コロナ禍の不動産市況

新型コロナの発生で、私たちの生活は大きく変わりました。「リモートワーク」が一般的になり、在宅での仕事をすることが珍しくなくなりました。この動きは、コロナワクチンが接種されるようになっても、変わることはないでしょう。

働き方が変われば、住まいも変わります。これからの住宅の人気は、今までと違ったものになるかもしれません。最近の動向から、今後の傾向を予想してみます。

 

1.全体の不動産市況

2月以降、新型コロナの感染がヨーロッパ、アメリカで広がり、日本でも3月に休校措置、4月に緊急事態宣言が発令されました。外出が自粛されるようになり、世界的に景気が落ち込みました。ヨーロッパ、アメリカ、そして日本でも4-6月期のGDP成長率は、最悪の落ち込みです。景気が悪くなれば、不動産の取引も落ち込みます。特にリモートワークが始まってからは、オフィス需要が落ち込みました。外出や外食の自粛で、商業需要も大幅に減少しています。景気の悪化で失業や収入減となる人も多くいますので、住宅についても下落していくものと思われていました。

実際、住宅購入も4月、5月は落ち込みました。しかし、住宅用不動産については、6月以降は回復に転じ、その後も需要は増え続け、秋頃には前年を上回るペースとなりました。最近は〝活況〟と言えるほどの状況で、売買の取引件数は増え、不動産価格は上昇しています。この理由としては次の3つの要因が考えられます。

  • 各国の中央銀行による大幅な金融緩和で、一層金利が低下し、借りやすくなった
  • リモートワークなど働き方の変化で、間取りを変える必要性が生じた
  • 自宅に居る時間が長くなり、自宅の購入について考える時間的な余裕ができた

 

2.需要動向の変化

次は人気の、つまり求められる物件の傾向について見ていきます。リモートワークの増加で、通勤の必要がなくなり、地方人気が高まると思われました。

今年は、東京からの人口流出が、流入を上回るという初めての現象が起きました。軽井沢や熱海で物件の引き合いが相次いでいるという話を聞きます。別荘としてではなく、自宅として購入するという人が増えているのです。逗子、浦安、吉川など、都心から少し離れつつも、通勤できないほどの距離ではない、ほどほどの郊外の人気が急上昇しています。マンションから戸建てが注目されるようになっているのも特徴です。その理由は

  • リモートワークが広がり、通勤の必要性がなくなった、あるいはその頻度が少なくなった
  • 自宅でリモートワークを行うため、仕事用の部屋が必要になった
  • 他人との接触を避けるため、あるいは子どもが自宅で過ごすことで騒音を気にするようになり、戸建てへの住み替えの希望が増えた

などがあります。

また、コロナが原因ではないのですが、最近の自然災害でマンションの脆弱性が意識されるようになり、それも戸建て人気の要因になっています。近年は、マンション価格がかなり高騰していましたので、それも影響しているでしょう。こうして、「郊外」「戸建て」の人気が復活しています。

では、都心部のマンションが下落しているかというと、そうでもないのです。実は都心部も人気で、高層マンションも含めて依然として高水準の取引が続いています。都心部の地価が下がったといっても、それはオフィスや商業地のことで、住宅価格は下がっていません。コロナ後も、あえて都心部のマンションを購入する人は多いのです。その理由として、こんな声がありました。

「在宅ワークをすることで、改めて通勤時間の無駄に気がついた。リモートワークとはいっても週に1、2回は出社しなければならないので、都心に近いところの方がよい」

確かにそれも一理ありますが、実際は低金利で高額のローンを組みやすいのが理由でしょう。コロナ禍で景気が悪化したとはいっても業種によって、収入が変わらない人は少なくありません。そのような人にとっては、都心部の高額なマンションを購入しやすくなっています。

さらに、投資物件も人気で、価格が上昇しています。こちらも低金利で資金が借りやすくなっていることが理由です。収入が減少していない人にとって、低金利の今は投資のチャンスです。法人による住宅物件への投資も増えていますが、こちらは、景気の悪化が理由です。先行きの見通しが良ければ、本業への投資を優先します。不動産投資よりも得意とする本業の方が確実で利益も見込めます。本業で期待ができないからこそ、不動産投資をするのです。もちろん、オフィス需要や商業需要は期待できませんので、住宅用物件への投資となります。

現状、予想外に不動産取引は活発で、住宅価格は上昇傾向が続いています。次回は、今後の動向を占います。

2020.12.20記

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