コロナ禍の影響で、飲食業・観光業などはかなりの打撃を受けており、それは今も続いています。しかし、すべての業種で景気が悪いかというと、そうでもありません。住宅・不動産業について言えば、むしろ好調です。初めて緊急事態宣言が発令された昨年の4~5月こそ動きが止まりましたが、その後はすぐに回復し、前年を超える勢いで取引が増えています。理由としては、新型コロナの感染拡大で、
- リモートワークが増え、自宅にワークスペースを確保したい人が増えた。
- 同じくリモートワークで通勤が必要なくなり、郊外への転居を希望する人が増えた。
- 旅行や外出が制限され、家計の支出が抑えられたことで、自宅購入の余裕ができた。
などが挙げられています。
しかし、根本的な要因として、長引く低金利で住宅ローンの負担が小さいということがあると考えられます。そして、コロナ禍においても収入が減少していない勤労者は少なくなく、その世帯では住宅購入への関心が高まったということが言えるでしょう。
景気が悪くなると、住宅購入を促進するために、減税などの住宅購入の優遇策が創設、拡大されます。住宅ローン減税や住宅購入資金の非課税枠などは景気が低迷しているときに設けられ、消費税引き上げとともに規模が拡大されました。新型コロナで落ち込んだ景気回復のために、グリーン住宅ポイントの制度が設けられました。さらに景気低迷が続けば、これらの制度も続いていきますが、こと住宅関連においては景気低迷と言える状況ではありません。住宅購入のための優遇策は、間もなく終わりを迎えることになります。政府が来年度にも予算を計上すれば、継続される可能性もありますが、今のところはその動きもありません。
現在の優遇制度は、9月末、あるいは11月、12月末までの契約を対象としているものが大半です。あと2~5ヶ月程度しかありません。住宅購入を検討されている方は、優遇策が終了するスケジュールを意識しておく必要があります。
資金の準備ができていない、あるいは家族の意志が固まっていないのに、無理に計画を推し進めるのはお勧めしません。しかし、状況が整うようであれば、スケジュールに間に合わせるようにして、優遇を得たいものです。数十万円から数百万円もの違いが生じます。
それでは、具体的に優遇策とその終了スケジュールを見ていきましょう。「契約の期限」と「入居の期限」がポイントです。なお、制度の詳細については、ここでは省きます。期限だけに注目して見ていきます。
Ⅰ.住宅ローン減税(すまい給付金)
住宅ローン減税は、これで所得税が0円になることも少なくないほどの大きな優遇策です。「年末時点の住宅ローン残高の1%に相当する金額の所得税が減税される」制度です。納税額が大きい人(高収入)ほどメリットが大きいため、一定以下の所得の人には「すまい給付金」が設けられています。こちらは新築住宅を購入(建築も含む)した一定の条件の人を対象に給付金を支給する制度です。
- 対象になる契約時期
- 注文住宅の場合:2021年(令和3年:今年)9月30日まで(あと2ヵ月)
- 新築住宅の購入:2021年(令和3年:今年)11月30日まで(あと4ヵ月)
- 対象になるための入居時期
- 中古住宅(すまい給付金は対象外):2021年(令和3年:今年)12月30日まで
- 新築住宅(注文・分譲ともに):2022年(令和4年:来年)12月30日まで
Ⅱ.グリーン住宅ポイント
住宅を建築・購入した際に、一定の条件を満たすとポイントがもらえ、それを追加工事に充当したり、家電製品との交換に充てたりできる制度です。実質的な補助金といえ、15~100万円相当のメリットが得られます。「一定の条件」というのは新築住宅の建築・購入であれば、省エネ性能を持った住宅となります。中古住宅であれば、東京圏や災害リスクの高い地域からの転出や空き家バンク登録住宅の購入などです。リフォーム工事では、エコ住宅設備の設置や断熱改修などが対象です。
- 対象になる契約時期
- いずれの場合も:2021年(令和3年:今年)10月30日まで(あと3ヵ月)
- 対象になるための入居時期
- 追加工事:2022年(令和4年:今年)1月15日までに、追加工事も完了して入居する必要がある。
- 商品交換:2022年(令和4年:来年)4月30日までに、入居して完了報告する。
- 注意点(追加工事や商品交換の期限)
- 追加工事:2021年(令和3年:今年)10月30日までにポイントを交換して追加工事の発注が必要。⇒本体の契約と同時に追加工事の依頼も行います。
- 商品交換:2021年(令和3年:今年)12月30日までにポイントを商品に交換すること。⇒ポイント付与に2ヶ月ぐらいかかるので、すぐに交換注文ができるよう、事前にポイントを確認して商品を選んでおくとよいでしょう。
Ⅲ.贈与税の非課税枠の拡大
親から資金援助を受けた場合、その金額には贈与税がかかります。自宅購入のための資金援助については、一定の金額までを特別に、贈与税を非課税とする優遇策です。非課税となるのは以下の金額までです。
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省エネ住宅 |
それ以外 |
新築・建築 |
1,500万円 |
1,000万円 |
中古住宅 |
1,000万円 |
500万円 |
- 対象になる契約時期(資金の贈与を受ける時期も同じです。)
- いずれの場合も:2021年(令和3年:今年)12月30日まで(あと5ヵ月)
- 対象になるための入居時期
- いずれの場合も:2022年(令和4年:来年)3月15日まで(確定申告まで)
2021.7.25記