9月19日に国土交通省から、今年の基準地価が公表されました。基準地価は、7月1日時点での全国約2万か所の地価を調査したものです。3月に公表される地価公示価格は1月1日時点での調査ですので、この2つで地価の状況を見ることができます。
今回は、この基準地価の状況から、不動産価格の傾向を見ていきます。
まずは対前年比での変動率(上昇率)の推移です。「全用途平均」と記載されていますが、住宅地、商業地などを合わせたすべての用途地域の平均です。三大都市圏は、東京圏・大阪圏・名古屋圏で、地方圏はそれ以外の地域です。バブルが崩壊して以降、対前年比でマイナス(地価が下がっている)が続いていましたが、平成25年頃より三大都市圏がプラス基調になりました。地方圏も昨年からようやくプラスに転じました。
今年の特徴を挙げると、以下のようにまとめられます。
- 全国的に、住宅地、商業地とも前年よりも上昇幅が拡大した。
- 住宅地、商業地とも三大都市圏での上昇幅が大きかった。
- 「地方中核都市以外の地方」で、全用途平均が32年ぶりにプラスとなった。
全体の傾向について見てみますと、全国的に土地需要が拡大していることがわかります。長い間、低金利が続き、最近は少し上昇する気配が見えてきました。そのような状況だと、もっとも住宅への需要が高まります。住宅ローンを組む人が「金利が上がる前に」とあわてて購入するからです。そのため、住宅地の上昇が続きました。商業地の需要は、景気の動向に左右されます。インバウント需要の増加もあり、景気の回復が地価の上昇に表れています。
全国の住宅地・商業地の対前年比
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2020年 |
2021年 |
2022年 |
2023年 |
2024年 |
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住宅地 |
▲0.7% |
▲0.5% |
0.1% |
0.7% |
0.9% |
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商業地 |
▲0.3% |
▲0.5% |
0.5% |
1.5% |
2.4% |
全国の中でも、三大都市圏の上昇幅が大きい傾向があります。特に東京圏は大きく上昇しています。住宅地、商業地ともに上昇しているのが特徴です。大都市圏の中でも都心部、特に利便性が高い地域は、商業地としても住宅地としても人気があり、土地の奪い合いが生じています。かつては、商業地と住宅地ではすみ分けがありましたが、最近では商業地に高層マンションが立てられるケースが増えており、両者の人気エリアが重複しています。東京の中でも中央区は、商業ビルと高層マンションの建設ラッシュが続いています。
また、大阪圏での上昇も目立っています。ひところ、東京圏と名古屋圏は上昇していても、大阪圏だけは前年比マイナスが続いていたのですが、見事に復活しました。大阪、京都を中心に上昇率が高くなっています。インバウンド需要が地価を押し上げているようです。
さらに上昇が地方にも拡大しているのが、今回の特徴です。かつては三大都市圏以外の地方では、札幌、仙台、福岡だけが大きく上昇するものの、それ以外の地方はマイナスが続いていました。地方中核都市(広島を含めた4都市)が周辺地域から人を集めている状況でしたが、ようやく状況が変わってきました。地方中核都市の伸びは少し落ち着いてきており(それでも上昇は続いています。)、〝それ以外〟の地方でも地価が上昇に転じてきています。その結果、「地方中核都市以外の地方」で、全用途平均が32年ぶりにプラスとなりました。
その要因としては、やはりインバウンド需要の増加が挙げられます。北海道、沖縄の観光地は全国での住宅地の上位を占めています。最近の海外からの観光客は、東京、京都だけでなく、全国の観光地を訪れており、それが地価の上昇に影響を与えています。海外からの観光客をいかに誘致できるかが地域の活性化のポイントになっているようです。
また、商業地では熊本県や北海道で商業地の上昇が著しくなっています。熊本では外資系の、北海道の千歳市には国内の半導体工場が建設されています。それに伴い人口が流入し、あわせて商業施設の建設も盛んになっています。観光ばかりでなく、製造業でも外資の影響が表れています。
一方、地方中核都市では福岡の上昇が続いています。福岡市はアジア各国の企業が進出してきています。福岡に日本の拠点や研究拠点を置く外資企業が増えています。
観光だけでなく、産業の面でも、日本経済が海外頼りになっていることが、地価の変動からも読み取れます。
2024.11.29記

