高いほどよく売れる(後半)

「高いほどよく売れる(前半)」から続きます。

ただ、これだけなら「高い物件も購入できるようになった」というだけで、わざわざ高い物件を選ぶ必要はありません。これだけではない、高い物件を選びたくなる要因があるのです。

 

  • 住宅ローン減税

住宅ローン減税は、年末の住宅ローン残高の1%に相当する金額分、所得税が減税となる制度です。これによって所得税が0になる人も少なくありません。適用されるローン金額の上限や減税となる期間がたびたび変更になりました。昨年(2021年)は、新築住宅で4,000万円、長期優良住宅・エコ住宅は5,000万円が上限で、13年間減税が適用されました。

今年(2022年)は減税が、年末の住宅ローン残高の0.7%分に縮小されますが、新築住宅が3,000万円、長期優良住宅・エコ住宅は5,000万円で、適用期間は13年間となります。

住宅ローン残高の1%(今年から0.7%)の金額分が減税となる、ということは、住宅ローンを多く借りた方が〝お得〟ということになります。減税額を最大限にしようと思ったら(10年間は年末残高が5,000万円以上になるようにする)、金利1%の35年返済では、6,600万円のローンを組むことになります。そこまで行かなくとも、住宅ローンを多く借りた方が〝お得〟というわけですので、高い物件を購入するようになります。住宅ローンは原則、物件の購入価格までしか借りられませんので、物件の価格を高くしよう、という意向になります。減税のことを考えたら、物件価格は高くてもよい、ではなく、高い方がよいのです。

 

  • 相続税の節税

2020年に相続税が非課税となる枠が縮小になり、実質的に増税となりました。それだけに、相続税の節税をする人も増えています。節税をするには、不動産を購入するのが有効です。不動産は、相続税を計算する際の評価額が低いからです。実際の購入価格の8割ぐらいの価格とみなされます。5,000万円で購入したマンションが4,000万円と評価され、その金額で相続税が計算されます。その結果、相続税が小さくなったり、あるいはかからなくなったりします。

評価額が2割下がるということは、物件価格が高いものを購入した方が引き下げられる金額が大きくなります。1億円の物件であれば、購入しただけで、相続税の対象となる金額が2,000万円も小さくなります。

さらに、高層マンションほど評価額が縮小できる傾向があり、相続税の節税対策としてマンションを購入する資産家は少なくありません。実際、都心近くの高層マンションではローンを組まずに購入する富裕層の高齢者もいるそうです。そのような目的の人にとっては、物件価格は高い方がよいわけです。

 

このように、節税対策としては、物件価格は高い方がよい、ということになります。もちろん、「高い方がよい」と言える状況の人が〝一般的〟とは言えませんが、このように高額のマンションを購入する人が増えているのは確かです。

「とにかく高い物件を」と探していくと、①都心部または都心に近いところで、②駅に近く、③設備が豪華な 新築マンションとなります。

リモートワークで通勤の必要性がなくなっても、都心部、駅近くの高級マンションが売れるのはそのためです。「利便性」を求めているのではなく、「価格の高さ」を求めているからです。販売がそれほど増えていないのに、価格だけが上昇しているのは、このためです。

 

低金利と節税効果の影響で、「高い物件でも買える」層に加えて、「高い物件を買いたい」層が重なり、物件価格の上昇が続いています。

住宅ローン減税や贈与税の非課税枠などは、今年は少し縮小されます。それでも低金利が続く間は、今の状況が続くものと思います。

この傾向がいつまで続くのかはわかりません。価格の上昇が続く「都心のマンション」VS価格の低迷が続く「郊外の戸建て」。どちらを購入した方がトクなのか、考えて今いますが、今後の状況が読めないだけに、ご家族の希望で選択するのがよいでしょう。

2022.4.28記

質問はこちらから