相続税の増税と小規模宅地の評価減②

予想される相続税の金額によっては、納税資金の準備や節税対策などの対策を考えておくとよいでしょう。
相続税を少なくするための方策はいくつがありますが、もっとも大きい効果が期待できるのが、「小規模宅地の評価減の特例」という制度の活用です。

この特例は、地価の高騰が激しかった頃に、相続税の負担が重く、自宅を売却しなければならない事態を避けるために設けられた制度です。
亡くなった人が住んでいた自宅の土地について、一定の相続人が相続する場合は、土地の評価額を8割減額する(本来の評価額の2割の金額とすることができる)というものです。
評価額とは相続税を計算するための金額ですので、この分相続税が少なくなる、というわけです。
この「評価減の特例」の対象になるのは、以下の人が相続した場合です。

  1. 配偶者
  2. 同居の親族
  3. 配偶者、同居の親族がいない場合は、マイホームを持っていない親族

※相続税の申告期限までに売却していないことなど、細かい条件があります。

平成26年12月までは240㎡までの部分がこの「評価減の特例」の対象となりますが、平成27年1月からは330㎡までが対象となります。

 

具体例で見てみましょう。
40代のあるご夫婦が、マイホームの取得を検討しています。
現在、夫のご両親のご自宅は、夫の父親が所有しています。
父親が亡くなった場合に妻である母親がご自宅を相続されれば、この「評価減の特例」が使えますし、そもそも配偶者が相続する場合は、ほとんど相続税がかかりません。
問題は、父親あるいは母親のどちらか、後に亡くなられた方の相続の場合です。

本人ご夫婦が、親と同居をしていれば、相続する自宅の土地に「評価減の特例」が適用されます。
同居していなかった場合は、本人ご夫婦がマイホームを持っていない場合に「評価減の特例」が適用されます。

ここで、マイホームを購入した場合と、しなかった場合で相続税がどのくらい違ってくるのかを試算してみます。

 

<前提条件>

ご両親の財産:自宅の土地(路線価5,000万円)

金融資産6,000万円

※自宅の建物の評価額は0円とします。

 

(1)マイホームを購入した場合

・今年度に贈与税がかからない範囲で資金援助を受けます。(610万円)

・自宅の土地に「評価減の特例」は適用されません。

遺産の評価額:自宅の土地5,000万円+金融資産(6,000万円-610万円)=1億390万 円

基礎控除額:3,000万円+600万円×1人=3,600万円

相続税の対象額:1億390万円-3,600万円=6,790万円

相続税の金額:6,790万円×30%-700万円=1,337万円

 

(2)マイホームを購入しなかった場合

・生前の資金援助はありません。

・自宅の土地に「評価減の特例」が適用されます。

自宅の土地の評価額 5,000万円×20%=1,000万円←8割減とする

遺産の評価額:自宅の土地1,000万円+金融資産6,000万円=7,000万円

基礎控除額:3,000万円+600万円×1人=3,600万円

相続税の対象額:7,000万円-3,600万円=3,400万円

相続税の金額:3,400万円×20%-200万円=480万円

 

相続税の差額:1,337万円-480万円=857万円

 

マイホームを購入すると、現在のまま(賃貸住宅暮らし)の場合と比べて、相続税の負担が857万円も大きくなるという計算になりました。
他にも相続税を少なくする方法はありますので、この通りとなるわけではありません。
しかし、別の相続税対策はどちらの場合にも使えますので、ここでは考慮しないで考えます。

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