不動産価格に新しい傾向

先日、「都道府県地価調査」が公表されました。住宅地の地価が31年ぶりに上昇に転じたということで話題になりました。その内容から、今後の不動産価格の傾向を探ってみましょう。

不動産価格は、取引される個別の事情に大きく影響されますので、「いくらが妥当なのか」がわかりにくい面があります。そこで不動産取引の参考になるように、基準となる地点の1月1日時点での価格(公示地価)と7月1日時点の価格(基準地価)が公表されています。これによって、不動産価格の傾向がわかります。先日公表されたのは、2022年の基準地価です。

基準地価は全国約2万地点で調査され、商業地や住宅地などに分けて公表されます。商業地は景気に大きく影響され、最近でも対前年比でプラスとなることもありましたが、住宅地は全国平均ではずっとマイナスが続いていました。今回の調査では、住宅地の全国平均が31年ぶりに対前年比でプラスとなりました。30年以上も下がり続けていたのが方向転換したわけで、地価に対する概念が変わる契機となりそうです。もっとも、地域による違いが大きく、地方などまだ下落が続いている地域は多くあります。その動向を詳細に見ていくと、次のような傾向があります。

 

  • 地方中核都市での上昇が大きい
  • 都市部での住宅需要が大きい
  • 都市部周辺で地価上昇が起きている

 

県庁所在地での上昇率を比較すると、1位は札幌市(対前年比11.8%)で、2位福岡市(6.5%)、3位仙台市(5.9%)と続きます。県庁所在地でも下落が続いている場所は多く、それ以外の地域となるとさらに下落は止まりません。リモートワークの普及で地方への移住が増えている、というよりは地方から地方中核都市への人口流出が続いているのです。これらの都市とそれ以外の地域の格差が広がりつつあるようです。

東京を中心とする都市部での住宅地も上昇が続いています。都心部にタワーマンションが相次ぎ建築され、高額で販売されているのを目にした方も多いでしょう。住宅ローンの低金利と政府の住宅購入促進策のおかげで、一般のサラリーマンでも高額なマンションを購入することができるようになったためです。ただ、金利が上昇する懸念もあり、この状況が今後も続くかは何とも見通せません。

都市部から少し離れた郊外でも地価が上昇しています。首都圏では、湘南地域、埼玉県、つくばエキスプレス沿線などの上昇が目立ちます。リモートワークで、毎日の通勤がなくなったとはいえ、週に一度ぐらいは出社が必要という人は多いのではないでしょうか。そのような人が、より良い住環境を求めて、都心から少し離れて、なおかつ便利がよい地域で戸建ての自宅を取得しているようです。

地方中核都市でも同様の傾向があります。住宅地の地価上昇率ベスト10の地点を見ると、すべてが札幌市の周辺地域でした。プロ野球日本ハムの新本拠地となる「北海道ボールパーク」が来年3月にオープンする影響もありますが、それだけではなく、週一、二度通勤するのにちょうどよいぐらいの場所に住宅の新築が相次いでいるようです。

一方、関西地域はあまり上昇していない、もしくは下落しています。海外からの観光客で栄えていた京阪神圏は、商業地ばかりでなく、住宅地も影響を受けています。新型コロナの影響は、海外からの観光客が多かった地域では住宅地にも及んでいます。少し前まで北海道のニセコ周辺が高騰していましたが、今回の調査では落ち着いています。

それに対して国内旅行客が多い沖縄県は今でも上昇が続いています。都道府県別の上昇率を見ると、1位は沖縄県(2.7%)です。以下、2位福岡県(2.5%)、3位北海道(1.8%)と続きます。

 

都市機能が充実している、ある程度の規模がある都市の周辺で、住環境が良い地域。例えば、プロ野球球団の本拠地がある都市の周辺などが、今後も注目されていくのではないでしょうか。今回の都道府県地価調査からは、そんな傾向が見て取れます。

2022.10.20記

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