最近の不動産価格の上昇には、以下のような特徴があります。
- 都心部、それも交通便利な場所や駅に近い物件が上昇している
地方も含めた日本全体では、それほど不動産価格が上昇しているわけではありません。三大都市圏(首都圏、中京圏、京阪神)と地方中核都市(札幌、仙台、広島、福岡)の地価が上昇していますが、これらの中でもより中心部に近い地域の上昇が著しいようです。上の表を見ても、首都圏の中で東京23区が突出して上昇しているのがわかります。首都圏全体の上昇率も高いのですが、これは東京23区の販売戸数が多いため、それが反映されているからです。
さらに、交通の便が良い駅の周辺や、駅から近い、いわゆる「駅近(えきちか)」の物件に人気が集まっています。人気スポットをはずせば購入価格を抑えられるのですが、高くても利便性を求める購入者が少なくないようです。 - 戸建てよりもマンションの価格の上昇が著しい
新型コロナの感染が拡大した時期、「今後はリモートワークが増えるので、郊外の戸建て住宅の人気が高まる」と言われたりもしましたが、その予想は見事にはずれました。次のページの中段のグラフを見るとわかりますが、マンションだけが極端に上昇しています。最近では、同じ間取りであれば、戸建てよりもマンションの方が高くなっています。共同管理による利便性や維持管理の手間がかからないことから、戸建てよりもマンションの方が〝住みやすい〟とされています。今や「高くてもマンション」という風潮です。
不動産全体が上昇するというよりも、一部の高額な物件に人気が集まり、高い地域の物件がさらに高くなる、という傾向が強まっています。この理由としては、次のようなことが挙げられています。
- 低金利が続いたことで、高額の住宅ローンが組みやすくなった
変動金利では1%未満でローンが組める状態が続いていました。金利が低いと返済額は少なくなり、その分借入額を大きくできます。住宅ローンの借入限度額は、借りる人の年収で判定されるのが一般的ですが、年収に比べてかなり大きな金額が借りられるようになりました。低金利が長く続いたおかげで、金利が上昇することを心配する人も少なくなり、高額のローンを組むことへの抵抗も少なくなりました。 - 住宅ローン控除などの優遇税制で、高い物件を購入した方がお得になった
住宅ローン控除は、その時々で制度が変更されていますが、いずれもローン残高が大きいほど減税額が大きくなります。そのため、住宅ローンを大きく組む方が減税額は大きく、〝お得〟という状態になりました。できるだけ高い物件を購入するのが有利な選択となったのです。 - 夫婦共働きの増加で、二人とも収入が高いパワーカップルが増えた
結婚したり、子どもが生まれたりしても、女性が仕事を辞めずに働き続けることが多くなりました。夫婦二人が正社員として働き続けることで、世帯年収が増加し、住宅ローンの借入限度額が大きく上昇しました。その中には、夫婦二人ともが高収入な〝パワーカップル〟と呼ばれる夫婦がいます。そのような夫婦は、物件価格が高くても購入の障害とはならず、交通の便などの利便性を重視します。 - 日本のマンションを購入する外国人が増えた
中国を中心に、日本の不動産を購入する外国人が増加しました。もともと、日本では外国人の不動産購入に制限がなく、資金さえあれば購入しやすい環境でした。そのような中、長年にわたって日本の不動産価格が低迷したことと、為替相場が円安に推移したことで、日本の不動産価格が魅力的な状態になりました。日本に住むつもりではなく、投資物件としてマンションを購入する外国人が増えました。 - 転売目的のマンション購入が増えてきた
ただ、投資物件としての購入は、外国人のみならず、日本人の間でも増えていると考えられます。都心の新築マンションで空き家が多いことが問題となっていますが、転売目的の購入が増えています。都心部のマンション人気で、価格の上昇が続いています。購入後に中古として売却しても〝利ざや〟が得られるような状態になっています。こうなると、実需(実際に住む)とは別に、投機での購入が増え、さらに価格が上昇していきます。
株式相場は2008年の年末ごろに下落が止まり、不動産指数はその半年後に下落が止まっています。その後はどちらも、しばらく横ばいが続いていました。
そして、2012年の後半から株式相場が上昇し始めました。すると、半年ぐらい遅れて、2013年頃からマンション価格が上昇し始めています。その後、株式相場は上下を繰り返しながらも上昇が続いています。マンション価格の方は、ほとんどブレがなく、一貫して上昇し続けています。戸建て住宅の方は、かなり遅れて2020年後半ぐらいから上昇傾向になりました。
株式相場とマンション価格では、動きの状況が異なりますが、株式相場に半年ぐらい遅れてマンション価格が上昇しています。
さらに価格の上昇の程度を見てみると、2008年から2024にかけて日経平均株価は4.5倍、マンション価格は約2倍、戸建て価格は1.2倍になっています。一方、賃貸住宅の家賃相場を見ると、同時期に1.1~1.3倍になっています。このことから、株式市場が大きく上昇し、それを追いかけるようにマンション価格が上昇しています。一方、戸建て住宅の価格や家賃相場は上昇してはいるものの、それほど大きな上昇ではないことがわかります。
このことから、長引く低金利で金余りの資金が株式市場やマンション市場に流入したことが見て取れます。〝バブル〟と言ってよいのかはわかりませんが、(昭和から平成にかけてのバブルは、これよりもはるかに上昇していました。)投機目的の資金が相場を押し上げているようです。これが続くと、「上がるから買う」という投資家が増え、さらに上昇していくようになります。
低金利で住宅ローンが組みやすくなり、それによってマイホームを購入する人ももちろん、増えています。しかし、それだけでなく、投機目的の資金も入ってきているようです。戸建て価格や家賃の上昇幅を見る限りでは、住宅需要の増加はそれほど大きなものではないのかもしれません。
平成のバブルを崩壊させた要因の1つは、金利の上昇です。お金を借りて投資しても、金利に見合うだけの利益が得られずに、資産の売却が起きました。日本でも最近、ようやく〝金利がある〟状態になりつつあります。12月19日に日本銀行は政策金利を0.75%としました。30年ぶりの水準です。しかし、まだまだ低い水準であることには変わりありません。住宅購入においては、金利が上昇し始めると、駆け込み需要が発生して、購入意欲が高まります。不動産価格はさらに上昇していくことが考えられます。しかし、金利の上昇が続いていくと、どこかの時点で投機目的の購入は減少します。実需の購入も抑えられます。すると、マンション価格の下落もあり得ますが、もう少し先のことになるでしょう。
2026.1.27記

