トイレットペーパーの品不足をなくす方法

新型コロナの感染者が広がってから、商品の流通において、さまざまな混乱が起きています。まずはマスク不足が起きて、それは今でも続いています。その次はトイレットペーパーがあっという間に陳列棚から姿を消しました。最近でこそようやく出回るようになりましたが、しばらくの間は買うことすらできず、肝を冷やした人も多いことでしょう。消毒液やウェットティッシュなどの衛生関連ばかりでなく、パスタやインスタントラーメン、冷凍食品なども陳列棚が空になることがあります。

緊急事態宣言が出されて、また買いだめをする人も増えており、いつまたパニックが起きないとも限りません。メーカーも増産体制を取っているようですが、急に生産ラインを増やすこともできず、急増する需要を賄いきれないようです。ニュースなどではしきりに「十分な在庫はありますので、必要な分だけを買ってください」といっていますが、空になった陳列棚が映し出されると、焦る気持ちにもなります。

マスクや消毒液などは急に使う人が増えましたので、実際に供給に比べて需要が多い「供給不足」の状態になっています。それに対して、トイレットペーパーは急に使う人が増えたわけではありません。全くの誤解であったのですが、「中国からの輸入が止まり、供給がなくなる」と思い、買いだめをする人が増えたためです。パスタなどの麺類や冷凍食品などの保存食は、給食がなくなったことで需要が増えた面もありますし、保存がきくということで、外出禁止が出た場合に備えて買いだめをした人も多かったようです。

使用頻度が増えたわけではない商品であれば、みんなが買い急ぎをしなければ、商品不足になることはありません。テレビでは「冷静な判断」を呼びかけていますが、パニック買いが起きたら、それに加わって買い急ぎをするのが〝正しい行動〟です。ひとたびパニック買いが発生すると、本当に品不足で手に入らなくなってしまうからです。長蛇の列に並ぶことは、けっしてレベルの低い行動ではなく、自己防衛のための適切な判断です。パニック買いが続いて、陳列棚が空になってしまったときに、自宅のトイレットペーパーがなくなってしまったら、困るのは自分です。多くの人が冷静であれば、パニック買いは無駄な行動ですが、みんながパニックに陥った時に冷静でいるのも誤った判断なのです。

では、このようなパニック買いが起きないようにするのは、どのようにすれば良いのでしょうか?

実際にはお店の評判などに影響するので難しいのですが、商品の価格を値上げすることです。商品の価格を引き上げると、買う方は〝ちゅうちょ〟するようになります。少しぐらいの値上げだと、今後のさらなる値上げを予想して、かえって買い急ぎが増えることもあるのですが、大きく値上げをすると、購入が減ります。それでも自宅のトイレットペーパーが底をつきかけて、ピンチな人は高くても購入します。しかし、自宅に十分な在庫を抱えている人は、あわてて購入するのは止めるでしょう。また値下がりした時に購入すればよいからです。価格の上昇が一時的なものだと感じれば、わざわざ高い時には購入しません。すぐに買わなくても困らないからです。

これはとても大切なことです。購入価格は高くなってしまうものの、「すぐに購入することができる」状態が維持されているからです。一般に、価格が簡単に動く場合は、供給不足になると、価格が上昇します。しかし、完売にはなりにくく、まったく手に入れられないわけではありません。一方、価格が動かない場合に供給不足になると、早くから並んだ人は安く購入できますが、すぐに〝売り切れ〟となってしまい、それ以降はまったく購入することはできなくなります。

トイレットペーパーなどのような生活必需品で、完売状態が続いたら、自宅で本当になくなってしまった人はどうすれば良いのでしょうか?(困ったではすみませんよね。)

一方、価格が上昇すると、買い急ぎの人や自宅に十分なストックがある人は購入を見送りますが、本当にピンチな人は高い金額を払わなければならないものの、まったく手に入れられない状態は避けることができるのです。

供給不足の折に値上げをすると、「多くの人が困っている時に、人の足元を見やがって」とそのお店は批判を受けてしまいます。しかし値上げするということは、どうしても必要とする人のために、商品をキープしておくことになり、人助けになっているのです。

値上げのために購入する人は少なくなりますので、いつまでも値上げを続けていると、今度は逆に商品が余ってしまいます。その時にはすかさずに値下げをすればよいのです。価格が下がると、ピンチでない人も再び購入するようになります。

今回のように急に供給不足が発生し、簡単に値上げができると、販売側のメーカーや商店が大きな利益を得てしまう、との懸念があるかもしれません。多くの人が困っている時に大儲けをしてしまう人も出てきます。しかし、それは供給の増加につながります。高く売れて、利益が大きいとなれば、それを狙って新規参入が相次ぎ、供給不足は解消します。

価格が低いままでも完売できる状況であれば、生産を増やせば利益が増えますので、供給の増加につながりますが、「高く売れる」という方が、生産側には魅力が大きいでしょう。魅力が大きい方が生産の増加は大きく、供給不足は早く解消します。

価格が動きやすく、値上げや値下げが頻繁に起きる方が、需要(購入側)と供給(生産側)の調整が早く進み、供給不足が解消しやすいのです。その結果、価格は再び下落して、適切な水準に戻ることになります。

2020.4.8記

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