新型コロナによる収入減で、住宅ローンが払えない

新型コロナの感染拡大はなかなか収まらず、緊急事態宣言は5月末までの延長となりました。地域によっては早めに解除されるところもあるようですが、それでもすぐに以前の賑わいを取り戻すわけではありません。

経営者や自営業者は休業や売上減で資金繰りに奔走されている人も多いでしょう。お勤めの方でも、いきなり解雇とされたケースもあるとニュースで報道されています。そこまで行かなくても、正規賃金の6割の休業手当となった、さらには休業手当も支給されないという人も少なくありません。たとえ基本給は維持されたとしても、残業手当はなくなり、ボーナスも見込めないとなると、かなりの収入減となります。雇用が維持された場合でも、ほとんどの人は多かれ少なかれ収入が減っているのではないでしょうか。すべての人を対象に、1人あたり10万円の特別定額給付金が支給されることになりましたが、収入減が大きい人には焼け石に水かもしれません。

「ステイホーム」でレジャー費や外食費を抑えても、減らすことができないのが住宅ローンの返済です。収入の減少幅によっては、毎月の返済が難しくなっている人もいるのではないでしょうか。住宅ローンの返済が滞ると、最悪の場合、自宅が差し押さえられてしまい、マイホームを手放さなければならなくなります。かといって、住宅ローンの返済を優先して、食費にも事欠くようになってしまっては、それも家庭の崩壊につながります。返済が難しくなったら、早めにローンを組んでいる金融機関に相談するのがよいでしょう。

住宅ローンの返済が滞るとどうなるか、を見てみましょう。まず、毎月の返済日に引き落としができなかった場合、最初は郵送での通知か電話での連絡が来るだけです。しかし、そこですぐに対応しないと、延滞の扱いになり、延滞遅延金が発生します。金利は14.6%となり、かなり高い金利です。

さらに、今までの「優遇金利」が適用されなくなり、住宅ローンの金利がアップし、返済額が上昇します。例えば、現在の住宅ローンを見てみると、変動金利で通常は2.475%なのに対して優遇金利は0.525%で、1.95%も高くなります。20年固定金利だと通常は4.64%が優遇で1.19%ですので、3.45%の上昇です。(金融機関によって異なります。)返済が苦しい中で、金利が上昇すると、負担はかなり大きくなります。

そして3ヶ月を過ぎると、残りの残高について一括での返済を求められるようになります。毎月の返済に窮している状況で、一挙に数千万円の返済を迫ってくるのです。こうなると、ほとんど返済は不可能になります。しかも、この時点で信用情報機関のブラックリストに掲載されてしまいます。すると他の金融機関で借り換えるということもできなくなります。ローンを組む時に、保証料というものを払っていますが、債務が金融機関から保証会社に移るだけで、ローンを組んだ人の返済が免除されるわけではありません。保証料は、金融機関を守るためのもので、債務者を保護するものではないのです。

また、この時点では団体信用生命保険がなくなっており、万が一、ローンの名義人が亡くなっても、ローンの返済は免除になりません。最近のような新型コロナの感染が広がっている状況では、考えたくはありませんが、十分に気を付けたいところです。

6ヶ月を過ぎた頃には、自宅が競売にかけられるようになってしまいます。競売にかけられると、自宅を出ていかなければならなくなります。もちろん、今までの返済は無駄になり、今後の住まいの家賃が発生することになります。競売での売却代金は、ローンの返済に充てられますが、それでも返済が完了しない場合は、自宅を失った後も返済が続くことになります。競売は通常の売却とは異なり、価格が安くなる傾向がありますので、ローンが残る可能性は十分にあります。

このように、2~3ヶ月放っておくだけで、取り返しがつかない事態になってしまいます。そうならないように、早めに金融機関に相談することが重要です。「一定期間、金利だけの支払いとし、元金の返済を猶予する」「返済期間を延長して、毎月の返済額を小さくする」などの対応策があります。窮状を訴えると金融機関を不安にさせてしまうのではないか、と心配される方もおられますが、このような状況ですから、金融機関もできるだけ対応してくれるはずです。

実は、これらの対応策は、一時的には負担が小さくなりますが、ローンの総返済額は増えることになり、長い目ではかえって負担は大きくなります。それだけに、金融機関にとっては、あながち悪いことではないのです。もちろん、返済する側にとっては負担増ですが、延滞だけは避けたいところです。

2020.5.10記

質問はこちらから