50㎡以上の物件という条件があります。今回の税制改正で、合計所得1,000万円未満の人については、40㎡以上を対象にすることになりました。狭い家でも対象になるわけです。対象者の所得に上限を設けたのは、投資のための購入などに利用されないようにするためです。

<住宅ローン控除の延長と拡大>

住宅ローン控除は、住宅ローンの残高の1%に相当する金額だけ、税金を減額する制度です。これが10年間適用されますので、減税額は小さくありません。これで所得税が0円になる人も少なくないぐらいです。住宅ローンの残高の1%に相当する金額が減税になるということは、住宅ローンの金利負担1%分を国が肩代わりするという意味です。今では金利が1%よりも低くなっていますので、借りる必要がなくてもあえて住宅ローンを組んだ方が〝お得〟という状況です。

この減税制度は、住宅ローンを組んでから10年間で終了しますが、消費税増税の際に、さらに3年間、税金を優遇するようにしました。11年目から13年目までの3年間は

  • 住宅ローン残高の1%
  • 購入した自宅の価格(税別)×2%÷3

のうち、小さい方の金額が減税となります。

このうち、①は10年目までの住宅ローン控除を3年間延長した形です。②の式がわかりにくいかもしれませんが、要は「消費税の増税で値上げとなった分を減税する」というわけです。この特別措置により、住宅ローンを組んで新築住宅を購入した場合に、消費税の引上げの影響を受けないことになります。

この特別措置は期間限定で、2020年12月末で終了する予定でした。注文住宅の場合は2020年9月までに建築契約を締結、分譲の場合は2020年11月までに購入契約を締結していれば、2020年の年末までに入居すれば、控除期間が13年となりました。昨年のコロナ禍で、入居時期は2021年12月末まで延長されていました。

今回(2021年)の税制改正で、下記のように延長されました。

  • 注文住宅の建築契約:2021年9月まで
  • 分譲住宅の購入契約:2021年11月まで
  • 入居:2022年12月末まで

実質、1年程度の延長でしたが、今年購入する人には朗報です。なお、この措置は消費税が10%になる新築住宅が対象です。消費税がかからない中古住宅の住宅ローン控除は10年間のままです。(中古でも不動産会社が販売して消費税10%になるものは新築と同じ扱いです。)

こちらも、贈与税の非課税措置と同様に、合計所得1,000万円までの人は、対象となる住宅の床面積が50㎡から40㎡に引き下げになりました。

<すまい給付金>

こちらは、税金の制度ではありませんので税制改正ではありませんが、同時に延長される予定ですので、あわせてご紹介いたします。

住宅ローン控除は大きなメリットがありますが、所得税や住民税の減税制度ですので、税金を多く払っている高所得な人ほどメリットが大きくなります。所得が低い人は、その恩恵が大きくなりません。また、退職金での購入など、住宅ローンを組まなかった人にはメリットがありません。そこで、そのような人に減税ではなく、お金をあげるという制度が設けられています。「すまい給付金」で、所得に応じて10~50万円が給付されます。

消費税引き上げとともに設けられた優遇制度ですので、期間限定のものです。こちらも2020年12月までの予定となっていましたが、2022年12月までの入居にと、延長される予定です。

2021.2.21記

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