新しい住宅の基準ーZEHとは(前編)

「ZEH」についてご紹介いたします。ZEHは「ゼロ・エネルギー・ハウス」のことで、必要な光熱エネルギーを自らで賄う住宅のことです。「ゼッチ」と言われています。地球温暖化が進んでおり、脱炭素社会の構築に向けて、住宅の分野でもCO2の排出を削減することが求められています。エネルギー消費の約3割は、ビルや住宅の光熱など建築物の分野で占められているそうです。省エネ性能に優れ、太陽光発電で自らエネルギーを作り出す住宅であれば、エネルギーの消費量をゼロ以下に抑えることが可能です。このような住宅をZEHとして、政府は普及に力を入れています。

エネルギー消費量がゼロ以下にならずとも、住宅によるCO2の排出量を抑えるため、建築される住宅の基準が厳しくなっています。技術開発で基準をクリアできるようになると、政府はさらに基準を設けて、住宅の品質向上を促します。このことは、地球の温暖化防止に貢献するだけでなく、住宅を購入する人にとってもいくつものメリットがあります。まずは①省エネ効果です。光熱費が削減されることで、家計にもメリットがあります。②住空間の快適性がアップするという点もあります。断熱性が高いと冬の寒さが抑えられ、換気が良いと夏の暑さが和らぎます。③断熱性が高い住宅はヒートショックを防ぐという効果もあります。断熱性が低いと廊下や風呂場が寒く、ヒートショックの要因になります。健康にも良いということです。さらに④太陽光発電がある住宅は、停電の影響を受けにくいというメリットもあります。つまり、防災面でも優れているというわけです。

ただ、難点は建築費が高くなるという点です。いろいろな工夫や設備を備えていますので、費用がかさむのは避けられません。そのため、政府は補助金や税制優遇を用意して、建築しやすいように工夫をしています。

 

エネルギー消費量を抑えるために、主に3つの観点から技術的な基準が設けられています。1つは「断熱性能」です。これが優れていると、暖房費が抑えられます。2つ目は「一次エネルギー消費量」です。これは住宅にかかわる光熱費のことを指します。テレビや冷蔵庫などの家電の電力は含まれません。3つ目は「創エネ」といい、太陽光発電などで自らエネルギーを作り出す能力です。

先ほど触れましたように、技術開発にともなって、政府が求める基準も徐々に変わってきています。今まで基準となってきたのが「省エネ基準」というレベルで、断熱性能は「等級4」、一次エネルギー消費量も「等級4」という基準をクリアしていれば、「省エネ基準に適合」とされます。今では多くの新築住宅がこの基準をクリアするようになってきており、2025年には義務化される予定です。

新しい基準とされているのがZEHで、断熱性能は「等級5」、一次エネルギー消費量は「等級6」ともう一段高い性能が求められます。例えば断熱性能では、「省エネ基準」は断熱材の厚さが85ミリですが、ZEHでは105ミリとなります。それだけ断熱性能が高くなります。そして、「省エネ基準」ではなかった「創エネ」が求められます。このように、建築上の細かい基準に適合するように建築することでZEHと認定されます。地域性などを考慮してZEHの基準は複数設けられています。

  • ZEH:断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせて、「省エネ基準」より20%向上している。さらに、創エネでエネルギーを100%賄えている住宅です。
  • Nearly ZEH(ニアリー ゼッチ):断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせた基準は同じですが、創エネで賄えるのは75%です。寒冷地、多雪地域、低日射地域で適用されます。
  • ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド):断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせた基準は同じですが、創エネは導入していなくても構いません。都市部狭小地の2階建てや多雪地域が対象です。

さらに、ZEHとNearly ZEHにはより高い基準もあります。断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせた基準が25%向上していて、「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)で住宅のエネルギーをトータルに管理している」「太陽光発電で電気自動車に充電可能」などの条件をクリアすると、「ZEH+(ゼッチ プラス)」「Nearly ZEH+(ニアリー ゼッチ プラス)」とされます。

2022.11.30記

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