住宅の建築価格は上昇へ

最近は、いろいろな物で値上げが起きています。石油(原油)を始め、エネルギー資源の価格上昇が大きく作用しています。新型コロナの感染は依然として続いていますが、それほど脅威ではなくなったということで、世界経済が回復に向かっています。特にアメリカは景気が過熱気味で、それに伴いエネルギー資源の受給がひっ迫しています。日本では、為替が円安ドル高になっているために、日本円で価格が上昇している、ということも影響しています。そして、これからはロシアからの輸入減少という要因が影響してきます。世界の輸出量で比較すると、ロシアは石油で第2位、石炭は第3位、天然ガスでは第1位となっています(いずれも2019年)。世界中でエネルギー資源の取り合いになりそうです。

食料品も値上げが相次いでいます。多くの食品に原材料として使われている小麦の価格上昇が影響しています。日本は小麦の多くを輸入に頼っていますが、アメリカ、カナダ、オーストラリアからがほとんどで、ロシア、ウクライナからはありません。最近の小麦の価格上昇は為替の円安と、昨年にこれらの国で不作となったことが理由です。しかし、世界の小麦の輸出量で見ると、ロシア産、ウクライナ産で約25%を占めています。この両国からの輸出が激減すれば、小麦の国際価格が上昇することは避けられません。

いずれも現在は「経済制裁による影響」はまだそれほどありません。にもかかわらず、すでにさまざまな価格上昇しています。世界的に景気回復で需給がひっ迫している上に、日本では為替の円安も影響しています。今後はその上に「経済制裁による影響」が加わることになります。

日本では、携帯電話料金の値下げの影響で昨年の消費者物価の上昇率は▲0.2%でした。しかし、今年はこの要因がなくなり、昨年末からエネルギー、食料品の価格が徐々に上昇しています。今年は2.0%前後の上昇となるとの見方があります。ところが、日本銀行はこのまま金融の緩和を続けていく方針です。中央銀行が金融緩和を続けていると、物価が上がりやすくなります。今まで、どんな手を打っても、日本では物価が上昇しませんでした。しかし、もしかしたら今年の暮れから来年にかけて、物価が急速に上昇する可能性があります。

 

なお、不動産価格への影響という面では、もっとも影響を受けるのは、木材価格の上昇です。

日本における木材輸入のうち、ロシアの比率は5.16%です。それほど大きくはありませんが、それでも影響はあるでしょう。木材の中でも丸太ではなく、すでに製材された「製材品」では、カナダに次いで第2位となっており、この分野では影響が大きいでしょう。製材品は建築材に使われており、建築資材への影響は小さくないと考えられます。

もっとも、木材は国内産も多く使われています。日本で使われる木材のうち、ゆう乳に占める割合は、およそ2/3程度となっています。その輸入先が上記のものですので、日本で使われる木材のうち、ロシア産の占める割合は、3.4%程度と考えられます。

日本政府は4月19日に、ロシアへの経済制裁の一環で、ロシアからの木材の輸入を禁止する措置を発表しました。

ロシア産だけのシェアを考えると、それほど影響は大きくありません。しかし、アメリカで住宅建築が過熱しており、世界的に木材需給がひっ迫しています。日本でも、昨年から一部の木材について、調達が困難になる事態が起きています。木材価格が上昇するばかりか、資材が調達できずに、建築が先延ばしになるケースが起きているのです。新型コロナによる再プライチェーンに支障が起きたことが原因ですが、それがようやく落ち着くところに、今度はロシアからの輸入禁止が影響してきます。このことによる建築価格への影響は、これから現れます。ロシア産それ自体のシェアは大きくはないのですが、そもそも住宅の建築価格が上昇しているところですので、それを加速させるように作用することでしょう。

2022.6.16記

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