自宅の相続②

では、「財産分割」の問題を考えます。
親がそれほど現預金などを保有しておらず、財産のほとんどが自宅である、というのはよくある話です。
しかし、このような場合で子供が複数いる場合は、扱いが難しくなります。
現金は簡単に分けられますが、自宅はそう簡単に分割できません。
自宅を兄弟が一緒に相続して、共有とすることもできますが、不動産の利用やその次の相続のことを考えると、あまり得策ではありません。

やはり、自宅は一人が相続し、その他の子供には現金などを分け与える必要があります。
この場合、親に対する寄与分、同居しているか、などを考慮して、遺言書を作成しておくのがよいでしょう。
相続した財産の内容によって、子供の間で不満が起きやすい場合でも、親からの遺言があれば、争いとはなりにくいでしょう。

十分に金融資産がある場合には、一人の子供が自宅を相続して、他の子供が預貯金や株式などの金融資産を相続する子ともできます。
しかし、そのような代替となるものがない場合には、「代償分割」と「換価分割」という方法があります。
「代償分割」は、自宅を相続した子供が、他の子供に対して、金銭などを支払うやり方です。
自宅を相続する子供が、十分な金融資産を持っている場合に有効です。
他の子供に払う金銭は、親からの相続財産の一部と考えます。
よって、金銭をもらった他の子供には、贈与税はかからずに、相続税がかかります。なお、自宅を相続する子供に十分な金融資産がない場合には、生命保険で代償する金銭を準備することができます。
生命保険の使い方は、納税資金の準備でご紹介した方法と同じです。

十分に金融資産がある場合には、一人の子供が自宅を相続して、他の子供が預貯金や株式などの金融資産を相続する子ともできます。
しかし、そのような代替となるものがない場合には、「代償分割」と「換価分割」という方法があります。

「換価分割」は、相続した後に自宅を売却して、現金にした上で財産を分ける方法です。
この場合、不動産が金銭に代わっていますので、評価や持分で争いが起きることがなく、すっきりと分けらます。
ただし、財産を分割するために売り急ぐと、売却価格が下がってしまう心配があります。
また、自宅の売却益に所得税がかかりますので、値上がりしている場合には注意が必要です。
自宅の取得費に相続税額を加えることができ、そのために売却益を少なくすることはできます。
「代償分割」は、どちらかが自宅を相続し、その人がもう一方の相続人に金銭を支払う方法です。相続人が、自宅の半額に相当する金銭を支払えることが前提になります。
「代償分割」と「換価分割」のどちらが有利かは、ケースによって異なります。
自宅をどうしたいのかも含め、検討する必要があります。

もう1つ、相続前に自宅を売却するという方法もあります。
これなら、相続時にあわてる必要もありませんし、じっくりと時間をかけて売却することもできます。
ただし、不動産は相続税の評価額が低いので、売却して金銭に替えると相続税が増えてしまいます。
相続税がかからないような場合に、検討するとよいでしょう。

このように、自宅は簡単に分けることができないので、子供が複数いる場合は何らかのことを考えておかなければなりません。誰も子供が同居していない場合は、あらかじめ対策を検討する必要がありそうです。 

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