火災保険、値上げします

いきなりクイズです。
先生:火災保険は何のために加入する保険でしょうか?
生徒:そんなの簡単!火災で被害を受けた損害を補てんするためでしょう。
先生:う~ん、残念ながら△です。×ではないけど、○でもありません。
生徒:えっ、どうして!?
先生:火災保険で支払われる保険金のうち、火災によるものは、せいぜい1~2割程度です。実は半分以上が、台風や集中豪雨、大雪などの自然災害によるものなのです。火災保険は、火事のため、というよりも自然災害に備えるため、という方が実態を表しています。

そうなんです。火災保険は、もちろん〝火災〟に備えるためのものでもあるのですが、自然災害に備えるための保険なのです。

保険商品によって、カバーされている保障に違いがあるので、注意しなければなりませんが、おおむね、台風などの風災や大雪などの雪災はカバーされています。水災については、カバーしているものと、していないものがありますので、これを機会にぜひご確認ください。

ちなみに、地震による被害、倒壊や津波などは火災保険の対象ではありません。地震保険の対象になります。地震保険は、火災保険に加入すると、別料金でオプションとして加えることができます。地震保険に加入しているかも確認しておきましょう。

ところで、この火災保険、このところ値上げが続いています。2015年に約10年ぶりに値上げされましたが、次は2019年10月、そして来年1月にも値上げが予定されています。値上げまでの間隔がだんだん短くなっています。値上げの幅は、保険会社や地域、建物の構造によって異なりますが、平均すると、昨年の10月は6-7%でした。そして来年の1月も6-8%程度の値上げとなる予定です。

値上げの理由はご想像がつくかと思います。そうです。自然災害の多発と被害の甚大化です。火災保険が火災に備えるだけの保険であれば、全国で急に火災が増えることは考えられませんので、急な値上げの心配はありません。しかし、皆さんも感じられているとおり、自然災害が増えており、それによって火災保険の保険金支払いが急増しているのです。それを受けて、保険料が引き上げられているというわけです。

生命保険は、保険会社がそれぞれ死亡率や病気の発生率などを調べて保険料を決めていますが、火災保険は保険料の決め方が違います。「損害保険料率算定機構」という、業界共通の組織があり、そこが基準となる保険料率を決めています。自動車保険であれば、車種ごとに事故率を分析して決めていますし、火災保険は地域や建物の構造によって、損害の発生率を分析して基準を決めています。

各保険会社は、それに自分の会社での費用を上乗せして、保険料を決めています。各社ごとに、保険料を抑える分野、利益を確保する分野など、戦略があり、それによって保険料は違いますが、基本となっているものはほとんど同じなのです。(必ずしも算定機構の保険料率を使わなければならない、というわけではありませんので、独自に決めいているものもあるかもしれません。)

損害保険料率算定機構が、基準となる保険料率を変えると、その1年数か月後ぐらいに各社が保険料を値上げすることになります。そのために、もう今後の値上げの予定がわかるわけです。どれくらい値上げするかは各社によって異なりますが、来年の1月に値上げされるのはほぼ確実です。

昨年10月に値上げされましたが、その基準となったのが、その前年2018年5月に算定機構が計算した値上げです。さらにその前、2016年までの自然災害による保険金の支払いが増加して、保険料を上げざるを得なくなったのです。

そして、来年の1月の値上げ予定は、昨年(2019年)の10月に機構が算定した値上げによるものです。この算定には、2018年までの保険金支払いの状況が反映されています。この2018年の保険金支払いが、それまでと比べてケタ違いに大きくなり、2年しか経過していないにも関わらず、値上げせざるを得なくなったのです。

昨年(2019年)も各地で自然災害が発生し、保険金の支払いは、2018年に次いでケタ違いの金額となりました。それについては、2019年10月の機構の算定には反映されていませんし、来年1月の値上げに反映されないわけです。それは、今後の状況次第で算定されることになるでしょう。

2020年もすでに各地で自然災害が発生しており、それはこれから保険金の支払いにつながるでしょう。その金額によっては、また近いうちに値上げ、ということになるかもしれません。

2020.8.9記

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