新しい住宅の基準ーZEHとは(後編)

新しい住宅の建築では、エネルギー消費量を抑えるために、主に3つの観点から技術的な基準が設けられています。1つは「断熱性能」です。これが優れていると、暖房費が抑えられます。2つ目は「一次エネルギー消費量」です。これは住宅にかかわる光熱費のことを指します。テレビや冷蔵庫などの家電の電力は含まれません。3つ目は「創エネ」といい、太陽光発電などで自らエネルギーを作り出す能力です。

先ほど触れましたように、技術開発にともなって、政府が求める基準も徐々に変わってきています。今まで基準となってきたのが「省エネ基準」というレベルで、断熱性能は「等級4」、一次エネルギー消費量も「等級4」という基準をクリアしていれば、「省エネ基準に適合」とされます。今では多くの新築住宅がこの基準をクリアするようになってきており、2025年には義務化される予定です。

新しい基準とされているのがZEHで、断熱性能は「等級5」、一次エネルギー消費量は「等級6」ともう一段高い性能が求められます。例えば断熱性能では、「省エネ基準」は断熱材の厚さが85ミリですが、ZEHでは105ミリとなります。それだけ断熱性能が高くなります。そして、「省エネ基準」ではなかった「創エネ」が求められます。このように、建築上の細かい基準に適合するように建築することでZEHと認定されます。地域性などを考慮してZEHの基準は複数設けられています。

  • ZEH:断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせて、「省エネ基準」より20%向上している。さらに、創エネでエネルギーを100%賄えている住宅です。
  • Nearly ZEH(ニアリー ゼッチ):断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせた基準は同じですが、創エネで賄えるのは75%です。寒冷地、多雪地域、低日射地域で適用されます。
  • ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド):断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせた基準は同じですが、創エネは導入していなくても構いません。都市部狭小地の2階建てや多雪地域が対象です。

さらに、ZEHとNearly ZEHにはより高い基準もあります。断熱性能と一次エネルギー消費量を合わせた基準が25%向上していて、「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)で住宅のエネルギーをトータルに管理している」「太陽光発電で電気自動車に充電可能」などの条件をクリアすると、「ZEH+(ゼッチ プラス)」「Nearly ZEH+(ニアリー ゼッチ プラス)」とされます。

では、これらの基準をクリアした場合に受けられる補助金を見てみましょう。環境省が行っている「ZEH支援事業」では、ZEH、Nearly ZEH、ZEH Orientedの基準に適合した住宅を建築すると55万円の補助金が出ます。さらに蓄電システムにも上限20万円で補助があります。ZEH+、Nearly ZEH+だと、補助金が100万円になります。現在、2023年1月6日まで申請を受け付けています。(予算枠まで先着順)

住宅ローンの残高に応じて所得税が減額される住宅ローン減税でもZEHは優遇されています。下記の表のように、減税の対象となる限度額が大きくなっています。

さらに、この10月からは「長期優良住宅」「低炭素住宅」においてもZEH水準をクリアしていることが求められています。

注意点としては、次のようなことが挙げられます。

「ゼロ・エネルギー・ハウス」とはいっても、必ずしも光熱費がタダになるとは限りません。一次エネルギー消費量を賄えるとはいっても、それ以外にも電力は使いますし、利用している電力会社によっても電気料金は異なります。もっとも、実際にZEHのご家庭の状況を見ると、太陽光発電の売電収入によって、光熱費がかからないばかりか、収支プラスとなっているケースが多いようです。

注文住宅の設計はZEHプランナーである設計事務所に、建築はZEHビルダーであるハウスメーカーや工務店に依頼する必要があります。今のところ、まだ一般の工務店では実績が多くありません。ハウスメーカーではZEHの割合がすでに半分以上になっており、対応が分かれています。

そして、なによりも一般の住宅よりも建築費が高い点が挙げられます。一般の住宅が坪単価50万円ぐらいなのに対して、ZEHは80万円程度かかります。1.6倍はかかると考えておいた方がよさそうです。光熱費がかかるとはいっても、その分を回収するには相当の時間がかかります。

今の補助金は来年1月までですが、すでに何度も実施されています。今後もまた改めて実施されると思われますので、ご自宅の建築を考えている方は、ハウスメーカーなどから情報を得るようにしておきましょう。

2022.12.13記

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