住宅ローンは変動金利と固定金利のどちらが良いか?③

現在、日本銀行は長期金利にも短期金利にも介入していますが、長期金利よりも短期金利の方が影響力は強く、日本銀行がより強く金利が上昇するのを抑えていると言えます。先にご紹介した「変動金利は日本銀行が上がらないように抑えていますので、上昇しにくい」という解説は、あながち間違いではありません。ただ、今後もそれが続くかどうかはわかりません。

経済が良くなると、全般的に金利は上昇していきます。まず長期金利から先に上昇し、続いて短期金利が上昇する傾向があります。日本経済が回復していくのであれば、やがて長期金利に続いて短期金利も上昇していくでしょう。長期金利と短期金利は全く別のものではありません。お互いに関連していますので、短期金利だけ抑え続けることはできません。すると、住宅ローンにおいても、まずは固定金利が、そしてそれに遅れて変動金利が上昇していくことが考えられます。一般に、長期金利の方が先に上昇していく傾向がありますので、住宅ローンで言えば、固定金利が先に上昇していくことが考えられます。住宅ローンを選ぶ際に、「将来の金利上昇が心配なら、まずは変動金利にしておいて、金利が上昇し始めたら固定金利に換えるとよいでしょう」とアドバイスする人もいます。しかし、今ご紹介したように、変動金利よりも固定金利の方が先に上昇します。変動金利が上がりだした頃には、固定金利はすでにかなり高くなっているはずです。その頃に金利タイプの変更を検討しても遅いでしょう。金利もかなりアップすることになり、固定金利への切り替えに踏み切るのは躊躇してしまうはずです。このまま金利が上昇していくとすれば、変動金利から固定金利に切り替えた方が良いタイミングは〝今〟なのかもしれません。

今後、金利が上昇していくかどうかは、景気が回復していくかどうかにかかわってきます。こればかりは株式市場と同じで予想が難しいものです。エコノミストなどの専門家でも意見は分かれますし、いつも当たる人はいません。また、金利はお金を借りた際に払う〝借り賃〟であると言えます。最近は日本でもインフレが進行しており、あらゆるものの価格が上昇しています。〝借り賃〟の価格も上昇してもおかしくありません。インフレによって、景気が良くなくても金利が上昇する可能性もあります。

日本経済の回復に伴って金利の上昇が続くと、長期金利も短期金利も予想外に上昇することもあります。金利がかなり上昇すると、長期金利よりも短期金利の方が高くなる場合があります。と言いうことは、住宅ローンでは固定金利よりも変動金利の方が高くなるといいうことになります。変動金利は予想外に変化する可能性があるということは考慮しておいた方が良いでしょう。その時に変動金利から固定金利に変更すると、その時点では金利が下がりますが、その時点はかなり高金利となっているわけで、ローンの完済まで同じ金利が続く固定金利のするのは得策ではありません。その後の金利低下を踏まえると、逆に変動金利にした方が良いぐらいです。いずれにしろ、金利を高い方に換えるというのは、なかなか心理的にも抵抗があるはずです。

固定金利期間選択型という金利タイプもあります。1年~20年のいくつかの選択肢があり、当初の金利が変わらない期間を選ぶようになっています。固定金利の期間を選択できる、というわけです。この期間が終了すると、またその時点で一定の期間の固定金利あるいは変動金利を選べるようになっています。その時点の金利状況に応じた金利が提示されます。固定金利の期間が長いものは、かなりの期間は当初の金利が続くことになります。しかし、いずれ金利が変化することには変わりありません。「固定金利~」といいう名称が付いていますが、変動金利の一種と考えておいた方がよいでしょう。特に固定金利の期間が短いものは、変動金利タイプとそれほど変わらないと考えられます。

2023.3.11記

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